二重調査の怪
えりもの森裁判が対象としている皆伐現場の152林班43小班の10伐区では、伐採対象木として376本の調査を行い、この調査結果を元に日高森づくり協同組合と売買契約を締結しています。
前回の記事にも書きましたが、この収穫調査ではまず日高森づくりセンターの職員が調査を行い、262本にナンバーテープとピンクのスプレーをつけ114本は「玉取り」としてピンクのスプレーで印をつけました。この職員が実地調査した調査野帳には、376本の収穫木の樹種・胸高直径・歩止まり・品位が記載されています。
ところが、不思議なことに職員がナンバーテープをつけた262本の木について、鬼頭木材にも調査を委託しているのです。この鬼頭木材による調査野帳には、職員による調査結果を丸写しにしたかのような樹種と胸高直径のデータ、および樹高調査が記載されています。すでに職員によって調査されている樹種と胸高直径を再度調査する必要などないはずです。
残る樹高調査というのは、収穫木の1本1本について樹高を測っているわけではありません。これはすでに作成されている樹高曲線に胸高直径を当てはめることで算出します。ですから、これもわざわざ業者委託する必然性はないのです。
こうして見ると、鬼頭木材に委託した調査は、すでに被告職員が行った調査の上塗りでしかないといえます。必要性のない調査であれば、これも住民監査請求の対象となるものであり、きわめて違法性の高い調査といえるでしょう。
なぜ、このような不要の調査を業者に委託したのでしょうか?
本件の伐採は、日高森づくり協同組合が請負っているのですが、この日高森づくり協同組合は鬼頭木材、(株)津田組、(株)南組、(株)ホリタで構成されています。
日高森づくり協同組合は、日高地方の道有林の伐採に関して長年にわたり森づくりセンター、その前身である北海道林務部と取引関係にあります。そして日高森づくり協同組合の事務所は鬼頭木材の様似工場にあるのです。つまり、鬼頭木材は日高森づくり協同組合の中でも発言力が強いことがうかがわれ、その実質は鬼頭木材といえます。
そして、本件の伐採も、地ごしらえ作業も鬼頭木材が行っているのです。
このような背景から、鬼頭木材に委託した不要な委託調査や無秩序な伐採、さらには被告である北海道がこの伐採について黙認する姿勢が何によるものなのかを推測することができます。 そこから浮かびあがってくるのは、行政と業者の癒着疑惑です。(つづく)
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