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2007/12/26

共同出版と裁判

 今年は、共同出版(自費出版)問題がかつてなく話題になった年でした。

 出版ニュース社のブログ「2007年の出版界10大(重大)ニュース(予定)」によると、新風舎の提訴は第4位とのことです。

 共同出版を問題視してきた人たちにとっては、ようやくマスコミがとりあげ国民生活センターも動き出したというのが実感でしょうか。しかし、共同出版社に対する提訴は今回がはじめてというわけではありません。それにも関らずマスコミがこの問題を取り上げた裏には、ことさら新風舎のみを批判して被害者を集め、集団提訴に協力してマスコミに煽ったジャーナリストがいたというのが実態だと思います(事実から見えてくるもの 参照)。

 私は、「新風舎商法を考える会」が関った二つの集団提訴について批判的な記事(理解できない訴状 提訴第二弾と軌道修正の欺瞞 参照)を書きましたが、決して裁判を否定する立場ではありません。交渉によっても埒があかないのであれば、著者には裁判しか解決の道は残されていません。提訴は当然の権利です。これについては、碧天舎が倒産する前の2005年にインターネット新聞JANJAN(騙しの出版商法と闘うために 参照)にも書いています。

 では、なぜ批判的な記事を書いてきたのかといえば、今回の提訴はその訴えの中身があまりにも稚拙であったことと、新風舎を倒産させることが目的であるかのようにマスコミを利用して提訴を大々的にアピールしたということにあります。

 弁護士をつけて集団提訴するのであれば、問題点を的確につかんで勝訴し、軌道修正させることを目的にしなければ悪質商法をなくすことにつながりません。敗訴したり、和解で解決してしまったなら、悪質商法をのさばらせることにもなりかねないのです。

 現に、ライバル会社の文芸社は新風舎批判を尻目に、自社の流通出版を大々的にアピールしていますし、ほかにも同様なことをやっている出版社があります。共同出版商法の本質的問題点に切り込むのではなく新風舎だけの落ち度に絞った訴状は、稚拙というだけではなく何らかの意図すら感じてしまいます。

 また、このような商法に限っては、相手を倒産に追い込むようなやり方は極力避けなければなりません。倒産によって本もできなければお金も戻らないという被害者が多数出ることを考慮すべきです。倒産した碧天舎の被害者の方たちは怒り苦しんでいるのです。その心痛を受け止め、同じことを繰り返すようなことは回避すべきでしょう。マスコミを使って提訴を必要以上に煽ることは、碧天舎の倒産からなにも学ばないばかりか倒産を助長するだけなのです。

 さらに、新風舎から出版された著者の方たちの多くは、販売を続けてほしいと願っていることでしょう。出版社が軌道修正することが一番の解決といえます。

 共同出版では、著者の自己責任だと批判する人も多いようです。しかし、私は著者を錯誤させ不当な費用を請求する商法は、圧倒的に出版社側の問題だと思っています。

 ただし、著者が自分で署名捺印した契約が本の制作・販売サービスの契約であり、消費者契約を交わしたと錯誤しているのであれば、契約書の内容を理解していない著者にも責任があります。

 新風舎の契約書は基本的に商業出版の契約書と同じです。つまり出版権を出版社に設定することで出版社が複製権と頒布権を得、出版社が売上金を得る見返りとして著者に印税(著作権使用料)を支払う(ただし増刷分から)という、事業者同士の出版権の取引契約なのです。作品を高く評価したというのは、作品に財産的価値を認め、出版社が多少の費用負担をしてでも利益を得られると判断したことを意味します(高い評価が嘘であるなら、嘘をついたことが問題です)。財産的価値をみとめて印税を払う契約は消費者契約ではありませんし、著者も消費者という立場ではありません。作家が消費者ではないのと同じです。

 著者が支払う制作費は出版社への協力出資金であり、著者の本の制作・販売サービスに対する報酬ではありません。一割程度の著者への贈呈本は、出資への見返りといえるでしょう。出版社が著者にサービスをするのではなく、著者が出版費用の一部を出資してあげるという契約なのです。しかも「一部」としながら、実際の出版費用以上の出資金を請求して、契約するだけで出版社に利益を与えていると考えられるのです。著者は全面的な資金協力者であり、サービスを受ける側ではありません(「共同出版」でなければいいのかhttps://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post-691a.html 参照)。

 碧天舎の被害者の方はブログで著者を消費者としています。また、新風舎を提訴された方も自分たちは消費者だと捉えているようですが、契約上は消費者ではありません。そんなふうに自費出版(サービス)の契約だと錯誤させてしまうことこそ悪質出版社の「騙しどころ」であると理解すべきでしょう。

 著者は、出版社の出版事業に資金協力する契約書に署名捺印したことを自覚し、自分の交わした契約にもとづいて出版社のやっていることのどこがおかしいのかを明確にしなければなりません。裁判でも、自分の交わした契約に基づいて主張しなければ、勝訴は難しいのです。

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