植えてはいけない徒長苗
「天然林皆伐で林野庁・環境省の弁解」で、皆伐地に植えたトドマツの苗が枯死したり頂芽が枯れていることを指摘しました。
苗を植えたのは昨年の10月ですから、一冬を越しただけです。それなのに、全体が赤茶色になって枯れている木も少なくありませんし、多くの苗の頂芽が枯れているのです。誰がみても元気のない苗ばかり・・・。
この頂芽の枯死について、林野庁の職員は「雪が少なかったことによる寒風害」だと説明しました。でも、わずかに生残っていた稚樹は健全そのものだったのです。なぜ植林した苗だけ頂芽が枯れたのでしょうか?
それは苗木自体の問題といえるのです。この苗、よく見ると幹の上部の伸びがとてもいいのです。こういう苗を徒長苗といいます。徒長苗は寒風害に弱く、枯死率も高い軟弱な不良苗なのです。だから、植えてはいけない苗といえるでしょう。同じところに自然に生育していた稚樹が健全なのに植えた苗木だけが弱っているのは、気候のせいではなく苗木のせいなのです。
植林に使う苗は圃場で育てられるのですが、その時の管理の仕方が悪いと徒長苗になってしまいます。国の森林の管理をしている立場の人が、こういうことをわからずに植林をし、枯れれば寒風害だといっているのです。
自然保護団体に皆伐を問題視されたため、林野庁は植林などについて専門家に意見を聞いたそうですが、本当に林業のことがわかっている専門家だったとは思えません。
皆伐地は南向きの斜面で、一日中直射日光にさらされます。植生をはがされてしまったので保水力がないうえに、夏はじりじりと太陽に照らされて地表は高温。これでは苗木はたまったものではないでしょう。ただでさえ物理的な障害に弱くて活着率も悪い徒長苗なのですから、こんな厳しい環境ではどんどん枯れていくのではないかと思われます。
苗木が枯れた場合はどうするのかを林野庁の職員に聞いたところ、林野庁自らが補植するそうです。その費用って、もちろん税金。でも、こんな条件のところに植えてもまた枯れてしまうのではないでしょうか?
周囲の森林からカンバの種子が飛んできても、シカの食害によって育たない可能性が高いのです。致命的なことをしてしまったとしかいいようがありません。
林野庁は国民の共有財産を管理しているのですから、きちんと勉強してもらいたいですね。
« 皆伐で沢に異変? | トップページ | 温暖化論への異論は信用できるのか? »
「森林問題」カテゴリの記事
- 石狩川源流部の国有林違法伐採プレスリリースの考察(2011.10.17)
- 大雪山国立公園の石狩川源流部で驚くべき過剰伐採(2011.08.24)
- 越境伐採を隠ぺいした北海道森林管理局(2010.11.14)
- 石狩川源流部違法伐採合同調査での林野庁のおかしな説明(2010.10.18)
- 名前ばかりの「受光伐」(2010.09.26)
コメント