地球温暖化と高山植物
昨日の北海道新聞によると、環境省が地球温暖化の影響と対応策を探るために設置した専門家委員会が報告書の草案を示したとのこと。それによると道内の高山植物が将来的に急減する可能性があるので、高山帯に特別保護区などを設置することを求めているそうです。
具体的な内容がわからないので細かいところまで言及できませんが、「保護区を設けることで温暖化による高山植物の減少を防げるのか?」という単純な疑問を感じてしまいました。しかも高山植物群落のあるような高山帯の多くは、すでに保護区などに指定されています。
地球温暖化が高山帯の植生にどのような影響を与えると予測しているのかがよくわかりませんが、保護区を設けるだけでは何の対策にもならないように思います。
気温の上昇は植物の生育を早めるという影響を与えるかもしれませんが、高山植物の生存自体にはあまり直接的な影響を与えないのではないでしょうか。高山植物を平地でも栽培できるように、気温に対しての適応力はある程度あると考えられるからです。
では、温暖化が高山植物にどのような影響を与えるのかといえば、主として積雪量や雪融け時期などの変化に伴う影響ではないでしょうか。植物の分布や開花期は積雪量、雪融けの時期などによって左右されますから、温暖化によってそのような条件に変化が生じたら、植物は減少したり移動することを余儀なくされるでしょう。
ところが、植物というのは移動速度がきわめて遅のです。高山植物の大半は多年草ですから、生育場所を移すためには種子によって分散するしかありません。種子が生育適地に運ばれて発芽したとしても、花をつけるまでに何年もかかるのです。種子が鳥や動物あるいは風で運ばれない植物では、標高の低いところから高いところに移動するということも困難です。温暖化がゆっくりと進むのであればそれに対応して徐々に移動できますが、急速に進んだ場合は移動が追いつかなくなります。
また、花粉を媒介する昆虫との関係も良好に保たれなければうまく繁殖できません。たとえば、温暖化の影響で開花期と花粉媒介昆虫の出現時期にズレが生じてしまうと、結実率が下がってしまうでしょう。
気象の変化を人間が簡単にコントロールできるとは思えません。要するに、高山の生態系を保全するためには、これ以上の温暖化を防ぎ、温暖化の速度を緩めるために最大限の努力をするしかないのではないでしょうか。
温暖化とは直接関係ありませんが、大雪山の高山帯にはセイヨウオオマルハナバチが侵入してしまいました。花粉媒介に役立たない盗蜜行動をしたり在来のマルハナバチの生存を脅かすこのハチの分布拡大も懸念されるところです。
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