クモの網に魅せられて・・・
「webはクモの芸術作品」で紹介した船曳和代さんが作成したクモの網の標本が、「クモの網 What a wonderful Web!」という本になりました。船曳さんの作品はこれまでも日本蜘蛛学会の大会などで展示されているものを見ていましたが、本になったものをあらためてじっくり見るとほんとうに綺麗で見事です。
船曳さんは、青く着色した台紙に白く着色した網を貼り付けるという手法を用いているので、一見、青い紙に白いペンで描いた精巧なイラストのようにも見えます。でも、じっくりと見たらやはり自然の造形ですね。人間ではとてもこのようには描けないのではないでしょうか。
表紙を飾っているのはスズミグモの網。細かいメッシュでできたドーム網を不規則な糸で支えた網を張るクモなのですが、その綺麗な方形の網目や緻密さには驚かされます。
スズミグモの網の張り方は千国安之輔氏の「クモたちの狩り」(偕成社)に出てくるのですが、はじめは円錐状にメッシュ網を張り、あとで頂点のつり糸を切ってドーム状に形を整えるそうです。直径50センチほどの網を張るのに3時間ほどかかったとのことですが、どういう進化の過程を経てこのような形の網が完成したのか興味深いですね。
「驚異のレコード盤」として紹介されているのがゲホウグモの網。このクモは木の瘤にそっくりの形をしていて昼間はじっとしているのですが、夕方になると横糸(らせん状の糸)がびっしりと張られた円網を張ります。まさしくレコード盤のような網なのです。円網といっても種によってずいぶん形が違っていて、それぞれ趣きがあります。
「破れた網タイツ」というのはクロガケジグモの網。ガケジグモの網はボロ網といわれているのですが、いったいどうやってこんな複雑な網を張るのでしょうか。
最後に紹介されている船曳さんへのインタビューや、網の研究者である新海明さんの解説もとても楽しく読めます。
船曳さんはこれまでに2000枚もの標本をつくられたそうです。そんなに沢山つくっていたとは・・・。実は私もやってみようかと思って標本作成に必要な材料だけは買ったことがあるのですが、お恥ずかしいことに結局そのまま・・・。
ところでこの本の版元は「INAX出版」です。INAXといえば、そうそう、あのトイレなどのメーカーです。なんでトイレとクモの網が関係あるのか・・・と思われるかもしれませんが、INAXギャラリーで「クモの網展What a Wonderful Web!」を開催したのに合わせて刊行されたそうです。
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