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2007/08/08

「あなたの本」って誰のもの?

Bungeishapanfu  文芸社の新聞広告やパンフレット、新風舎の広告などには、しばしば「あなたの本」という表現がつかわれています。でも、これってちょっと変ではないでしょうか? なぜなら文芸社や新風舎の共同出版では、「著者に所有権のある本」ではなく「出版社に所有権のある本」をつくるのですから。

 共同出版問題では、しばしば本の所有権のことが話題になります。共同出版は自費出版だから、本の所有権は著者にあるべきだという主張があります。

 商業出版の場合、出版社が自社の本をつくって売上金を得ることを前提として、出版社が出版権(複製と頒布の権利)を独占することになります。売上金を得るのは所有者ですから、当然のことながら本の所有権は出版社にあります。契約書に所有権のことが書かれていなくても、出版社が本の売上金を得るのであれば、所有権が出版社にあることを意味します。ですから著者には印税(著作権使用料)を支払うのです。

 新風舎や文芸社の契約書は、基本的には商業出版の契約書の雛型をベースにしたものです。著者には売上金ではなく印税が支払われます。また、文芸社では著者に渡す分は「贈呈」であることからも、本の所有権が文芸社にあることは明らかです。新風舎の契約では、著者が贈呈などで本が必要になった場合は「出版社から購入」をするのですから、やはり所有権が新風舎にあることは明らかです。

 つまり、著者は「本の所有権が出版社にある」という契約書に署名捺印しているのですから、「所有権が著者にないのはおかしい」という主張をすることにはならないでしょう。著者が問題とすべきことは、契約内容がおかしいということではなく、その契約内容に対して支払った費用が正当なのか、不公正な取引ではないのか、あるいは契約にあたり騙すようなことはなかったのか、といったことになります。

 前述したように、商業出版における出版権の設定契約では、本の所有権も出版社にあることを意味するといえます。ただし、出版権イコール所有権ではありませんから、たとえ出版権を出版社に設定しても、本の所有権が著者にあり、著者には印税ではなく売上金を支払うということが契約書に明記されているなら、それは制作請負・販売委託契約ということになります。

 では、なぜ「本の所有権は出版社にあるべき」という主張が出てくるのでしょうか? それは、悪質な共同出版の場合、著者がすべての出版費用を負担していて、出版社はなんら費用負担していないと考えられるからでしょう。出版社が本を販売して利益を得るのではなく、著者から利益を得ているのであれば、実質的には自費出版と何ら変わりがないのです。それなら、本の所有権は著者のものとし、著者には印税ではなく売上金を支払うべきだという主張が、一般論として成り立ちます。

 ただし、私の知る限りでは、文芸社も新風舎も「出版社はなんら費用負担していない」ということを認めてはいません。もっとも私の契約において、文芸社は請求した制作費に利益を加算していたことは認めています。

 ところで、文芸社は60パーセントの「売上還元タイプ」も選べるという宣伝もしています。売上金を著者に支払うのであれば、本の所有権は著者にあるべきですが、そのあたりはどうなっているのでしょうか? また、取次や書店のマージンを差し引き、売上金の60パーセントも著者に支払うということであれば、売れた場合でも出版社の利益はごくわずかです。取次を通した委託販売にした場合、返品が多ければ赤字になってしまうでしょう。どのような流通・販売方法をとり、本当に売る気があるのか、ということが問われることになります。著者に多額の費用を請求して利益を得ていれば、あえて売上収入を期待する必要がありません。売れる見込みも、売る気もないのであれば、還元率も高く設定できるのではないかと思われるのですが・・・。

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