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2008/07/05

風倒木と害虫

 6月28日に札幌で開催された国際シンポジウムでは、アメリカやイギリスで過去の森林破壊を反省したうえで進められてきた保全策などについて、大変有意義なお話しを聞くことができました。

 シンポジウムの内容については以下の記事をお読みいただけたらと思います。午前9時から午後5時までのシンポジウムでしたので、かなりの要約版ですが。

欧米の生態学者らが日本の森林皆伐を厳しく批判 

 パネルディスカッションでは、大雪山国立公園での皆伐がメインテーマとなったのですが、3人の海外ゲスト全員が鋭い批判をしていました。先進国のレベルで考えると「ありえない」伐採のようです。

 さて、この皆伐は風倒木の処理とのことで行われたのですが、林野庁の職員の方は風倒木の処理をする理由のひとつとして「害虫の大発生の防止」を挙げていました。風倒木が発生すると、倒れた木や弱った木にヤツバキクイという材を食べる昆虫が大発生し、周辺の健全木にまで被害が出るというのです。しかし、林野庁の職員は、現地では害虫の大発生は確認されていないという説明をしていました。

 これに関連して、会場から意見を述べた方が一人ありました。その方は大雪山の皆伐地に何回か行ったが、近くの小規模な風倒地ではヤツバキクイが発生して周辺のエゾマツが被害を受けていたとのことです。

 実は、その方の意見に対して発言したかったのですが、時間がなくなってしまい発言できませんでした。そこで、私が発言したかったことについてここで説明したいと思います。

 確かに、風倒木が発生するとヤツバキクイが大発生して周辺の木(ヤツバキクイの場合はエゾマツやアカエゾマツなどトウヒ類)にも被害を与えます。しかし、それは数年で自然に収束するのです。一時的に大発生したからといってそれを契機に、害虫が増え続けるわけではありません。風倒木と害虫の発生というのは、自然のサイクルとして捉えるべきことです。天然林では人が森林に手を入れる前から風によって木が倒れ害虫の大発生が繰り返されてきたはずです。しかし、だからといって森林が壊滅的な被害を受けてしまうようなことはなかったのです。

 木材生産を目的としている人工林では風倒木を処理しないと害虫が発生して健全な木まで被害を受けるので除去は必要なのですが、木材生産を目的としていない森林の場合は、害虫の発生も自然のサイクルとしてそのままにすべきなのです。風倒木はエゾマツなどの苗床として森林が更新していくためになくてはならないものです。害虫の発生源だとしてすべて取り除いてしまうのは更新の妨げにもなります。

 ですから、その方の発言はまるで林野庁の擁護をしているかのように聞こえてとても不自然に思ったのです。で、あとで知ったのですが、その方は林野庁に対してアドバイスをした二人の元大学教授のうちのお一人とのことでした(「植えてはいけない徒長苗」参照)

 林野庁はアドバイスをしてもらう専門家の人選を間違えているのではないでしょうか?

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