やっぱりNHKは・・・
一昨日は、珍しくNHKのテレビを2本見てしまいました。ひとつは「ちょっと変だぞ日本の自然Ⅲ世界の異変が連鎖!日本の異変に」です。内容は、地球温暖化による世界の異変が連鎖して日本にも影響を及ぼすというもの。
はじめに出てきたのが、チベット高原に穴を掘って生活しているクチグロナキウサギ。ナキウサギが増えて草を食べてしまったために草原が荒れているといいます。なぜナキウサギが増えたかというと、異常気象と家畜の放牧により草原の草丈が低くなり、見通しがよくなったために雄と雌が出会うチャンスが増え、繁殖率が高まったというのです。
チベットでは気温が上昇し、氷河から融けだす水も減って砂漠化が進んでおり、それが原因でチベット高気圧が発達して日本に猛暑をもたらすという内容でした。「ナキウサギが増えれば日本が猛暑になる」というわけです。
この説明を聞いて、びっくり! なんだかチベットの草原が荒廃していくのはナキウサギが増えたためといいたいようですが、草がなくなったのは本当にナキウサギのせいなのでしょうか?
このサイトにも書かれていますが、クチグロナキウサギはもともと高原の乾燥した草地に生息しているのです。辺りの見通しがきかないような草薮に生息しているなどということは聞いたことがありません。
ナキウサギふぁんくらぶのHPに、ナキウサギの研究者であるアンドリュー・スミスさんの講演の報告が掲載されていますが、それによるとクチグロナキウサギは高密度に生息しており、死亡率が高いために多産なのです。「草丈が低くなったことで繁殖率が高まり個体数が増えた」などという説明はどう考えても納得できません。
中国では、以前から家畜の放牧による裸地化が深刻になっていて、砂漠化が進んでいました。ナキウサギの巣穴に排気ガスを入れて、ナキウサギを殺していたこともあったと聞いたことがあります。遊牧民にとっては、クチグロナキウサギは害獣という位置づけなのでしょう。
チベットの草原の荒廃は、ナキウサギの増加というより家畜の過放牧が原因とだとしか思えません。ナキウサギを持ち出して、日本の猛暑とつなげてしまう論法はあまりにもこじつけといえるでしょう。番組作成時にナキウサギの専門家に相談していたなら、こんないい加減な放送にならなかったのではないでしょうか。
もうひとつの番組は、雪印による牛肉偽装を告発して廃業に追いやられた西宮冷蔵の水谷洋一さんの闘いをドラマにした「たったひとりの反乱」です。はじめ「へぇー、NHKでもあの問題を取り上げるんだ」と思ったのですが、そのドラマの内容はいささか拍子抜けするものでした。
この問題ついてはすでに「西宮冷蔵の闘い」で書きましたが、NHKの番組は肝心なところが曖昧にされたドラマになっているのです。つまり、食肉業界から圧力がかけられ営業停止へと追い込まれたということ、そして営業停止をなんとか乗り越えたのにも関らず、「コープこうべ」の取引業者が荷物を引き上げてしまったことで廃業に追いやられたという具体的な背景にまで言及されていません。重大なことを具体的に出さず、水谷さんの行動に焦点を当てるように仕上げられたドラマといえます。
いつも思うんですよね。NHKは過ぎ去った事件についてはさも問題点を暴くような、いわばカッコイイ番組をつくるのですが、現在進行形の利害関係が関ることについてはまず批判的な報道をしようとしません。この事件にしても、勇気ある告発をした西宮冷蔵が危機に陥っているときにいったいどんな報道をしたというのでしょうか?
過去の、しかも利害関係のある部分を曖昧にした番組をつくることより、今起きていることについて背景を見据えた批判的報道をすることこそ、メディアの責任ではないでしょうか。
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