知床のダムはなぜ撤去できないのか?
国際自然保護連合のデビッド・シェパード氏が、世界遺産に指定された知床の再評価のために現地を訪れましたが、ルシャ川の3基の砂防ダムについては案の定、撤去を求めたそうです。
知床が世界遺産に登録されるときにも、123基もあるという砂防ダムなど工作物のことが課題として取り上げられていましたから、当然のことでしょう。日本が行ってきた対応策はあくまでもダムの撤去ではなく、魚道などの設置です。それも31基のみ。
欧米ではだいぶ前からダムが河川の生態系に大きな影響を与えてきたことを認め、撤去を進めていますが、日本は頑なにダムが必要であるとの姿勢を崩しません。
ほとんど人が住んでいないような場所にあるダムの撤去に、なぜここまで抵抗するのでしょうか?
日本の河川は、山奥まで砂防ダムが造られています。ひどいところでは、階段状に連なるようにいくつものダムが造られているところがあります。伐採によって森林の保水力を低下させ、雨が降れば作業道からは大量の土砂が河川に流れ込むので砂防ダムを造る・・・。
そうやって森と川の生態系を破壊し、魚の移動を妨げてきましたし、今もこのようなことが延々と続けられています。
このような中で日本政府が「知床のダムは魚の移動を妨げるから撤去しよう」と決めたなら、新規の砂防ダム建設に与える影響も大きいに違いありません。「ダムは生態系を破壊する!」「ダムを撤去すべきだ!」ということになったなら、都合の悪い人がでてくるわけです。
ダムの撤去を求められながらも、魚道の設置で誤魔化してきた理由は、このようなところにあるのではと思えてしかたありません。
日本政府も、いつまでもダム必要論に固執していたなら、世界の恥となることをいいかげんに認めるべきでしょうね。
20日の国際自然保護連合と国連教育科学文化機関の調査団に対する説明会で、環境省はシェパード氏らの発言内容を非公開としたと報道されました。しかも非公開の理由として「調査団側の要望」という嘘までついたそうな。まったく驚くべき隠蔽体質です。
これでは、恥の上塗りでは・・・。
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