緑資源機構とは何ぞや?
4月頃から「緑資源機構」という独立行政法人の、林道整備をめぐる入札談合のことが話題になっています。公正取引委員会が強制捜査を行い、東京地検が立件に向けて動きだしたというのですから、かなり悪質な談合のようです。この談合をめぐるニュースはしばしば報道されてきましたが、なぜか緑資源機構の行っている「林道整備事業」がどんな事業かということはほとんど報道されていないようです。不思議ですねえ!
この林道整備事業というのは、実は1973年から「森林開発公団」が建設を進めてきた「大規模林道」という道路なのです。つまり今から30年以上も前の高度経済成長時代につくられた林道計画が、今でもそのまま続けられているんですね。当時、全国に7つの「大規模林業圏」が指定されたのですが、その基幹となる林道というわけです。
ところが、近年は国有林も道有林も木材生産より森林の公益的機能を重視するというように、方向が変わってきました。それなのになぜ新たな林道が必要なのでしょうか? 林業をとりまく状況が変わってきているのに、林道建設だけは多額の税金を投入して延々と続けられているのです。かつての森林開発公団は緑資源公団となり、さらに緑資源機構へと名前を変えてきました。林道の名称も今は「緑資源幹線道路」とされています。やっていることは変わらないのに、「森林開発」から「緑資源」に変えるなんて、なんだか誤魔化されている気がしませんか?
林道と聞いて頭に浮かぶのは、幅の狭い砂利道ですよね。ところが、この大規模林道というのは幅が7メートルもある2車線の完全舗装の立派な道路なんです! それを全国各地の山奥に建設しているのですが、かなり建設の進んでいるところもあれば、まだまだこれからというところもあります。北海道では、「滝雄・厚和線」「置戸・阿寒線」「平取・えりも線」の3路線で建設が進められているのですが、いずれももろい地質のところなので、完成してもあちこちで土砂崩れが発生して、その修復にまた税金が・・・ という状況なんですよね。
しかも、北海道の3路線の周辺にはいずれもナキウサギの生息地があります。クマタカなどの希少な猛禽類も生息しています。いろいろな絶滅危惧種の生息地になっているのです。それを写真のようにズタズタに切り裂いているのが大規模林道なんですね。いったい誰が利用するんでしょう? 「緑資源機構」はすっかり有名になりましたが、ほとんどの人がこの自然破壊道路のことは知らないようです。
緑資源機構の理事長が林野庁長官OBであることは、自然保護団体の間ではよく知られていました。林道事業の調査を受注している団体にも多数の林野庁OBが天下っているのですから、「何かあるのでは・・・」ということは感じていたのです。
それにしても「ええっ!」と思ったのは、5月12日づけの北海道新聞に掲載された「東京地検が証拠紛失」という記事です。あの東京地検特捜部が、公正取引委員会の押収した証拠人を誤って処分してしまったというのです。厳重に管理されている証拠品がそんなに簡単に紛失するものなのでしょうか? しかも、この紛失が報道されたのは立件の方針を固める少し前のことです。なんだか胡散臭いものを感じてしまうのは考えすぎでしょうか・・・
大規模林道や緑資源機構のまわりには、とにかく不思議なことがたくさんあるんです。その不思議なことは、これらか少しずつ書いていこうと思います。
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