動物の生息地を分断する道路
道路はしばしば動物の生息地を分断するとして問題にされます。ナキウサギも道路を横断して移動しますが、開けた場所を横断することで、外敵に狙われたり交通事故にあうなどのリスクが高まります。さらに、道路は人目につかない小動物にも大きな影響を与えてしまうのです。
大規模林道の場合、幅が5メートルから7メートルもあります。このために急傾斜のところでは大きな法面が必要になり、非常に大きく森林を切開くことになります。森林の落ち葉の下にはさまざまな昆虫や無脊椎動物が生息していますが、それらの中には飛んで移動することができないものがたくさんいます。彼らにとって、道路や広大な法面は、渡ることが不可能な川のような障害物になるのです。
落ち葉や石の下を棲みかとしているオサムシやゴミムシ、マイマイ(カタツムリ)や、クモ、ザトウムシ、ムカデなどは湿った環境を好みます。木陰があり、落ち葉がたまるような従来の林道であればまだしも、直射日光があたり乾燥している法面や道路は、湿った場所に生息する小動物にとってはまったく異質な世界ですから、それを越えて移動することはほとんどないでしょう。このような移動性の小さな動物では、生息地が分断されると個体群が小さくなって孤立し、遺伝子の交流が絶たれてしまいます。
大規模林道では、道路の脇の排水溝に落ちた小動物が脱出できるよう、排水溝の側面の一部に斜面を設けるなどの工夫がされています(写真)。しかし、移動性の小さな森林性の小動物の場合は、開けた法面に出て行く可能性自体が少ないのですから、そうした工夫もあまり意味がないように思われます。しかも、そのような工作物は、道路の法面側にしかつけられていないので、結局は道路を横断することができないのです。
そういえば、砂利道を通る機会の多かった頃は、夜によくトガリネズミが道を横断するのを見かけましたが、どうしたことか最近ではすっかり見かけなくなってしまいました。道路の舗装化が関係しているのでしょうか?
森林の施業・管理のための道路というのは、幅3メートルほどの従来の林道で十分ですし、そのような道であれば動物たちにとっても大きな障害にはならないでしょう。
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