夢を捨てきれない著者たち
11月27日放送のNHKの「クローズアップ現代」は、全体的には落胆する内容でしたが、印象に残ったことが二つあります。ひとつは新風舎を提訴した原告の方が、まだ本を売りたいという夢をあきらめきれないとの発言をしていたことです。
ひと昔前であれば、自費出版の本は販売しないのが当たり前でしたから、販売に夢を託してしまうことなどなかったでしょう。本を売りたい人は、コツコツと自分で売っていました。しかし、書店流通を謳う共同出版が台頭してからは、販売に夢を託す人が急増したようです。
夢を託してしまう陰には、出版社名の入った本を書店流通させる共同出版商法の繁栄、そして時折無名の著者の本がヒットするという事実が重なっているのかもしれません。しかし、ヒットする本というのは、必ずどこかで話題になっているのです。
ところが、いちど夢にとりつかれてしまうと、夢から覚めることは容易ではないようです。印税が安くても(あるいは無しでも)、書店で売ってもらうことに意味を感じてしまうのでしょう。そんな、あきらめきれない著者の多いことにため息が出てきます。
「自分の本は売れるはず」と思っている方は、ブログなどで公表したり文芸誌などに投稿してみるとよいのではないでしょうか。本当に共感を得られる作品であれば、必ず反響があるでしょうし、ネットや雑誌などで紹介されるかもしれません。商業出版を提案してくる出版社があるかもしれません。
まず、著者の方たちが現実の厳しさを知らなければならないと感じています。一日に200点以上もの本が出版され、プロの作家の本でさえあまり売れない現状の中で、名前も知られていない人の本がそこそこ売れるなどということはきわめて稀なことです。素人の書いた本は「ほとんど売れない」という自覚を持ったうえで出版を考えることが大切です。
いわゆる共同出版ではなく、著者に所有権がある本をつくる自費出版(制作・販売サービス)の場合は、あくまでも販売は附帯サービスです。販売に過度の期待をすべきではありません。販売のための費用も著者負担になるのですから、販売方法や販売実績、編集内容などを説明してもらったうえで、よく考えて決めるべきです。
また、書店で売るだけが販売の方法ではありません。ブログや葉書などで宣伝したり、置いてもらえそうなお店などと直接交渉して、著者が自分で地道に売っていくという方法もあるでしょう。もちろん販売して代金をもらう以上は、きちんと編集がなされ、内容的にも読者の共感を得られる本であることが前提ですが。
商業出版で本を出した著者も、自分の書いた本の宣伝に力を注いでいます。売りたいならまず著者自身が努力することが大切ではないでしょうか。
もう一つ印象に残ったことというのは、元社員の方が「本を売って利益を得ているのではなく、著者から利益を得ている」と指摘していたことです。元社員は、それが不当なことだと認識しているからこそ、わざわざ指摘したのでしょう。
残念ながら、番組ではそのことについて特にコメントしていませんでした。私にはこの点をなんら疑問に思わない人が多いことが、不思議でなりません。
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