ますます栄える共同出版
碧天舎の倒産によって、共同出版業界大手の文芸社と新風舎の2社の競争は激化していったように見えました。
新風舎は、派手な出版賞の募集で出版点数をどんどん増やしていたのです。出版賞に応募し、入賞を逃した人々に共同出版を誘って契約をとりつけていくという手法は、出版点数の増加につながっていきました。
一方で、ライバル会社である文芸社は「著作者保護制度」を創設し、不測の事態が起きた場合も著者からの預かり金や印税が保障される制度を打ち出しました。碧天舎の倒産によって共同出版への不安や批判が高まることを恐れたのでしょうか。また、文芸社ビジュアルアートという関連会社を設立し、賞ビジネスを展開しはじめました。
文芸社や新風舎は私がJANJANに書いた記事を読んでいることでしょう。しかも、共同出版商法を問題だと考えているのは私だけではありません。それならば、指摘された問題点に真摯に向き合い、疑惑をもたれないように改めていくというのがまっとうな企業の姿勢ではないでしょうか?
ところが、文芸社と新風舎の2社は批判を省みようとせず、碧天舎の倒産を尻目に、出版点数の増加にしのぎを削っているようにしか思えません。文芸社・新風舎という二大出版社があちこちに広告を出して大々的に共同出版商法を繰り広げ、その陰に隠れるようにいくつもの出版社が共同出版を行っています。
なんだか「みんなでやれば恐くない」みたいな状況なのです。大きな批判がなければ問題ないのでしょうか? 批判がないといっても表に見えてこないだけではないのでしょうか? 私は、どうしても実態に見合わない高額な制作費や、著者を惑わす巧みな勧誘、書店での販売方法などにさまざまな疑問・疑惑を感じるのです。しかも、お金のない若者などにローンを提案しまで出版を勧める状況に危機感を覚えざるを得ません。
さらに気になるのは、マスコミなどが共同出版のことを自費出版としていることです。たしかに費用のすべてを著者が負担しているのであれば実質的には自費出版です。でも、契約は著者に所有権のある本の制作を請け負うサービスの契約ではありません。あくまでも販売を前提とした出版権の設定契約なのであり、著者も費用の一部を負担する条件での商業出版といえるものなのです。
つまりこの商法では契約内容と実態にズレがあるのです。契約形態に触れずに実態だけをみて自費出版と決め付けてしまうと、この商法の矛盾が見えにくくなってしまいます。自費出版というのであれば、制作請負契約を交わす従来の自費出版との契約上の違いにまで言及すべきでしょう。そうしなければ両者を同じ出版サービスの契約だと思いこんでしまう人もいるのです。
こんな疑問が大きくなってきたために、業界で突出した存在でありライバル関係にある文芸社と新風舎の2社を中心に据え、共同出版業界への警鐘を鳴らすことを目的に、この問題をもういちど提起してみようと思いたちました。2006年の秋からJANJANに新しい連載を投稿したのです。
文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(1)協力・共同型出版への批判と疑問
文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(2)「契約」締結の重要チェックポイント
この連載は7回で終わりにするつもりでした。ところが、そうはいかなくなったのです。 (つづく)
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