上ノ国違法伐採告発の不自然な不起訴
昨年の3月13日に札幌の市川守弘弁護士らは函館地検に檜山森林管理署長らを森林法違反で刑事告発していましたが、年末の12月28日に函館地検は「故意性は認められず、嫌疑不十分」として不起訴処分にしました(この告発については 北海道・ブナ林過剰伐採 林野庁職員を告発 参照)。
2006年5月に現場に行き、告発のきっかけとなった越境伐採の発覚の現場を見ている私にとって、この不起訴処分は不自然というほかありません。
私はこの不起訴の知らせを聞いたとき、緑資源機構の官製談合事件の重要証拠資料のはいった段ボール箱が東京地検特捜部から消えてしまった事件を思い浮かべました。このダンボールは誤って紛失したとされていますが、疑惑の渦中の事件の重要資料だけが突然地検から消えることの裏に、当然ながら意図的な力が関与していると推測されるわけです(この件については 消えた捜査資料と巨額の事業 を参照してください)。
つまり今回の函館地検の判断の裏にも、なんらかの力が関っているとしか思えないわけです。
現場に入る林道には頑丈なゲートがあり、しかもその鍵の部分は鉄板でカバーがつけられていて簡単に壊せるような代物ではないのです。十勝地方ではゲートが開放されているところが多いうえ、このような頑丈なゲートは見たことがありません。一般の人たちを排除し、管理者である林野庁の職員や業者しか入れないようにしていることだけでも、異様といえるでしょう。しかも道南では以前から違法伐採の噂が絶えなかったと聞いています。そのようなところで発覚したブナ林の違法伐採疑惑なのです。
この告発では、以下の3点の森林法違反疑惑について指摘していました。
1.上ノ国町の土砂流出防備保安林に指定されている国有林およびそれに隣接する道有林において、立木204本以上を何らの権限もなく、氏名不詳の者をして伐採させた上搬出させ、産物を窃取した。
2.土砂流出防備保安林で北海道知事に届出た以上の間伐を行った。
3.土砂流出防備保安林で、北海道知事の許可以上の面積の集材路を建設、また許可以上の面積の土場3箇所を造成し、無許可で土地の形状を変更させた。
12月29日の北海道新聞によると、地検は「過剰伐採について、相当量の伐採済みの木が国有林に放置されており、窃取した証拠はないと判断。無届の間伐についても、区域境界線を誤認したことが原因で故意ではなかった」と判断したとのことです。
越境伐採を見つけたのは自然保護団体の会員であり、しかも帰りがけの林道から発見したのです。現場の地理に詳しい職員が境界を誤認して収穫調査をしたなどということは常識的に考えられずあまりにも不可解です。
現場には収穫調査を行った883本をはるかに越える多数の伐根が残されており、204本以上が過剰に伐採されています。土場に出されて販売された丸太の材積もわかっています。伐根という動かぬ証拠をどのように判断したのでしょうか?
許可申請をしていた土場のほかに、尾根近くに無届の土場が存在しました。なぜこのような土場が必要だったのでしょうか? でも、検察はそれについて不問に付したのです。この土場の違法性を立件したなら、当然のことながら盗伐疑惑についても捜査せざるを得ないはずです。
伐採が適正に行われているかを監督・検査するのは森林管理署です。素人にも見分けのつく越境伐採や多数の伐根、許可以上の面積の土場・集材路が問題ないと判断し、それが「故意性が認められない」などというのであれば、何でもありではないですか!
伐区を大きく越えて伐採し、伐採率をはるかに超える伐採が行われたことは、素人でさえ現場を見れば一目瞭然でした。上ノ国の伐採現場には多くの疑惑が凝縮され、森林管理署と業者の癒着が疑われる典型的な例だったのです。
ということは、この告発は林野庁にとっては何としてでも握りつぶしたい一件であったはずです。
「やまりん」による盗伐も、住民が告発した秋田県上小阿仁村での秋田スギの違法伐採も立件されて有罪になっています。さらに、昨年発覚した屈斜路湖畔の違法伐採(屈斜路湖畔の違法伐採はなぜ起こったのか? 参照)でも、不動産会社役員が森林法違反(森林窃盗)と自然公園法違反(無許可伐採)で起訴され、検察は懲役3年6ヶ月を求刑しました。
それなのに、上ノ国に限って不起訴なのです。この不自然さこそ、国有林伐採の闇を象徴しているかのように感じられます。
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