契約は商業出版、実態は自費出版!
(はじめて読まれる方は、カテゴリの「共同出版・自費出版」のはじめから読まれると、流れがわかります)
これまでに書いてきた協力出版の契約から解約までの経緯は、ふつうだったら思い出したくないような話しでしょう。それなのに、なぜ5年以上も前の話を今頃になって書くのかといえば、このあとさらに新たな事実を知ってしまったからなのです。そして、驚くべきことに、このような出版形態は今でもほとんど変わっていないのです。というより、5年前より巧みになっているような・・・。そして、この商法はインターネット上では話題になっているのに、紙のメディアではほとんど知らされていません!
出版社とこんなトラブルになったのですから、私は納得のいく出版をするために情報を集めることにしました。いちばん参考になったのは「自費出版Q&A」(東京経済)という本でした。この本には共同出版や協力出版の問題点がいろいろ書いてあったのです。その部分を読んで、あらためてすごい商法があるものだと実感しました。その中でもいちばんおかしいと思ったのは、こうした商法では「著者の負担する出版費用だけで出版社は十分利益が上がるシステムになっている」と書かれていたことです。76万円もの制作費をとりながら、編集作業らしいことをしなかったというのはこういうことだったのかと思い知ったのですが、これでは著者を騙しているも同然ではないでしょうか?
私は、制作費というのは当然のことながら制作原価として算出されているのだと思って疑いもしませんでした。だって、著者の所有物をつくるのではなく、出版社の所有物をつくるのですよ! あなたの友人が自分のスーツを仕立てるために見積もりをとり、それが10万円だったとしましょう。そしてあなたがその「仕立て代」を払ってあげるといって見積もり金額を尋ねたら、友人は10万円と答えるでしょう。もし20万円だと嘘をいってあなたに請求したら、10万円の水増し請求になります。
共同出版だって出版社の本をつくる契約なのですから、スーツの例と同じように、その制作費は出版社が実際に支出する金額として算出するべきではないでしょうか? ところが私に請求した制作費は実費ではないというのです。編集費だけではなくて、印刷や製本の費用も(このことはあとで出版社自身が裁判の中で認めました)。これは水増し請求といえるのではないでしょうか?
こう言うと、必ず「その金額で納得して契約したのだから問題ない」と主張する人がいます。ここで間違えないでいただきたいのは、そのようにいえるのは請負契約や委託契約の場合だということです。著者の所有物となる本の制作請負契約(ふつう自費出版といっていますが)をしたならば、制作費に利益が加算されているのが当然であり、費用が高額であっても「その価格で納得して契約したから問題ない」ことになります。請負契約の場合の費用は「制作費そのもの」ではなく、「利益も入れた報酬」なのです。
でも共同出版や協力出版の契約は「この金額で著者の本の制作を請け負う」という契約ではありません。あくまでも出版社の商品をつくることを前提に、著者が制作費を支払う条件で出版権を出版社に設定する契約なのです。平たくいうと「商業出版形態で出版社の本を出版する際、著者が協力金として制作費のみを払ってあげる」ということです。出版社の所有物(商品)の制作費は、出版社がその制作のために実際に支出する費用のはずです。スーツの例もこれと同じで、友人の服の仕立て代をあなたが代わりに払ってあげるという契約です。ですからスーツの例と同じように実費の制作費を請求しなければおかしいのではないでしょうか?
さて、私が出版社と協議をした際、制作費が実費ではないなどという説明はまったくありませんでした。もし実費ではなくても正当だというのなら、私に対し正々堂々とそう説明し、高額な編集費も正当だと主張すればよかったのではないでしょうか? でも、そんなことはおくびにも出しませんでした。ということは、出版社は利益がはいっていることを知られたくなかったし、やましいことだと思っていたのではないでしょうか。
また、出版社も宣伝や販売の費用を出資するといいます。でも、広告や販売の費用より、制作費に加算した利益のほうが多ければ、出版社負担分は相殺され、出版社はなんら費用を負担しないことになります。
出版社は本当に出資しているのでしょうか? 業界に詳しい方たちは、そのような出版社はなんら費用負担をしていないといいます。
すべての出版費用を著者が負担し、さらに会社の維持経費や原稿募集の広告、出版賞などにかかる費用の一部まで著者が払っているとしたら、それは自費出版と変わらないではありませんか。つまり、契約では制作費のみを著者が負担する商業出版でありながら、実態はすべての費用を著者が負担、しかも本の売上金は出版社のもの!
そうであれば出版社は一冊も売れなくても利益が得られ、本が売れれば売上金も得られるのです。著者は出版費用のすべてを負担し、得られるのはわずかな印税だけ。初版は印税のない出版社もあります。つまり出版社に一方的に有利なシステムだということです。
これが商業出版と自費出版の中間型? これが協力出版とか共同出版? どう考えたっておかしなことです。共同出版をした人は、こういうことを知っているのでしょうか?
出版社に一方的に有利な商法を、あたかもふつうの自費出版よりメリットがあるかのように宣伝しているのであれば、騙しているようなものです。そんな商法を経験したのなら、事実を多くの人に知らせるべきだと思うのです。そう、それが鬼蜘蛛おばさんの性格なのです。 (つづく)
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