見直してほしい「どんぐり銀行」
今日の北海道新聞に、高知県大川村の「どんぐり銀行」の出張所が札幌にオープンしたことが紹介されていました。
「どんぐり銀行」というのは、どんぐりを集めて送ると通帳が発行され、小さいどんぐりは「1どんぐり」、大きいどんぐりは「10どんぐり」と換算されて、100どんぐりで1本の苗木が払い戻されるシステムです。また、集まったどんぐりで苗木をつくり、緑化に活用するそうです。
「全国からどんぐりを集めて苗木をつくり、緑化に利用する事業」と聞くと、たいていの人は賛同してしまうでしょう。「どんぐり銀行」とネットで検索してみると、案の定、このシステムを紹介したり評価しているサイトばかりが並んでいます。これはちょっと大変!
この事業、温暖化防止にも貢献するように思われますが、いろいろな問題があります。
樹木は、長い年月をかけて、育った場所の環境条件に遺伝的に適応してきているのです。北海道の気候に適応してきた樹のどんぐりを四国に植えたら、環境条件がうまく合いません。どんぐりを育てて植樹に利用するのであれば、植樹する地域で地元のどんぐりを集めて苗づくりをし、その地域に植えるべきなのです。全国からどんぐりを集めて苗づくりをし、それを全国に配布したり、緑化に利用するのは、地域ごとの遺伝子の多様性を壊してしまうことになります。
また、一口にどんぐりといっても、種類はさまざまです。ミズナラ、カシワ、クヌギ、コナラなどの落葉広葉樹のどんぐりから、シイやカシなどの常緑広葉樹のどんぐりまで、いろいろな種類があるのです。それらのどんぐりには、しばしばゾウムシなどの昆虫の卵が生み付けられているのですが、そのような虫までどんぐりと一緒に、全国から高知県に運んでしまうことになります。
全国からどんぐりを集めるという「どんぐり銀行」の発想は、違う地域から生物を持ち込むことにつながるのです。生物多様性の保護が叫ばれ、外来種が問題視されていますが、そうしたことに関わってくる問題です。
さらに、どんぐりはクマやリス、ネズミ、カケスなどの重要な食料です。どんぐりを餌としている動物たちのためにも、多量の採取は慎まなければなりません。
どんぐりで苗をつくるのはいいのですが、生物多様性の保護を考えるなら、全国から多量のどんぐりを集めるようなやり方は見直さなければならないでしょう。
マスコミも安易に賞賛するのではなく、記事にする前に、専門家に問合せるなどしてほしいと思うのですが・・・。
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