共同出版って商業出版?それとも自費出版?
「共同出版」とか「協力出版」という出版形態をご存知でしょうか? 新聞や雑誌で本にする原稿を募集している出版社がありますが、そのような出版社は共同出版とか協力出版などという出版形態を勧めているところが多いようです。そして共同出版を「商業出版と自費出版の中間型」とか、「自費出版と違うのは全国の書店で販売するところ」などと説明しているようです。もっとも最近では批判されたせいか、「共同出版」「協力出版」という呼び方をしなくなった会社もあるようですが。
実は、5年以上前のことになるのですが、鬼蜘蛛おばさんも「協力出版」の契約を交わしたことがあります。途中でトラブルになり、最終的には全額返金で解約したのですが、それ以来この出版形態に大きな疑問をもちつづけています。
鬼蜘蛛おばさんの場合は、自分の書いた本ではありません。自分の本を出版したいなどと考えたこともなかったのですが、父の遺稿集(随筆と詩)を出そうということになったのです。たまたま新聞に大きな原稿募集の広告が出ていたので原稿を送ってみたのが事のはじまりです。
はじめは普通の自費出版を考えていました。でも、いくつかの原稿を読んでいくうちに「できれば多くの人に読んでもらいたい」と思うようになったのです。自費出版ではちょっともったいないかな・・・と。その時にも共同出版というのがあることは雑誌の広告で知っていました。「ある程度のレベルなら、著者が多少の費用を負担することで商業出版と同じ形で出版する」というのがその時の認識でした。
さて、原稿を送ってしばらくしてから、感想とともに協力出版を勧める手紙が届きました。手紙のはじめには、個々の作品の高い評価が並んでいます。もっとも作品のタイトルを間違えていて、「ちゃんと読んだのかしら?」なんて思ってしまう部分もありましたけど。そして、「自費出版レベルにとどめるには惜しい作品であることは一致した意見となり、本作品を全国流通に載せる『協力出版』枠へ推奨することときましましたので、まずはご報告申し上げます」とあります。
その手紙には、協力出版についてこんなふうに説明してありました。
「『アマチュアの方のなかから優れた作品を世に送り出し、文化を発信する』ことを社是とする弊社は、制作費を著者の方にご負担いただき、広告・販売にかかわる費用を弊社が出資することで、全国展開可能な書籍を刊行するという出版形態を強く推奨しています。これが弊社独自の「協力出版」というシステムです」
さらに、「弊社の編集・デザインの技術を存分に駆使して上質の書籍として仕上げ、その真価をぜひ広く全国に問うていただきたく思っております」とあります。そして販売については「『協力出版』の最大のメリットは、書籍を『取次ぎ』に収めるばかりではなく、全国300に上る提携書店に御著を配本し、陳列することにあります」というのです。印税は初版1刷で2%、2刷以降は実売部数の6%、3刷以降は8%とのことです。また、「“取次ぎに収めるだけ”“新刊配本だけ”で終わり販売支援がない-などの方式とは、『協力出版』がまったく異なり、数々の販売支援を行っていること、今後もさらに充実させていく方針であることをご理解いただけるものと思います」などと書かれていました。
さて、これを読んで理解できたのは以下のことでした。
1 著者は制作費を負担(制作費の一部だと思っていたのでがっかり)
2 出版のプロが上質の本をつくる
3 取次ぎに収めるとともに、全国300の提携書店に配本する
4 印税がある(1刷で2%とは安い!)
つまり、著者が制作費を負担し、それ以外の広告や販売の費用は出版社が負担するという条件での商業出版だと理解したのです。この説明を読んだら、誰だってそう思うのではないでしょうか? 著者が必要な部数の本をつくってもらって著者に全部渡す、いわゆる制作請負契約を交わす自費出版とは異なります。
名前の知られていない素人ですから、出版費用のすべてが回収できるほど売れるとは思えません。ですから商業出版形態で出すためには著作権者が費用を負担するのも仕方ありません。でも、出版社も広告や販売の費用を出資するというのですから、本を売ってそれらの費用を回収しなければならないはずです。だから、ある程度売れると思われる作品を選んで「協力出版」を提案しなければなりません。ほとんど売れないような本にまで協力出版を提案していたのであれば、出版社は赤字になってしまいます。
そこで、協力出版の場合の見積もりと、自費出版の場合の部数別の見積もりを依頼したのですが、送られてきた見積もりはなぜか協力出版のものだけでした。四六版、278ページ、1000部で並製は228万7650円、上製は241万6800円という高額の見積もりに躊躇していると、担当者からこんなメールがきたのです。
「審査委員会での評価は、面白度A・完成度Aでした(企画候補に選ばれたので、当然といえば当然です)。 -中略- 審査委員の中には書店長もおり、その委員が一番絶賛しておりました。出版する事に決まりましたら、まずは5000部(3刷)を目標にすすめていきたいと思っております。逆に、5000をクリアできなければ担当者の責任となります」
こんなふうに具体的に説明されたら、誰もが「そこそこ売れるのでは・・・」と思ってしまうのではないでしょうか。そんなわけでしばらく悩んだあげく、契約することにしたのです。
ところがところが・・・ (このつづきはまた後日)
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