貫通したけど、誰が使うの?
昨日、「置戸・阿寒線」の茂足寄から上螺湾の工事区間を視察してきました。
この区間は茂足寄側と上螺湾側の両側から工事を進めていましたが、昨年10月の時点では、峰のごく一部が残されていて貫通はしていませんでした。しかし、今回の視察で、その後貫通させていたことがわかりました(写真参照)。あとは、トラフの設置と法面および舗装工事などが残された状態になっています。緑資源機構の談合が明るみになる前に、貫通させてしまったのでしょうか?
峰の茂足寄側の谷は崩した土砂で盛り土をし、その上に道路がつくられています。谷の部分は橋を架けるのではなくパイプが埋められていますが、集中豪雨などでパイプが詰まったら、溢れた水が路面を流れ、盛り土部分は簡単に崩壊してしまうでしょう。
エゾオオサクラソウの群落はこの道路工事ですっかり破壊されてしまいました。クマゲラの食痕も確認しており、ここ一帯はクマゲラの生息地なのです。すでに緑化工事の行われた法面は、外来種のイタチハギが繁茂しています。「環境に配慮」などといいながら、絶滅危惧種の生息地を破壊し、外来種による緑化を相変わらず行なっているのは、あまりにも矛盾した行為であり、非常識です。
さらに、どうやって入ったのかは不明ですが、法面にはルピナスまで茂っていました。トラフの脇にはムシトリナデシコの花も咲いていましたが、これは路面に敷いた砂利とともに侵入したと思われます。また、路肩にはアメリカオニアザミも茂っています。このように、山肌を削って道路を開削しただけで、さまざまな外来種が侵入してしまうのです。
さて、この茂足寄と上螺湾を結ぶ道路ですが、どう考えても一般の人が利用する道ではありません。必要性がまったくない道路なのです。路盤の脆弱なところにつくられたこの道は、やがて大雨などによって崩れ、災害を招く道になるのではないでしょうか。誰も通らないのに、維持管理費と補修費用だけがかさむ道となるでしょう。
盛り土をした法面にはヒグマとエゾシカの足跡が残されていましたが、車の交通量よりヒグマやエゾシカが横断する回数のほうが多いかもしれません。
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