共同出版問題とジャーナリスト
一昨年に新風舎の問題をとりあげた藤原新也さんが、昨日のブログで新風舎の倒産についての見解を書かれています。
藤原さんの指摘されているように、共同出版社の詐欺的な商法を批判するだけで、共同出版社から出版した著者はショックを受けてしまうものですが、さらに「騙されたほうが悪い」とばかりに誹謗や中傷が浴びせられるということが確かにあります。そのような批判は大半が匿名による無責任なものですが、こうした発言になんでも自己責任で済ませようとするこの国の病理を感じてしまいます。
なぜ、このような商法がこれまで放置されてきたかといえば、振り込め詐欺などとは異なって著者の自尊心を利用した商法であるがゆえに、大半の著者が名乗り出ず問題が表面化しないということがあります。
それに加え、マスコミが問題点を報道するどころか提灯記事を書いたり大きな広告を掲載して被害を拡大させてきました。とりわけ大きな新聞広告は信頼できる会社だろうという安心感を与える効果があります。一般的に「大きな新聞広告を出している出版社が詐欺的なことをやるはずがない」「悪質商法などは、ふつう幽霊会社のようなところがやるものだ」という認識があるのです。
本を出版して知人や友人に配ったり買ってもらった著者にとって、自分が騙され利用されたなどとは信じたくはありません。もちろん、本当に優れた作品もあります。自尊心を利用した商法では、被害者は口をつぐんでしまうものなのです。
またお金を振り込んだだけで何も手元に残らないような詐欺とは異なり、本は実際に出版されますし一割程度の本は贈呈されるのですから、「なんだかおかしい」と感じた著者も、たいていは泣き寝入りしてしまいます。それに、騙されたとか水増し請求されたと思っても、著者にはそれを証明する術がないのですから、裁判で闘うことも困難です。相手は弁護士も抱えた出版社なのですから、それだけでもたじろいでしまいます。
そのようなやり方である以上、問題点を知っていながら報道してこなかったマスコミやジャーナリストの責任が問われるというものでしょう。
私個人のことでいえば、以前、自分でも呆れるくらい新聞や雑誌、知り合いの新聞記者やジャーナリスト、関係団体、国民生活センターなどに共同出版問題について情報を示し告発してきた経緯があります。名前も連絡先も明らかにしてです。でも、ほとんど応答がありませんでした。
とりわけ広告を掲載している新聞は、批判記事を書けば広告を出してもらえなくなるために批判できない仕組みになっています。ところが、新風舎の提訴の記者会見が開かれた途端にマスコミが飛びついたのです。新聞もテレビも裁判や刑事事件にでもならない限り目もくれない、それがマスコミやジャーナリストの実態です。
さて、新風舎から本を出している方の中に、ジャーナリストがいます。藤原新也さんが新風舎問題を取り上げ、新風舎への批判が広まってきたこともあり、私はお二人のジャーナリストの方にメールで忠告をしました。この方たちは決して騙されて出版したわけではありませんが、第三者から見れば利用されたと同然です。ジャーナリストという立場である以上、新風舎の実態が明らかになってきている中で、その出版社の広告塔に利用されていることを自覚して適切な行動をとるべきだと考えたからです。
新風舎の被害者の会ができるとの情報ももたらされていましたから、批判されないためにも平間至さんのようにきっぱりとした態度をとられることが望ましいと思いましたし、問題が明るみになっている以上、取材して報道するのがジャーナリストとしての社会的責任であると思ったのです。
メールをしたお一人の江川紹子さんからはお返事をいただきました。新風舎のことは知らなかったので新風舎に説明を求めたが、自分としては問題のある商法だとは考えていないとのこと、そして自分が広告塔に利用されているとも思っていないとのことでした。その見解に対してもお返事を差し上げましたが、それ以降は連絡がありませんでした。
もうお一人の浅野健一さんからは、返事もありませんでした。浅野さんはメディア論がご専門ですから、このような問題には関心を持たれるのではないかと多少は期待したのですが・・・。
ジャーナリストを標榜しながら、ネットで批判が噴出している出版というメディアの詐欺的商法について関心を示さないことに愕然としましたが、結局のところその程度の意識しかないのだというのが私の出した結論です。
もちろん、すべてのジャーナリストがそうだというわけではなく、岩本太郎さんや長岡義幸さんのように以前からこの商法を批判しているジャーナリストもいます。でも、大半のジャーナリストは名誉毀損で提訴されることを警戒しているのか非常に及び腰であったり、あるいはそれほど関心を示しません。
私はマスコミやジャーナリストへ期待するのはやめて自分でインターネット新聞JANJANやブログで問題点を指摘したり、被害をなくすことを目的にしたNGOである共同出版・自費出版の被害をなくす会を立ち上げることを選んだのです。
もちろん記者の方たちから取材依頼があれば対応はしますが、徒労に終ることもしばしばです。ここに日本のジャーナリズムの構造的問題があるのでしょう。
共同出版問題については、インターネット新聞JANJANが果敢に取り組み、昨年からはオーマイニュースにも記事が掲載されていますが、マスコミが本質的問題点を報道できない現状では市民メディアの役割は大きいと思います。
JANJANの共同出版問題についての総括的記事を紹介しておきます
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