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2007/05/31

春の女神よ、永遠に!

Dscn1912  先日、道北のある山に登りました。この日の朝はあちこちで氷点下を記録したほど冷え込み、早朝は毛糸の帽子が欲しいほどの寒さです。登山口ではようやくチシマザクラが花を開きはじめ、5月下旬だというのに北国では遅い遅い春です。

 登山道の脇にはニリンソウ、エゾエンゴサク、エゾイチゲ、ミヤマスミレ、ヒメイチゲ、ナニワズなどが可憐な花をつけています。そしてそれらに混じって点々とオクエゾサイシンがあるのに気がつきました。これなら「春の女神」がいてもよさそうです。

 半分ほど登ったころでしょうか。ようやく女神様が姿を現しました。そう、「春の女神」とはアゲハチョウの仲間のヒメギフチョウのことです。早春に開花する春植物で吸蜜し、オクエゾサイシンに卵を産み付けるこのチョウは、春のこの時期にだけ姿をみせるのです。このチョウの分布は、食草のオクエゾサイシンがあり、かつ雪の多い地方に限られているようですが、道北には産地が多いようです。

 やがて気温が上昇するにつれ、次から次へと女神様が活発に飛び始めました。あちらにも、こちらにも、山頂から麓まで・・・ 汗ばむほど暖かくなった帰り道では、どれだけの女神様に出会ったことでしょうか。林床をゆるやかに飛んでは花の蜜を吸うこの優雅なチョウは、やはり春の女神と呼ぶのがぴったりです。

 子供のころ、図鑑を眺めてはこのトラフ模様をもった小さなアゲハチョウに出会いたいと思ったものでしたが、東京に住んでいた私は、限られた時期にしか姿を見せない女神様を見に行くこともなく年月が過ぎていきました。図鑑で見ると派手なトラフ模様ですが、自然の中を舞う姿を見ていると、不思議なことに違和感がないのです。チョウの翅の斑紋を見るたびに、自然の造形というのは実に巧みにできていると感心してしまいます。

 ところが、この美しいチョウの幼虫は黒い毛虫。そして夏から翌年の春までの長い期間を蛹で過ごします。厚い雪が蛹を寒さから守ってくれるのですが、温暖化が進んで積雪が少なくなってしまったら、果たして生きていけるのでしょうか?

 里山に多く生息しているというギフチョウやヒメギフチョウは、薪炭林が利用されなくなってきた昨今、生息地の環境悪化による減少が懸念されています。でも、この道北の山では人手の加わった里山だけではなく、自然林にもヒメギフチョウが脈々と生き続けています。そんな本来の生息地が永遠に保たれてほしいと願うばかりです。

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