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2007/11/04

「クマの木」だらけの線路跡地

 かつて、帯広から十勝三股まで旧国鉄士幌線という鉄道が通っていました。十勝三股は林業で栄えた集落ですが、伐採する木がなくなって林業が衰退し、1978年には十勝三股と糠平の間は列車が運行されなくなったのです。そして線路跡地にはケヤマハンノキやアカエゾマツの若い木が育っていき、ときどき「鉄ちゃん」(鉄道マニア)が訪れるくらいでした。

 今から10年ほど前に、十勝三股の近くの廃線跡地をK氏と歩いたことがあります(ただし、われわれは「鉄ちゃん」「鉄子」ではありません)。

 線路跡地を歩いていると、自然に生えたケヤマハンノキやアカエゾマツに、クマの爪痕や噛み痕があるのに気づきました。さらに、不自然に幹が折れたアカエゾマツもあります。そうです、「クマの木」です。それが、線路跡地に集中してあるのです。橋の部分に張られた有刺鉄線には、クマの毛が絡みついているではありませんか。この線路跡地は、クマの通り道だったのです。

 そういえば、以前、鉄ちゃんがこの線路跡地の鉄橋を歩いていたら、反対側からヒグマがやってくるのが見えて、一目散に国道に向かって走って逃げたという話を聞いたことがあります。逃げ場のない橋の上で、クマさんとご対面ですよ!

 そこで、この線路跡地の「クマの木」をK氏と調査したのですが、その時はさすがにクマ撃退スプレーを握りしめて歩きましたよ。何せ、ここはあまり見通しがよくないところが多いのです。傍らの藪からクマさんがヌッと出てくるのではないかとか、カーブを曲がったら線路の上にクマさんがいるのではないかとか・・・ ついつい考えてしまうのです。

 いやいや、本当に「クマの木」の多いところでした。線路跡地に沿って、爪痕や噛み痕、幹を叩き折った痕などが続いていました。

 クマさんも藪の中より線路跡地の方が歩きやすいのでしょう。でも、「クマの木」がこんなにある理由はそれだけではありません。砂利を敷き詰めて枕木の置かれた線路跡地は、クマの好物のアカヤマアリの巣がたくさんあるのです。クマにとっては餌が豊富で、しかも歩きやすいという絶好の場所なのですね。それで、優位の雄が、自分のなわばりであることを誇示するために、あちこちに目印をつけたのでしょう。有刺鉄線に引っかかっていた毛も、わざと体をこすりつけたのだと思います。でも、痛くないんでしょうか?

 その後、ここの木は伐られてレールが取り外されてしまったのですが、その作業員もクマさんに出会ったそうです。それに、ここを散歩していてクマさんを見かけたという人も複数います。地元の人の話しでは、列車が通っていたときも、このあたりではしょっちゅうクマを見かけたそうです。

 かつて千数百人もの人が住んでいた十勝三股も、今は二世帯しか住んでいません。住宅のすぐ近くにもクマが出てきます。まさに、クマの生活圏に住み、クマと共生しているのです。  ところが、そんな「クマの道」におかしな計画がもちあがりました。(つづく

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