消える砂浜とイソコモリグモ
先日は、勇払原野から沙流川河口の間の海岸でイソコモリグモの生息状況を調査しました。
これまでのあちこちの調査で浸食による海岸線の後退を実感してきたのですが、今回、沙流川の河口近くにいったときには本当に驚きました。
ここには海岸に沿って日高本線が通っています。調査にあたっては古い5万分の1の地形図で場所をチェックしていたのですが、地図上では線路から海岸線まで250メートルほどあります。ところが、踏み切りを越えるとすぐ先が海岸になっていてテトラポットが並べられているのです。地図がつくられた当時から比べると線路から海岸線までの距離は半分以下になってしまっているようです。
また別の場所では、海岸線が防砂林の際まできていました(写真参照)。砂防林をつくるときに海岸の縁につくるなどということはあり得ませんから、浸食によって海岸線が砂防林のところまで後退してしまったのです。
この枯れたクロマツ砂防林の中にイソコモリの巣穴を一つ確認しましたが、ほかには見当たりませんでした。もともとはこのあたり一帯に生息地があったと推測されますが、海岸浸食と砂防林によって生息地を奪われ、絶滅が危惧される状態です。
こんな状況ですから、浸食を防ぐためのテトラポットの設置や護岸工事があちこちで進められています。浸食防止の対策をとらざるを得ないのはわかりますが、こうした工事でもイソコモリグモの生息地は大きく破壊されてきたといえます。
インターネットで公開されている航空写真を見ると、30年ほど前と現在では汀線の位置が全く異なっていました。数百メートルは後退しているでしょう。驚くほどの海岸線の後退が生じています。勇払の海岸線は比較的広い砂浜と海浜植物地帯があるのですが、イソコモリの巣穴はわずかしかありません。急激に海岸線が後退したことと関係しているのかも知れません。
とにかく沙流川から勇払原野にかけての海岸線は、イソコモリの生息地が浸食と護岸によって大きく影響を受けているところといえそうです。
沙流川といえば二風谷ダムに大量の土砂が堆積し、ダムの機能が失われつつあります。ダムで土砂を止めてしまうことが海岸線の後退を招き、海浜植物やそこに生息する動物の生息地を奪っているのです。
砂浜がどんどん削られ後退している以上、単に生息地を保護すればいいという問題ではありません。ダムの影響は海岸に計り知れない影響を及ぼしているといえそうです。
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