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2008/02/13

良心的な出版社とは?

 私は、文芸社と契約を交わしてしまったという体験から共同出版や自費出版のことに関ることになってしまいましたが、そんな中で「アマチュアの著者の方たちは何のために出版するのだろう・・・」「何を基準に出版社を選ぶのだろう?」と考えさせられることがあります。

 出版業界はすっかりおかしくなってしまったと感じる昨今ですが、高い理念をもって著者の方とともに納得できる本づくりを手がけ、地道に頑張っている編集者や出版社の方たちもいるはずです。しかし、そのような貪欲さのない良心的な出版社は影が薄いように思えるのです。

 ところがどうでしょう? ほとんど売れないことを承知で流通を謳い、大きな広告や派手なホームページで著者を集め、いい加減な本づくりをしている共同出版社・自費出版社があります。大手の商業出版社はあたかも消耗品であるかのように短命の本を大量に出版しています。

 商業出版でも自費出版でも、目立っている出版社はどうにも魅力が感じられません。そこには、著者とともに少しでも良い本をつくり長く売っていこうという姿勢が感じられないのです。

 アマチュアの著者の本の流通を謳うのであれば、販売するに値する原稿かを見極め、細かい内容まで検討されなければなりません。発行部数もジャンルや内容によって違ってくるはずです。著者に出版費用の全額あるいは一部を負担してもらうような出版では、とりわけ著者と編集者が信頼しあって目的に合った本を作り上げ、長く売り続ける姿勢が何よりも大切なのではないでしょうか。内容によっては販売を勧めない場合もあるでしょう。

 日本には零細出版社がたくさんあります。中には1人で何から何までやっている出版社もあります。商業出版社でも自費出版社でも。そんな小さな出版社でも理念をもった編集者なら、一冊の本のために時間をかけて著者と打合せを重ね、丁寧な編集作業をしていくことでしょう。そのような零細出版社の場合、おそらく年に数点の本しか出版できないはずです。

 文芸社から本を出されたある方から、こんなお話しを聞いたことがあります。その方は、文芸社の校閲が杜撰でとてもがっかりしたそうですが、別の原稿をある小さな出版社に持ち込んで相談したところ、社長さんまでがきちんと原稿を読み、編集者ともども直接会って細かい点まで相談にのってくれたそうです。

 そして、文芸社とは比べ物にならないほどの安価な見積を示され、その内訳や根拠、見通しや会社の負うリスク、著者のリスクなどを説明してくれたそうです。その出版社とはさまざまな角度から議論ができたといいます。

 私はその話を聞いて、とてもほっとした気持ちになりました。そこには、著者と出版社のこころの通う交流と出版社の誇りが感じられるからです。その出版社の社長さんは、きっと高い理念を持った出版人なのでしょう。

 プロの編集者が本当に良い本を仕上げようと思ったなら、商業出版であれ自費出版であれ、一冊の本の編集や校正に二ヶ月ぐらいはかけるのではないでしょうか。私は文芸社との契約を解除した父の遺稿集を自分で編集し、知人にDTP編集を依頼して自費出版しましたが、編集作業はなかなか大変で何ヶ月もかかってしまいました。

 ですから、編集や校閲を謳いながら一ヶ月に何冊もの本を出版している零細出版社があったとしたら、どんな編集をしているのか疑問に感じます。たとえそれが著者を騙すようなことをしていない会社であっても、取次ぎを通した委託販売をしている会社であっても契約する気にはなれません。それに、いつ廃業してもいいなどと考えている出版社があるなら、著者の立場にたって長く売り続けるということなど考えていないのでしょうね。

 また、費用が安ければいいというものでもありません。前述したように丁寧な編集をして装丁などにも気を配ったなら、それなりの費用がかかるのは当然なのです。

 著者にとって大切な本であるからこそ、造本や紙質も大切にしたいものです。自分の例ばかり持ち出して恐縮なのですが、文芸社と解約して自費出版した父の遺稿集は、紙質も良く大変しっかりした造りの本に仕上げていただき、とても満足しています。

 もし利益ばかりを追求する会社や安さばかりを売り物にする会社から出していたのであれば、質的に雲泥の差のある本になったでしょう。でき上がったずっしり重い本を手にして、そのことを実感しました。

 印刷技術が発達して安価な印刷も可能になりましたが、費用が安ければそれだけ質が劣ると考えるべきです。ソフト面(編集やデザイン)だけではなくハード面(印刷や造本)の質も、著者の想いを込めた本であればあるほど大切にしたいものです。

 もし、私が自費を投じて出版をするなら、どんな本でも流通させる出版社、出版点数を誇るような出版社、安さだけを売りにする出版社、機械的に流通させるだけの出版社には何の魅力も感じません。いつ廃業してもよいなどという出版社は論外。

 これから出版を考えている方、あるいは共同出版で本を出された方は、どんな出版社が本当に著者のことを考えていて良心的であるのか、今いちど考えていただきたいと思います。

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