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2007/12/21

諫早湾干拓の愚行

 諫早湾は学生の頃に2回ほど訪れたことがあります。かれこれ30年ほど前になるでしょうか。諫早湾といえば野鳥の渡来地として知られており、干潟に渡来する野鳥を観察するためにはるばる東京から出かけていったのです。

 バスから降りて広大な農地をてくてくと歩き到達した諫早湾は、干拓事業によってすでに自然の海岸線は失われ、堤防でぐるりと囲まれていました。

 それでも潮が引くと広大な干潟がはるかかなたまで続き、汀線あたりでツクシガモが陽炎でゆらめき霞んでいるのでした。堤防から見下ろす干潟はおびただしい生物を内包し、底なし沼のように鈍く光っていました。

 2度目の諫早湾は、年末からお正月にかけての九州旅行でした。堤防の傍らの農具小屋にもぐりこんで一夜を明かしたのですが、潮が満ちた諫早湾にはおびただしいカモが集結し、夜中中かん高い声が響きわたっていました。一晩中カモの声を聞きながらうつらうつら過ごしたのは、後にも先にもこのときだけです。

 その日本にわずかに残された広大な干潟を堤防で締め切って埋め立てるというとんでもない事業のことを知ったときには、心底怒りがこみ上げたものです。

 自然保護団体や漁民の反対を押し切って貴重な干潟を潰し、漁業に壊滅的な打撃を与え、有明海の生態系を破壊した「ギロチン堤防」から10年目の今年11月に干拓事業が完成し、明日22日には堤防道路が開通するとのこと。

 その愚行につかわれた工事費はなんと2500億円にものぼるそうです。

 巨額の工事費と引き換えに失ったものはあまりにも大きく、愚の骨頂といえる工事でした。まさに「工事のための工事」の典型です。

 あの、広大な干潟に羽を休めた野鳥たちは、羽を休める干潟を失ってどうしたのでしょうか? 干潟の生き物を殺し、海を殺したのは誰でしょうか?

 「ギロチン堤防」は生物多様性条約を締結した国の恥ずべき行為として、歴史に刻みつけられるでしょう。

参考サイト

さまざまな問題を抱えたまま「完成」を迎えた諫早湾干拓

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