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2007/07/08

大規模林道のずさんなアセス

 日本は、生物多様性条約を採択し、それによって「生物多様性国家戦略」をつくりました(現在は「新・生物多様性国家戦略」に改定されている)。そして、林野庁も森林の公益的機能を重視するという方針を打ち出しています。

 大規模林道(緑資源幹線林道)を建設している山地は、絶滅危惧種を含むさまざまな生き物たちの生息地ですから、国の方針によれば生物多様性を保全しなければならないはずです。でも、そんなところであっても、緑資源機構はなんとしてでも道路をつくりたいようです。

 大規模林道では、各路線をいくつもの区間に区切っています。また、基本的には幅員が7メートルですが、一部は5メートルにしています。そのように個々の事業規模を小さくすることで、法令で定められたアセスメント調査をしなくてもよいようになるのです! なんだか抜け道みたいですね。

 さて、事業者はアセスメント調査を一応やっているのですが、そのアセスメント調査のずさんなことには驚くばかりです。

 まず、ナキウサギです。私たち自然保護団体が「平取・えりも線」のナキウサギ調査をすると、事業者のアセス調査報告書には出ていない生息地があちこちにありました。予定ルートのすぐ近くにもあるのです。穴埋め事件のあった場所もそうです。予定ルートのすぐ近くのある生息地(フンを確認)では、不思議なことに報告書のGPS(衛星による位置データ)の数値が大きくズレていました。

 「置戸・阿寒線」でも同様に、事業者のアセス報告書には出ていない生息地を複数見つけました。どちらの路線でも、あちこちにナキウサギ生息地や生息可能な岩塊地があります。

 事業者はナキウサギ生息地を避けてルートを設定すればいいと考えているようですが、そういうことにはなりません。

 大規模林道は点在するナキウサギ生息地を分断してしまいます。ナキウサギは分散するとき、大きく開けた法面や道路を横断しなければなりませんが、そのようなところでは外敵に襲われる危険性が高いのです。小さな動物にとっては、道路脇の排水溝や法面の丸太を並べた構造物なども移動の妨げになります。また、場所によっては生息地そのものも破壊してしまう可能性があります。

 コウモリ調査も呆れるようないい加減な調査です。コウモリの調査では捕獲して種の確認をする必要があるのですが、捕獲は行わずに、バット・ディテクターという超音波による調査しかしていません。このために種の特定ができていないのです。コウモリ類はたくさんの絶滅危惧種がいますから、種を特定したくないのでしょうか? ちなみに自然保護団体などが実施したコウモリ調査では、多くの絶滅危惧種が確認されました。

 動かない植物ならそう簡単に見落とさないはずです。ところが、絶滅危惧種のコモチミミコウモリという植物がルートのすぐ近くにたくさんあるのに、それも報告書には記載されていません。調査員には絶滅危惧種は目に入らないのでしょうか?

 先日視察した工事現場では、すぐ近くにクマゲラの巣穴がありました。最近は使っていない巣穴のようでしたが、クマゲラは同じ巣穴を何回も使いますから、道路建設が何らかの影響を与えた可能性があります。

 そのほかにもいろいろな絶滅危惧種が生息しています。シマフクロウやクマタカ、オオタカなどの猛禽類をはじめとし、いくつもの希少な動植物が生息しているのです。

 手弁当で調査している自然保護団体が見つけられる生息地・生育地を、調査を受託しているアセス会社は見つけることができないのです。いえいえ見つけたくないのかもしれません。どちらにしても調査能力がなさそうです。その調査会社というのは、林野庁からの天下りが多数おり、談合で名前があがっているところです。

 こんないい加減な調査に多額の調査費用が支払われ、さらに談合が行われているのですから、国民はもっと怒ってもいいのではないでしょうか!

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