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2007/06/05

出版社と対決へ

(「共同出版って商業出版?自費出版?」の続きです)

 契約前にちょっと不審に思ったことがあります。契約は急ぐつもりはありませんでした。とにかくその年は旅行などが重なって、とてもあわただしくしていたのです。思ったより高額なこともあり、担当者には時間をかけて検討したいと伝えていました。ところが、旅行中にこんなメールがきたのです。

 「松田様の作品は8月の協力出版枠に選定された作品でございますので、8月中には出版契約を締結したいのです。しかしながら、松田様にも諸事情がある事と思いますので、今回は仮契約を締結したいと考えております。その後、9月に本契約を締結したいと考えております。なぜ急ぐのかと申しますと、毎月の刊行点数を確保しなければならないからです。また、書店と提携して作品を選定しておりますので(審査員の中には書店長も含まれております)、弊社が勝手に刊行作品や刊行点数を変更することができないのです。ご理解いただけますでしょうか。仮契約を締結することにより、取次・書店に対して本作品は出版する旨を示すことができ、刊行の際に優先的に陳列されるメリットがございます」そして、手付金として10万円を送金するように書かれていたのです。辞退する場合は、手付金を返金するとのことです。

 でも、留守中ですから対応などできません。9月初旬に帰ってから電話をすると、遅れても何とかなるとのことでしたので契約書を送ってもらうことにしました。でも、あとから考えるなら、契約に期限があるというのはちょっと不思議なことです。それに販売されるのは6ヶ月も先のことなのですから、そんな前から優先的に陳列されるなどということが決まるのでしょうか?

 ともあれ、契約を急がされることになってしまいました。でも、もちろん契約書にはひととおり目を通しました。手紙に書かれていたように、販売を前提として出版社の刊行物をつくる契約です。ひとつだけ「おやっ?」と思ったことがありました。それは費用の分担についてです。手紙には著者が制作費、出版社が広告・販売の費用を負担すると書かれていたのに、契約書では「本著作物の初版発行にあたりその制作・販売・宣伝に要する費用は甲乙双方の分担とする。甲は乙に次項の通りの条件で協力金を負担する」となっています。どうして契約書には「著者の負担が制作費」だと具体的に書いていないのでしょうか? それに、見積もりの内訳はどうなっているのでしょうか? そこで、私は契約書を送る前に、見積もりの内訳が知りたいと電話をしました。

 電話をして2時間ほどたってから、ファックスで制作費の内訳表が送られてきました。組版・用紙・製版・印刷・PP・製本・デザイン・編集費として、それぞれ1円単位の細かい金額が示されていました。せいぜい千円単位の見積もりが来ると思っていたので、1円単位の見積もりに驚きましたが、細かく計算しているのだと思いました。何しろ、欄外には「本来、内訳はより細かくなるのですが、かなりの専門分野になりますので、おおまかな内訳をご用意致しました」と書かれていたのですから。もちろんそれを信用しましたとも。それで9月6日に契約書を送ったのです。費用も全額を振り込みました。

 さて、そのころ私はある原稿書きを依頼されていて、非常に忙しくしていたのです。それで、本のことは頭の片隅で気にはなっていたものの、そのままにしていました。するとだいぶたってから編集者から11月末をめどに編集を行うとの電話があったのです。10月に入った頃だったでしょうか。それで、「これからようやく編集にとりかかるんだな」と思ったわけです。

 その後も編集者からは何の連絡もありませんが、時間をかけて編集作業をしているとばかり思っていました。すると11月18日付けの北海道新聞に自費出版のことについての記事が掲載されました。その記事には、共同出版という方式で書店に並ばないどころか、印刷したかも定かではなく、結果的に割高な料金で印刷させられてしまうケースなどがあるというようなことが書かれているではありませんか。私の契約は協力出版ですが、似たような出版形態ですから何とも気になります。そこで担当者にメールで問い合わせをしました。すると、こんな回答がありました。

 「弊社では、配本リスト(書籍が陳列されている書店リスト)を必ず著者へ送付しております。また、印刷証明(印刷部数を印刷所が証明する書類)を発行することもできます」そして、このとき書店への配本期間がたったの1ヶ月であることをはじめて知ったのです。なぜ契約前にそれを説明しないのか!

 とりあえず印刷については出版社の説明を信用するしかありません。でも、この後にどうしても信用できなくなることが起きたのです。

 11月28日のことです。編集者から電話がありました。作品を並べる順序についての相談です。そして初校が12月10日頃になるというのです。原稿は完成度が高いので、ほとんど手を入れなくても良いというではありませんか。驚いた私は、ワープロにない漢字があり、手書きにしていた部分について尋ねてみましたが、編集者はそのことがさっぱり分からないようです。「この編集者はきちんと読んでいないのではないか・・・」そんな疑念が頭をよぎりました。その後で、フロッピーディスクを送ってほしいと再度電話がありました。ここで私は完全に「おかしい!」と思ったのです。だって、編集費の見積もりは約76万円ですよ! それなのに、編集作業らしいことをしているとは思えない状態で、すぐに組版に入るというのですから。

 送った原稿というのは、私と娘がワープロ入力したものです。大正生まれの父の文章は、漢字がやたらと多くて読みにくいうえ、表記の統一もなされていません。難しい漢字にルビもふってありません。大半は「である調」ですが、「ですます調」の作品も一編だけ入っています。そういう原稿をそのままワープロ入力しただけですから、プロの編集者が2ヶ月ほどかけて丁寧に編集し、きっちりと校正もしたなら76万円という編集費も理解できます。それなのに、こちらのフロッピーをそのまま使って印刷するらしいのです! 76万352円(税別)という編集費はいったいどうやって計算されたのでしょうか? そして実際には何に使われるのでしょうか? 出版社は宣伝や販売の費用を本当に負担するのでしょうか?

 ここに至って、さすがにそれまでの信頼感は完全に吹き飛びました。体から力が抜け、愕然とするやら、腹立たしいやら・・・。そして契約書に「乙(出版社)の責に帰せられない事情により、甲(著作権者)がこの契約を解除する場合は、甲は、乙に対して第5条の協力負担金全額を支払うことが必要になる」と書いてあったことの意味を理解したのです。つまり、著者側の事情で解約する場合はお金を返さないということです。

 なんてこった!! こうなったら出版社と対決するしかありません! (つづく)

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