消えた捜査資料と巨額の事業
緑資源機構の談合問題で、東京地検特捜部が証拠資料を紛失したことについては、「緑資源機構ってなんぞや?」http://onigumo.kitaguni.tv/e380435.htmlでも触れました。さて、それについて大変興味ある報道があります。立花 隆氏の「メディア ソシオ―ポリティクス」(nikkei BP net)の「松岡氏らの自殺を結ぶ『点と線』『緑資源機構』に巨額汚職疑惑」という記事です。
この記事によると、東京地検が紛失したというダンボール箱というのは公正取引委員会から預かった200箱の資料のうちの特A級の1箱だというのです。そしてその中身というのは、九州の中央山地を横断する大規模林道「菊池・人吉線」の工事発注に関わる資料だったとのこと。
この「菊池・人吉線」というのは総延長104.2キロメートル、総事業費367億円。ここでは、林道だけではなく農地開発が一体となった事業を行っており、熊本県だけで総工費154億円とのこと。この事業については、5月31日付けの北海道新聞でも報道されていました。その「特定中山間保全整備事業」を請け負った熊本県内の14社が、松岡農水相の資金管理団体などに3年間で1300万円の献金をしていたそうです。松岡氏は熊本県阿蘇町(現阿蘇氏)の出身です。
さて、松岡農水相とこの事業との関わりは、どうやら献金だけではなかったようです。立花氏はこう書いています。
「松岡前農水相は、この熊本県に落ちる154億円の大事業の落札を全部自分が仕切り、各工区でそれを落札する業者から経営規模によって2~3パーセントの上納金をおさめさせた上に、松岡氏の選挙区そのものである第6工区と第7工区では、自分の息のかかった地元業者に、『鞍岳建設』と『ひのくに建設』という架空の建設会社を作らせ、そこに入札を落としてしまうというとんでもないことまで行っていたのである」
つまり、大規模林道の154億円という事業のあっせん収賄によって、松岡氏には3~4億円が渡ることになっていたというのです。
これまで緑資源機構の談合で問題とされていたのは、林道本体の工事に関わることではなく、その前段階の測量や調査の入札にかかわる談合問題です。でも、それよりはるかに巨額の林道本体工事の落札に関わることにまで捜査が及んだのなら、松岡氏は当然逮捕されていたでしょう。そして、東京地検から消えたのが、この熊本の大規模林道本体に関わる資料だったというのです。
松岡氏が自殺したあと、安部首相は「緑資源機構に関しては、捜査当局から松岡前農水相や関係者の取調べを行っていたという事実もないし、これから取り調べを行うという予定もない」と発言し批判されましたが、東京地検がそんな情報を流すなどということは考えられません。安部首相のこの発言には松岡氏の疑惑を否定し、この問題の幕引きをしたいという姿勢がうかがわれます。そして、松岡氏は、昨年の総裁選で安部首相を強く支援していたといいます。消えた資料、そして松岡氏の逮捕は安部首相にとって都合の悪いものだったのでしょうか? 一体どうしてそれだけが消えたのでしょう?
総事業費9428億円。1キロメートルつくるのに4億6千万円もかかるという巨大公共事業「大規模林道」は、政・官・業の癒着を生み、まさに不正の温床になっているのです。こんな道路が欲しいのは、利権に絡んだ一部の人たちしかいないのではないでしょうか?
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