帰化植物と法面
この写真は大雪山国立公園の中の国道の法面です。一面に咲いている黄色い花はアラゲハンゴンソウ。見事な光景に、旅行者などが車をとめて写真を撮っていることもあります。でも「きれい」だといって感心していてはいけません。別名キヌガサギクといい、北米原産の帰化植物なのです。
ここでは以前は法面に部分的に生えていただけでしたが、今はこのように法面上部にまで広がり、さらに道路に沿って広がっています。多年草であり種子でも増えるので、一度侵入すると広がる一方なのです。
アラゲハンゴンソウだけでなく、ルピナスやフランスギク、ビロードモウズイカ、オオアワダチソウなどなど、法面は帰化植物のオンパレード。国立公園の中でありながら、こんなふうに外来種が繁茂しどんどん広がっていくのは生物多様性の保全の面からも問題です。
また、法面に張られた牧草は、エゾシカの餌となるため道路ぶちにエゾシカが集まってきて、交通事故にもつながります。このあたりの法面、春先にはエゾシカがずいぶん集まってきます。
では、どうすればいいのでしょうか? 引き抜いたり、刈ったりするのも一つの方法ですが、急斜面での作業は危険で大変です。
ところで写真を見ると法面に木が生えています。これはケヤマハンノキなのですが、周囲から種が飛んできて自然に生えたものです。ササが生い茂っていないような法面では、こんな風に自然に木が生えてくるものです。そして、このケヤマハンノキの影になるようなところではアラゲハンゴンソウはあまり生えていません。
法面を牧草ではなく樹木で緑化したなら、外来種の繁茂も防げそうです。ただし、大きくなる木は枝が道路に張り出してくるので刈り込みをしなければなりませんし、強風などで倒れると処理が大変です。法面には大木になるような木は向かないのです。
自生種の中からあまり大きくならないような樹種を選んで緑化に利用することで、外来種の繁茂を防ぎ、景観的にも優れた緑化ができるのではないでしょうか。このあたりであればケヤマハンノキほど大きくならないミヤマハンノキあたりが適しているのかもしれません。
種子の散布などで少しだけ人が関り、あとは自然にまかせることで外来種の繁茂を抑えることができたら一石二鳥ではないでしょうか。
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