川島弁護士の不可解な説明
今年倒産した新風舎の債権者に対する説明会が、去る7月30日に開催されたそうです。
その様子をブログで報告している方がいます。
この報告によると100人ほどが参加し、その多くの方が著者だったようです。このような説明会を、なぜ文芸社に事業譲渡する前にできなかったのでしょうか・・・。残念です。
報告を読んで大変疑問に思うのは、破産管財人である川島英明弁護士が、共同出版商法自体について問題を抱いていないと感じられることです。裁判が起こされて大きく報道されたことも倒産とは直接関係ないと考えているようですが、理解に苦しみます。
川島弁護士は、本の所有権が新風舎にあると判断しているのですから、販売目的に新風舎の商品をつくる契約であることは分かっていたと思います。新風舎は費用を分担するとしながら実際には著者と購読者の双方をお客にし、本の所有権が著者にある普通の自費出版より有利であるかのように振る舞っていました。さらに著者を錯誤させるような説明もしていました。賞ビジネスも批判されていました。そのようなやり方に問題がないと判断したのなら、それこそ問題ではないでしょうか。
もっとも川島弁護士が共同出版自体に問題があると考えていると表明したら、同じ共同出版社である文芸社に事業譲渡することはできなかったでしょう。川島弁護士が「共同出版・自費出版の被害をなくす会」の質問書に答えないということは、商法自体の問題点について判断を示したくないということなのかもしれません。
質疑応答で「文芸社の請求額が高い」と質され、「コストは分かりずらい」とか「棚買いもしている」「高いかどうか管財人にはわからない」などと発言したようですが、あまりにも無責任ですね。
文芸社は、新風舎の著者には既存のデータを利用した再出版を提案しています。編集なしなのですから、制作費は本体の印刷・製本費とカバーのデザインおよび制作費であり、分かりやすいのです。しかも「儲けなしでやっている」そうですから、ほぼ原価の費用を請求するべきでしょう。管財人は新風舎の本の制作原価がどのくらいであったかを知ることができるでしょうから、文芸社の請求金額が適正かどうかの目星はつくのではないでしょうか。
「棚買いもしている」とのことですが、そもそも文芸社が通常著者に勧めている「印税タイプ」では、販売経費や倉庫使用料は文芸社負担となっていて、300書店に並べるとしています。新風舎の著者にのみ棚買いなどの販売費用も請求するのであれば、その理由を説明する必要があります。しかも新風舎の著者には100書店に並べるとしているのです。新風舎の著者とそれ以外の一般の著者で条件が違うというのは不公平ではないでしょうか。
極めつけは「高いと思えば他の会社から出す選択肢もある」との発言。「文芸社は儲けがなくていいとやっている」とのことですが、「儲けがない」のなら著者から高いという声が出るのは不思議ですね。他の会社から勝手に出してくださいというのなら、個人情報が渡ってしまう事業譲渡は著者にとってマイナスにこそなれプラスになるとは思えません。
要するに著者のことを考えて事業譲渡したというより、管財人として文芸社からの4000万ともいわれる譲渡金を得るほうが重要だったといわれても仕方ないでしょう。このような返答しかできないのなら、著者の反発を買ってしまうのも当然です。
著者が費用負担していない商業出版ならともかく、多額の費用を負担して新風舎を支えていたことをもっと真剣に考えてほしかったと思います。
今回の事業譲渡については、なによりも弁護士という立場の方が、共同出版自体の問題点について言及せずに済ませてしまったことこそ最大の問題であったと私は思います。弁護士さんの中には、たとえば新風舎が大々的に行っていた賞ビジネスについて批判的な見解を示している方もいるのです。今は文芸社もいろいろなコンテストをやっていますね・・・。
出版賞商法? (由利弁護士の部屋)
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