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2008/05/30

福祉国家の選択と自立

 北欧は物価が高いと聞いていましたが、やはり実際に行ってみるとそれを実感します。外貨は多めに換金していったつもりだったのですが、思っていたよりも物価が高くてぎりぎりに近い状況でした。それもそのはず、商品には20パーセントを超える税金が加算されています。もちろん、この税金は国民が安心して暮らせるために使われているのです。

 北欧といえば福祉国家。ちょっと旅行しただけでは詳しい事情はわかりませんが、それでもバスや路面電車はステップが低くて車椅子で利用しやすいようになっていますし、車椅子用のトイレなども整備され、福祉が充実していることを垣間見ることができます。

 女性の社会参加率が高く男性も育児に参加するといいますが、確かにベビーカーを押している父親が普通に見受けられました。日本では赤ん坊をおんぶしたり抱っこしている父親はまず見られませんが、男性も当たり前に赤ん坊を抱いて歩いています。男女が対等なのですね。こんな光景を見ると、この国の人たちの価値観などが伝わってきます。

 医療や老後の生活が保障されていますから、日本のように老後のための貯蓄などを考える必要はありません。基本的に蓄えは必要ないのです。ワーキングプアが深刻化し、高齢者の医療がどんどん切り捨てられているどこかの国とは大違いです。将来に希望を持てない若者、満足な医療も受けられず追い詰められた生活をしている高齢者があふれる日本は、まさに病的です。

 心身ともに健全な生活を送るうえで、不安の少ない精神的に安定した社会の構築は非常に大切なことです。高額の税金を負担してでも不安なく生活できる社会を選択してきたのが北欧の人たちです。

 このような選択の背景には、個人を尊重し自己の責任において行うことに干渉しないが、人々が助け合うことも大切にするという自立と思いやりの精神があるように感じました。

 以前、こんな話を聞いたことがあります。ドイツ人にいわせると日本人は自立しておらず子どものようだとのこと。ところが、スウェーデンの人たちから見ると、ドイツ人は自立していないというのです。スウェーデンの人たちから見たら、日本人はとてつもなく自立していない頼りない存在なのかもしれません。北欧の空港で日本人の団体旅行客を見ていると、そんな精神面での違いが見えてくるようでした。

 日本が福祉国家になるためには、まず国民ひとりひとりが自立するとともに他者を尊重する精神が求められるのではないでしょうか。そのためにどうすべきか・・・。日本人ひとりひとりに突きつけられている課題でしょう。

前回の記事 野鳥と人と

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