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2008/07/18

倒木上更新とエゾマツの森

Toubokujyoukousin  森林の中を歩いていると、ときどき倒木が苔むしてその上にエゾマツやトドマツの稚樹が並んでいるのを見かけることがあります。風や寿命によって倒れた木が次世代の木の苗床になっているのです。苗床となっている倒木はやがて朽ち果ててしまいますが、直線状に同じくらいの年代の木が並んでいることで倒木上に芽生えた木々であることを知ることができます。

 一般的には倒木更新といわれることが多いのですが、正確にいうなら倒木上更新です。

 北海道にはエゾマツ・アカエゾマツ・トドマツの3種の針葉樹がありますが、エゾマツの種子は地面におちて発芽しても、暗色雪腐れ病菌に侵されてしまいうまく育つことができません。しかし倒木の上であれば病原菌が少ないために育つことができるのです。朽ちた倒木がエゾマツを育んできたといっても過言ではありません。またササに覆われているところでは、樹木の種子が落ちても生育できないので、倒木上更新は重要な役割を果たしています。

 しかし、北海道の天然林では、風倒木が発生すると害虫が大発生するという理由で風倒木を取り除いてきました。

 しかも、エゾマツはトドマツより高価ですから、択伐によって太いエゾマツから先に伐られてきました。その結果、地域に適応した遺伝子型をもつ優良なエゾマツの母樹が消えていったのです。

 こうしてエゾマツの苗木を育む倒木や種子を供給する母樹を失なった森は、トドマツの優占する森へと姿を変えていきました(「消え行くエゾマツの森」参照)。

 林野庁はいまだに害虫の大発生を理由に天然林から苗床となる倒木を運び出しています(「中村太士氏の『天然林の伐採』の問題点」参照)。大雪山国立公園の森林帯では、太い木はおおかた伐り尽くしてしまい、今は直径30センチ程度の木まで伐っているのです。湿度が高くエゾマツの多い森から、乾燥して貧相なトドマツばかりの森林へと変わり、それとともに生物多様性も失われているのが大雪山一帯の針葉樹林の姿です。

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