記者クラブに浸かった軟弱ジャーナリズム
北海道新聞は、4日の朝刊社会面で「上士幌 国立公園天然林の沢 事前協議せず砂利道」という記事を掲載しました。
記事の内容は、大雪山国立公園内の上士幌町タウシュベツ川支流の沢に、十勝西部森林管理署東大雪支署が、環境省との事前協議をせずに大量の砂利を敷き詰めて作業道を敷設した。自然公園法では河川の水位・水量を変える事業を実施する際には環境省との事前協議が必要としているが、それを行っておらず違法の疑いがある。さらに10月に現地調査をした河野昭一京大名誉教授らが、林野庁と環境省に意見書を提出して調査を求める、というものです。
森林伐採問題などに取り組んでいる市川守弘弁護士らが3日に林野庁と環境省に意見書を提出し、4日の午後に記者会見を行ったことで、同日にNHKやHTVがニュースで流したほか、翌5日には朝日・毎日・読売の各紙も一斉に報道しました。
でも、この問題はつい最近分かったことではありません。新聞記事にあるように、自然保護団体の一行は10月4日にこの現場を視察したのですが、この日には北海道新聞の記者も同行し、翌5日の新聞でタウシュベツの皆伐について写真入りで報じたのです。さらに5日に札幌で行われた講演会「日本から天然林が消える日」では写真を示してこの実態を報告しました。
これについては、以前のブログでも書きましたが、私もインターネット新聞JANJANにルポ記事を書いています。
さらに、タウシュベツの皆伐地の近くで同じ時期に行われた幌加地区の皆伐については、かねてから十勝自然保護協会が問題視し、東大雪支署に質問書を提出していました。私も昨年5月にインターネット新聞JANJANでこの問題を指摘しています(破壊される大雪山国立公園の森林)。
このような非常識きわまりない施業が国立公園で行われ、自然保護団体によって指摘されていたのですが、これを報じたマスコミは10月5日の北海道新聞がはじめてでした。12月4日の北海道新聞の写真にあるように、道新はその後10月31日にも現場を取材していました。地表面を重機で剥ぎ取った皆伐と、その伐採に付随した沢の破壊というとんでもない施業の実態は、かなり前に確認し、取材を重ねて12月4日の記事になったのです。
今回、ほかのマスコミも一斉に報道したのは、自然保護団体が意見書を提出して記者会見を開いたからにほかなりません。
常識的に見ても呆れる環境破壊行為ですが、違法の疑惑を指摘されなければ報道しない、また記者会見をしなければ報道しないという低レベルのマスコミの姿勢には、いささか呆れ果てます。
共同出版問題でも、同じことがいえます。
これも、日ごろどっぷりと記者クラブからの情報に浸かり、自ら問題意識を持って取材しようとしない軟弱なジャーナリズムの弊害といえるでしょう。
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