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2007/12/29

共同出版と消費者問題

 共同出版における著者と消費者の関係について説明しておきます。

 消費者とは、商品を購入し使用する者やサービスを受ける者のことを指します。物を買う人だけではなく、サービスを受ける場合も消費者です。たとえば美容院でパーマをかけたりするのもサービスであり、お客さんは消費者です。工務店に家を建ててもらうというのもサービスです。

 著者が自費出版業者に本の編集や印刷・製本をしてもらい、著者に本を納品するなら制作サービスですね。従来、自費出版というのは、著者が自分で必要な部数の本の制作を自費出版業者や印刷会社に依頼してつくってもらうことでしたから、著者は消費者ということになります。

 しかし、共同出版の場合は、著者の本を制作するサービスではありません。出版社が自社の商品(本)をつくってその売上金も出版社のものとなるのですから、著者に対するサービス提供の契約ではなく、著者が出版社の事業に出資する契約です。出版権や所有権という財産権を出版社に移譲する対価として著者が印税を得るという契約です。

 ですから著者の負担金はサービスへの対価ではなく、出版社の事業に対する出資といえます。著者に贈呈される一割程度の本は、出版社への出資の見返りであり、著者の注文に対する納品とは異なります。

 ところで、2000年に消費者保護の目的で消費者契約法という法律ができました。消費者契約法では、消費者を以下のように定めています。

第二条 この法律において「消費者」とは個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。

2 この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。

3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。

 共同出版の著者はサービスを受ける立場ではなく、出版社から印税を得られるのですから事業者といえます。契約上は著者を消費者とするのはどう考えてもおかしいといえます。

 また、自費出版で著者に所有権のある本を制作するだけなら著者は消費者ですが、書店流通を自費出版社に依頼した場合は流通サービスを受けることになります。しかし、この場合は著者が売上金を得るのですから、完売や増刷で利益が得られるような契約であれば、著者は消費者ではなく個人事業者といえるでしょう。事業者と事業者の契約です。

 つまり、本を書店に流通させて販売し利益が得られる契約内容であれば、消費者契約法は適応されないことになります。「新風舎商法を考える会」の世話人である尾崎氏は一貫して著者は消費者だと決め付けていますが、私にはとうてい理解できませんし弊害ですらあると考えています。

 クレジット契約のとき、新風舎は事業者用の契約書を使用しているために倒産した場合などの解約が困難になっています。それに対して文芸社は消費者用の契約書を使用しているようですから、倒産した場合などは著者に有利です。事業者用の契約書を使用している新風舎を批判するために著者を消費者だと主張しているのであれば、本末転倒だと思います。「考える会」のHPには、新風舎商法改善の見込み無く、断末魔の様相へ-3- という記事が掲載されました。新風舎の倒産を煽るようなことをやっているのは誰でしょうか?

 私自身も、以前この問題で国民生活センターに電話したことがありますが、「出版契約の場合は消費者ではありません」と即座に言われました。

 ただ、出版社の危機管理にも書いたように、共同出版の場合、出版・流通についてよくわからない素人の著者を相手に新聞や雑誌を利用して大々的に宣伝して原稿を募集しているという観点、また著者を錯誤させている悪質商法との観点から、たとえ消費者契約法に該当しない契約であっても消費生活センターなどの公的機関は相談に対応すべきだと思います。

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