緑資源機構談合で思い出した「穴埋め」事件
昨日、緑資源機構の発注した林道整備をめぐる談合事件で、機構幹部や受注した会社の担当者などが逮捕されました。今日の新聞のトップニュースです。北海道新聞の社説では「不正の温床そのものだ」とのタイトルで、この悪質な談合事件を厳しく批判していますが、誰もが頷くことでしょう。
さて、鬼蜘蛛おばさんが「緑資源」と聞いて真っ先に思い出すのは、2003年の「ナキウサギ生息地の穴埋め事件」です。ナキウサギは岩が積み重なったところ(岩塊地)に生息しています。でも、岩塊地はどこにでもあるわけではありませんから、ナキウサギの生息地はとても限られているのです。ナキウサギは高山にしか棲んでいないと思っている方が多いかも知れませんが、そんなことはありません。標高条件より岩塊地の存在に左右されるのです。
北海道の大規模林道の平取・えりも線予定地には、ナキウサギの生息地が点在しています。この地域でナキウサギの生息調査をしていた「ナキウサギふぁんくらぶ」は、2003年の6月に大規模林道の予定ルート付近でナキウサギの貯食(ナキウサギが植物を噛み切って岩の隙間に引き入れたもの)を見つけました。
その年の9月22日のことです。緑資源機構の北海道地方建設部の最高責任者が、突然、ナキウサギふぁんくらぶの代表を訪ねてきたのです。要件は、「ふぁんくらぶが見つけたナキウサギの生息地を具体的に教えて欲しい」とのことでした。ふぁんくらぶ代表は彼の懇願に負けて、最後には生息地を示した地図を渡しました。
その後、10月12日にふぁんくらぶや十勝自然保護協会のメンバーがその場所に出かけてみると、なんだか様子がおかしいのです。よくよく見ると、岩の隙間に新しい土が詰められ、空隙がなくなっていました。そう、ナキウサギの生息地が埋められたのです! ある岩のところでは、フッキソウが不自然な状態で移植されていました。これはどう見ても自然現象ではなく人為的です。
この林道の入口には施錠されたゲートがあり、一般の人はほとんど入ってきません。森林施業の関係者が岩穴を埋めるとは思えません。そして、ここがナキウサギ生息地であることを知っているのは、ふぁんくらぶや自然保護団体のメンバー数人と緑資源機構だけなんです。
この事件は10月16日付けの読売新聞でも報道されました。そしてナキウサギふぁんくらぶは、この穴埋めに緑資源機構が関与した疑いが高いと考え、林野庁と緑資源機構に対して抗議するとともに真相を解明するように求めたのです。ところが、緑資源機構の理事長からふぁんくらぶに「厳重抗議書」なる文書が配達証明郵便で送られてきました。「内部監査を行ったが、職員は全員関与していない」と稚拙な内部調査をもとに、謝罪と抗議文撤回を求めてきたのです。
そんな折に、ナキウサギふぁんくらぶのHPの掲示板に、「小市民」と名乗る人物が「環境保全に興味がある・・・」などとしながら、ふぁんくらぶが穴埋めの証拠をどのくらい掴んでいるかを探るかのような書き込みをはじめたのです。さらに、ふぁんくらぶを批判する書き込みも。このときは、ついつい鬼蜘蛛おばさんも反撃の書き込みをしてしまいました。およそ10日間続いた掲示板論争も、反撃によって小市民氏が撤退を余儀なくされたのですが、匿名掲示板を利用した攻撃は、情報操作によるNGO潰しを狙ったのか・・・ とにかく卑劣ですよね! その後、掲示板は引越しをしてしまったので、その部分が今は見られないのがちょっと残念です。
さて、誰が穴を埋めたのかはもちろん謎のままです。でも、林道建設予定地のすぐ近くにナキウサギが生息していたら都合が悪いのは誰なのかと問えば、誰もが「緑資源機構!」と答えるでしょうね。
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