被害者組織って何?
私はこれまでにさまざまな自然保護NGOに関ってきました。NGOとは民間の非営利の団体です。では、NGOの基本とは何でしょうか? 私は、目的を同じくした組織の構成員による主体的な活動だと考えています。
組織の構成員である個人が、目的達成のためにそれぞれ意見を出しあい、意見交換して考えながら活動をしていくということです。会員個人の意見や活動を尊重し、下(メンバー)から上(組織の中枢)への流れの中で活動していくのです。「個人が自分の問題であると捉え、自分が行動しなければ誰も動いてくれないし変わらない」、これは私がNGOに関るとき、常に感じてきたことです。学生時代からずっと・・・。
この流れが逆になってしまうと、上から下の押し付けになってしまい、会員の主体性が奪われ中枢メンバーの意のままの組織になってしまいます。ですから、NGOというのはメンバーの意見が反映されやすい規模のまとまりであるほうが適していると思っています。
大きくなればなるほど、中枢の判断、行動に重きがおかれ、メンバーはそれに従属するような形になってしまいます。そうなると、中枢で不適切なことが行われた場合も、メンバーがそれを修正できなくなってしまうのです。これはNGOにとって致命的といえるでしょう。
個人の主体性を基本とするなら、個人で活動すればいいのです。それなのに、なぜNGOをつくるのでしょうか? それは、多くの意見・アイディアを取り入れることで、活動が充実するからであり、一人では無視されてしまうことでも無視せざるを得ない状況にできるということです。また、一人では困難なことでも、複数の人たちが協力しあうことで成し遂げられることも少なくありません。
でも、自分が主体になろうと思うのではなく、組織が何かしてくれるだろうと頼ってしまう人が多いというのが現実なのかもしれませんね。共同出版問題でも、そんな風に思ってしまうことがあります。
「新風舎商法を考える会」は尾崎浩一氏がつくり、中心になって活動している団体のようですが、尾崎氏は新風舎の被害者だったのでしょうか? 本当に新風舎の被害者の立場になって行動していたのでしょうか? 彼についていった人たちは、結局は自分で考え行動するのではなく、彼を頼ってしまったのではないでしょうか? 尾崎氏は文芸社をまったく批判していなかったようですが、著者の方たちは文芸社に事業譲渡されたことに納得できたのでしょうか?
私が被害者の会の代表として常に思うのは、やはり被害者意識を持った人たちの主体性の問題です。被害者は事実を知って、何をすべきなのか? それは被害者個人個人が考えていかなければなりません。誰かに頼っていたのでは、誰も解決してくれないということです。解決を助け、ともに行動するために組織があるのです。
まして、被害者にとって「新たに本をつくる」ことが問題解決ではないはずです。もちろんそれは著者にとってひとつの重要な課題ですが、共同出版の問題解決の道はそこにはありません。利害関係のある業界の方に相談して納得ができますか? 自分が納得した本づくりができれば、被害は回復できますか? 悪質な出版商法はなくなりますか? 新たな被害を防ぐことができますか?
先日JANJANにこんな記事が掲載されていましたが、被害者の方たちはこれを読んでどう感じるでしょうか?
この記事では「スイミー」が取り上げられています。「スイミー」というのは小さな魚が集まって、大きな魚の形をした群れになることで、自分たちを食べる大きな魚から身を守るという内容の絵本です。みんなが知恵を出し合い行動することで、敵を追い払うことができるというお話しです(余談ですが、日本語版の訳者は新風舎と関係が深かった谷川俊太郎さんでした)。
マスコミが頼りにならない以上、この商法に関った著者や元社員などが、体験者としてそれぞれこの商法のおかしさをブログやインターネットメディアで公開する、そうやって大勢が意思表示するだけでも意味があると思います。もちろん新風舎だけではなく、文芸社をはじめとした同様の商行為を行っている出版社から本を出した方たち一人ひとりが発言するということです。
ただし、自分の交わした契約に照らし合わせて、実態がどうおかしいかを主張しなければ意味がありません。サービスの契約だ、著者は消費者だなどと主張したなら、出版社の思う壺です。
新風舎だけでも1万5千人もの著者がいるとされているのですから全体ではかなりの被害者がいるのです。大半の人が泣き寝入りするだけ、あるいは新たに本を出すだけなら、こうした商法は衰えることを知らないでしょう。
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