土砂で埋まる二風谷ダム
日本というのは本当にどこに行ってもダムだらけですね。上高地に行った時も、急峻な谷あいにいくつもの巨大ダムが連なっているのを目の当たりにして、ため息が出てきました。田中康夫前知事が「脱ダム宣言」をしたのがよくわかります。
北海道でもダム問題は深刻です。日高地方の沙流川には、苫小牧東部工業地帯に工業用水を供給することを主目的として二つのダムが計画されました。二風谷ダムと平取ダムです。ところが苫東計画は破綻。すると次ぎにはダムの目的を洪水調節とか、灌漑用水、水道水、発電などに変更して二風谷ダムを造ってしまいました。
二風谷といえば、古くからアイヌ民族の集落があったことで知られているところですが、アイヌ民族の反対を押し切って造られてしまったのです。
ダムの最大の目的は洪水調節だったのですが、平成15年の台風10号ではダムが満杯になって洪水調節の機能が果たせなくなったうえ、水害を引き起こしました。
ダムが満杯状態になって危険になると、「ただし書き操作」といって、流入量と等しくなるまで放流が行われます。この時点でダムの洪水調節機能は失われたことになります。「ただし書き操作」が行われると、ダムの下流部では一気に水量が増えることになります。
水量が一定以上に増えると、本流から支流に水が逆流してしまいます。この逆流を防ぐために支流との合流部には「ひ門」と呼ばれる水門があります。ところが台風10号のときにはこの「ひ門」が閉められなかったために、本流の水が逆流して溢れ、下流域が水浸しになったのです。人災ともいえる水害です。この水害では今も裁判が行われています。
さらに問題なのは、二風谷ダムにはすでに大量の土砂が溜まっていて、有効貯水量が減ってきているということです。この対策として、国土交通省は夏のあいだは水位を下げて貯水量を増やすようにしました。ところが水位を1メートルほど下げたら何と一面の「泥の原」が出現したのです。あと何年かしたらさらに土砂が堆積して、洪水調節の機能はほとんど果たせなくなるでしょう。
要するに、ダムによる洪水調節はすでに破綻しているということです。
そんな状態なのに、さらに上流に平取ダムを建設しようとしています。建設することが目的となっているとしか思えません。まったくどうなっているんでしょう!
二風谷ダムの写真は以下の記事をご覧ください。
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