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2008/06/07

クモと書店と・・・

 少し間があきましたが、北欧旅行の続きです。

 今回の北欧旅行は5月の北欧ということもあり、クモの観察や採集は考えていませんでした。クモを見るには、まだ季節的に早いのです。それに都市が中心の旅行でしたから。

Hokuoukumo  やはりクモの姿はほとんど目にしませんでした。ヨーテボリの植物園で円網を張っているコガネグモ科の幼体や、サラグモの幼体は見つけましたが、成体のクモはコモリグモくらいでしょうか。植物園の路上を歩いていましたので、写真だけ撮りました。

 環境から考えても、植生から考えても、恐らく北欧南部の都市はクモの種数はそれほど多くないのではないでしょうか。中・北部の自然の豊かなところならある程度の種数は見られるのかもしれません。また、湿原などにはさまざまなサラグモ類も生息していることでしょう。

Akademiasyodana  ところでフィンランドの首都ヘルシンキはとてもこぢんまりとしていて、中心街は徒歩で回れるほどの小さな街です。人口が約56万人だそうですから、街もコンパクトなのですね。首都の小ささにはちょっと驚きました。そのヘルシンキにはアカデミア書店という立派な本屋さんがあります。「クモの本は置いてあるかしら・・・」と思い、この書店を覗いてみました。

 まず入って驚いたのは、大半の本が表紙を見せて並べられていることでした。棚差しにしている本もありますが、多くの本が平積みにされていたり、表紙を見せて書架に立てかけられています。大半の本が棚差しで、ごく一部のものしか平積みにされていない日本の書店とは正反対の陳列方法です。一冊一冊の本が大切にされ、じっくりと長く売るという姿勢を感じます。

 もちろんこのような陳列ができる背景には、日本とは大きく異なる出版業界の事情があるのでしょう。きっと出版点数自体がかなり少ないのでしょうね。そして、出版された本はお客さんの目につきやすいように配置し、時間をかけて売っていくのではないでしょうか。

 一日に200点以上もの本が出版されている日本では、大量の本が発行され、大量の本が書店にも並ばないまま廃棄されています。私が批判している共同出版も、出版点数の増加を助長しています。「出版」の意義は認めますが、日本の出版業界の乱造の現状は、異常であり大変な資源の浪費といえます。

Akademiasyoten  本来ならアカデミア書店のようなあり方が当たり前なのかもしれませんが、日本の書店を見慣れている目にはすごく贅沢な展示です。店内にはソファーが置かれていて、ゆっくりと本を読んでいる人もいます。立ち読みどころか、座り読みです。まさにくつろげる書店ですね。羨ましい・・・。

Kumonohon  2階の自然に関する本のコーナーでクモの本を探してみると、一冊見つけることができました。1995年に出版された、Robertsによる「Spiders of Britain & Northern Europe」です。この本は私も持っていますが、私の持っている本とは表紙のデザインが異なっています。フィールドガイドとなっているのですが、カラー図版は一部の種のみで、顕微鏡で同定するための生殖器の図が載っているかなり専門的な分類書です。

 クモ研究者の数を考えれば簡単には売れそうにない本ですが、ヨーロッパではこのような本もすぐに絶版にすることなくじっくり売っていくのでしょうね。

前回の記事 北欧の芝生文化 

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