何のための魚道?
サケが遡上するシーズンになりました。
十勝川では、千代田堰堤でサケを捕獲し、養殖事業を行っています。これまでは千代田堰堤によって、サケはそれより上流にはほとんど遡上できませんでした。
河川管理者である帯広開発建設部は千代田堰堤の横に新水路を造り、4月から運用を始めました。増水時に水を新水路に分散させるというのです。要するにショートカットです。その際、新水路に魚道が設けられ、そこを遡上するサケを観察するための「魚道観察室」を1億1千万円かけて造りました。魚道を遡るサケを、アクリル板を通して側面から見る施設です。
ところが北海道新聞によると、魚道観察施設ではサケがほとんど見られず、不評を買っているとのこと。新水路にサケが入るとその捕獲作業が大変なので、新水路にあまりサケが入らないようにしているらしいのです。
新水路の魚道に入ったサケは、何と捕獲されてしまうのです! この魚道、サケを上流に遡上させることが目的ではなく、施設でサケを見せることが目的だったのですね。
ここから、おかしなことがいろいろ見えてきます。
まず、増水対策の河川のショートカットです。河川の蛇行部分を直線でつないでしまえば、水の流速が早くなります。すると、河口部に早く水が到達することになります。でも、海水面の高さは変わらないのですから、河口部で洪水が起きやすくなるのです。河川のショートカットは問題があることがわかっているのに、河川管理者はいまだにそのやり方を変えようとはしません
釧路湿原では、自然再生の名の下に直線化した川を蛇行させようとしていますが、その一方で、国は相変わらすの直線化をやっているのです。こうしたショートカットは千代田堰堤だけではなく、その上流の相生中島地区というところでも行われています。
それから魚道です。魚道というのは本来、ダムなどの河川を横断する構造物によって魚の遡上が妨げられないように設けるのです。魚道に入ったサケを捕獲してしまうのであれば、魚道をつくった意味がそもそもありません。遡上するサケをすべて捕獲して人工増殖させる必要があるのでしょうか?
そして、観察施設。サケの遡上を観察してもらいたいなら、巨額の費用をかけた観察施設など必要あるでしょうか? 自然の状態で見てもらうのが一番ではありませんか? 昨年の今頃、湧別川に行ったのですが、そこではサケが遡上して自然産卵している姿を堪能できました。
川にダムがなかった頃、サケは川を遡上してヒグマやシマフクロウ、キタキツネなどの餌となり、森にも運ばれて森の栄養源になってきたのです。河川管理者は見せ物施設を造るのではなく、魚を遡上させ、本来の生態系を取り戻すように努力していくべきではないでしょうか?
問題のあるショートカット工事と観察施設に巨額の税金を注ぎこんでいる国に、疑問を感じざるを得ません。
« これが国民年金の未納者対策? | トップページ | クマの木 »
「河川・ダム」カテゴリの記事
- 十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書(2023.02.10)
- ダムで壊される戸蔦別川(2022.08.19)
- 集中豪雨による人的被害は防げる(2018.07.11)
- 札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問(2015.12.21)
- 異常気象で危険が増大している首都圏(2014.09.17)
はじめまして!札幌在住のミスターと申します。アメマスやニジマス釣りが好きであちこちに出かけてます(笑)去年初めて魚道を拝見し…唖然としました。百歩譲ってサケを上流まであげて自然産卵さててもらえないものなんですかね?
釧路川のウライはご存知でしょうか?
ウライには魚道はありません!事業者と言えどシロザケとカラフトマス以外は捕獲する事が出来ません。他魚種は再放流しなければなりません。本来なら12月初旬には撤去されてますがいま現在も設置されたままです。無人です。絶滅危惧種のイトウは10月から産卵の為に上流に向かうはずなのですが…
ここ最近はサケの漁獲量も減少してるそうでいつもなら八月にウライの設置は始まるのですが今年は六月からだそうです。
何をどうしたらいいのやら悩んでます。
投稿: ミスター | 2013/02/13 14:28
ミスターさん、こんにちは。
ウライ漁は、もともとはアイヌの人たちが利用していた鮭を捕るための仕掛けですよね。川幅いっぱいに仕掛けるウライを長期間設置しているのですか。それでは、イトウは遡上できませんね。なぜ、そんなに長期間ウライを設置しているのでしょう?
釧路川といえば自然再生事業もやっているところですし、国立公園もあります。長期間魚の遡上を妨げるようなことはやめて欲しいですね。環境省はどう考えているのでしょう。
投稿: 松田まゆみ | 2013/02/13 16:32
回答ありがとうございます。その件で十勝釧路管内サケマス増殖事業協会に問い合わせました!例年にない大雪で現地には行けないのと増水により撤去作業が出来ませんとの事です。行き場を失ったサカナは最後に鉄格子に入る仕組みになってます。鉄格子に入ったサカナは定期的に再放流してるそうです。現地に行けないのにどうやって放流してるんですかね!不思議です。産卵出来るイトウの個体はわずか十数匹です。今回はこの十数匹はダメかと思われます。猿払川などある程度の個体数の居る川ですと再生可能かと思いますが、、環境省に問い合わせをしましたが、川幅いっぱいにウライをかける事も(せめて少しの魚道だけでもと願います)設置期間も法律では決まりがないとの事です。
ウライの設置期間も
投稿: ミスター | 2013/02/13 19:34
たしかにこの冬は積雪が早く、また雪も多かったのですが、道路を除雪して撤去するということはできなかったのでしょうか。それに、ミスターさんがおっしゃるように、現地に行けないのにどうやって放流しているのでしょう? なんだか不可解な回答です。
環境省は相変わらず、法的根拠がなければ指導できない、という立場なのですね。お役人はいつもそう言います。希少種の保護を行うべき役所が、なんとも情けない姿勢です。
投稿: 松田まゆみ | 2013/02/14 06:57
環境省ってなんの為にあるのでしょうか!孵化事業協会の今年度の事業計画書に目を通してみましたら不漁続きの為に今年のウライの設置は二ヶ月前倒しの六月からだそうです。サクラ鱒の遡上はどうなるんでしょうか?シャケは一匹たりとも上にあげないぞ!サクラ鱒アメマスの遡上なんて知らん!産卵を終え下りたい絶滅危惧種イトウはウライがある為に海に帰る事も出来ません。と言う前に上がれません。どうしたらいいのでしょうか?
投稿: ミスター | 2013/02/14 13:19
ウライの設置に関しては道知事の許認可を受けていると思いますので、北海道に問い合わせ、設置期間の短縮を申し入れてみたらどうでしょうか。
水産林務部漁業課が担当かと思います。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ggk/index.htm
投稿: 松田まゆみ | 2013/02/14 16:28
今日自分も魚道を見に行ってびっくりしてしまいました。せめて難を逃れて魚道にたどり着いた個体だけでも遡上させてやりたいものですが…
投稿: 小田 | 2015/09/02 20:10