クモはどこで越冬するのか?
北海道に来てから、「凍上」という現象を知りました。地面が凍って持ち上がるのです。氷の力というのはすごいのですね。ですから、北国では住宅の基礎も凍らない深さまで掘り込んで造られます。
そんな北国でも、春になるとどこからともなく昆虫やクモなどが這い出てきます。いったい冬の間、クモはどこに行ってしまうのでしょうか? どうして凍らずに冬を越せるのでしょうか? 北海道に来た当初、私は大いに疑問を抱いたものです。
夏の間あちこちに網を張り、あるいは地面を走りまわったり草陰で獲物を待ち伏せしていたクモたちの大半は、秋の深まりとともに姿を消してしまいます。
昆虫では種によって卵、幼虫、蛹、成虫のどの段階で越冬するかが決まっています。クモも同様に、卵・幼体・成体のどの段階で越冬するかは種によって異なりますが、北国では卵や成体での越冬は少数派で、多くのクモが幼体で冬を越します。
成体のクモは、春から秋に産卵すると普通は死んでしまいます。そして、その年に生まれたほんの数ミリの小さな子グモが、氷点下30度近くなる冬を乗り切っているのです。
秋に落葉をかき分けると、さまざまな種類の子グモや小型のサラグモ類が集まっています。冬が比較的暖かい本州などでは、落葉の下で越冬するクモがたくさんいます。でも、私の住んでいるところでは晩秋になると表土が凍てつき、落葉の下にいたクモは姿を消してしまいます。
秋に庭の手入れをしていると、掘り返した土の中から小さなクモが出てくることがあります。まだ雪の融けきらない早春に、河畔の土を棒切れで掘っていたら、越冬中のコモリグモがもぞもぞと出てきたことがあります。このように多くのクモは、地中に潜って冬を越すようです。
また、秋に地表や植物の根際などに産卵するクモもいます。雪は断熱効果があるので、雪の下になるところは越冬に最適なのでしょう。雪が積もってしまうと、地表面の温度は0℃程度なのです。地表近くで越冬する場合、雪が積もる前の初冬の時期に、いかに凍らないようにするかが問題になります。
しかし、樹皮の下など寒気に直接さらされる地上部で越冬する種もあり、氷点下30度もの寒さに耐えねばなりません。そのようなクモはたいてい糸で袋状の住居を造っています。糸でつくられた住居は、クモの体が濡れるのを防いでくれるのです。
木の幹にわらを巻きつけてそこで虫を越冬させ、春にそのわらを燃やして害虫退治をすることがありますね。あれは虫たちの越冬習性を利用しているのです。樹皮の下などで越冬するクモは、こうしたわらの中にも入りこみます。
もちろん越冬中は「休眠」状態で、何も食べずにじっとしているのです。木の幹すら凍らせて「凍裂」を生じさせる厳しい自然の中で、冬を耐えて生き続けている小さな虫たちのたくましさを感じずにはいられません。
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