林道をズタズタにするラリー
ラリー問題のつづきです。
林道というのは、そもそも森林の施業や管理のために造られた道です。ですから、時速30キロメートル前後の低速走行を前提として設計されています。そこを時速100キロを越える猛スピードで走ったらどうなるか・・・。
林道に敷かれた砂利は周辺の林内に飛び散り、大量の土埃を舞い上げます。とりわけカーブでは路面が深くえぐれて大量の土砂が路肩に堆積します。林道の路盤構造が破壊されてしまうのです。
もちろん、主催者は競技が終るとグレーダーをかけて林道を補修するのですが、そのような原状回復は表面上のものであり、いちど路盤構造が破壊されてしまうと、簡単には元の状態にもどりません。毎年それを繰り返したなら、おそらく大雨による浸食などに弱い路面になってしまうでしょう。
競技をしていて路面のわだちが深くなると、リタイアが続出することになります。2002年のアジアパシフィックラリーで利用された豊頃丘陵の道有林では、コース路面に数十センチものわだちができて車体の腹をこすり、半数以上の車がリタイアする事態になりました。この道有林では主催者による路面の原状回復が不十分であるとして、所有者の北海道からクレームがつけられたのです。
このようなことがあったためか、その後豊頃丘陵はコースから外され、シマフクロウやナキウサギの生息地である新得町の林道にコースが移されたのです。それで、今は主として国有林の中でラリーが行われています。
それにしても、林野庁はなぜ林道をズタズタにするラリーに、林道の使用許可を出すのでしょうか?
10月はじめの森林伐採の視察の際、ラリーコースになっている林道を通ると、砂利を敷きグレーダーをかけた直後のようで、路肩の草も刈ってありました。ラリーが近づいてきたので、主催者が整備したのだと思ったのですが、これについて森林管理署長に尋ねてみると、「通常の整備として、こちらでやったものです」との返事。「ええっ!」と思ってしまいました。
ラリーでズタズタにされてしまう直前に林野庁がわざわざ林道を整備するとは、なんとも不思議ではありませんか! なんだか、ラリーに協力しているみたいですよねえ、税金つかって。
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