北に渡るツバメ
先日、道北に行った時、遠別川の河口近くにある公園の池の上をツバメが飛び回っていました。北海道で普通に見られるイワツバメでもショウドウツバメでもありません。背中がやや青っぽく、尾ははっきりとした燕尾です。「これはタダのツバメ?」と不思議に思いました。
北海道ではツバメ(Hirundo rustica)は中部以北では繁殖していないのです。ですから、ここでも繁殖はしていないでしょう。とすると、このツバメたちは渡りの途中のようです。
そこで家に帰ってからツバメの繁殖地を確認してみました。ツバメってずいぶん広く分布しているのですね。サハリンや千島でも繁殖していますし、カムチャッカにもいます。ユーラシア大陸や北アメリカでは北部を除いて非常に広い地域で繁殖していることを知りました。
「北海道では南側にしかいない」ということが頭にあったために、てっきり北海道が繁殖の北限だと思っていたのです。先入観とは恐ろしいものです。北海道よりずっと北にまで分布しているにもかかわらず、北海道の中北部は空白地帯になっているということだったのですね。
ツバメといえば人家や建物に営巣する代表的な夏鳥ですが、もちろん北海道の中部以北にも営巣可能な建物はたくさんあります。それなのに、繁殖していません。とても不思議なことです。こんな不思議なことがあるからこそ生き物を見るのが楽しいともいえます。
イワツバメも建物や橋げたなどに巣を造りますが、岩壁などにも巣を造っています。人間の建造物が繁殖場所として都合が良いことを学習し、営巣場所を変えてきたのでしょう。
現在ではツバメはすっかり人間の生活空間に依存し建物に巣を造っているようです。しかし、人が建物を造る以前はどんなところに巣を造っていたのでしょうか? 今は、まったくの自然の環境では繁殖していないのでしょうか? 建造物が出現する前は、イワツバメと同じように岩壁のようなところに巣を造っていたのかもしれませんね。
人間生活と切っても切れない繋がりをもってしまった生物はツバメ以外にもたくさんあります。人の出現は、生き物たちにもさまざまな影響を及ぼしているのです。ただ、最近の建物はツバメが巣造りをするのには適さなくなっているような気がしてなりませんが。
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