絶滅はどうやって起きるのか?
先週の土曜日は、様似町で開催された「第5回かたくりサミット」に行ってきました。「かたくりサミット」というのは、「かたくりの美しさ、大切さを通して自然環境を考え、人間どうしの交流を促進する」ことを目的として、2003年から開催されているものです。北海道でははじめての開催です。5月初旬から中旬といえば、様似町ではちょうどピンクのカタクリと白いオオバナノエンレイソウの花が咲き競っている季節なのです。
今日は、このサミットで最も印象に残った「絶滅」についての話題です。
北海道には各地にカタクリの群生地がありますが、様似町の群落もなかなか見事でした。北海道には小さな群生地はたくさんあります。あちこちに生育しているのだから簡単には絶滅などしないと思ってしまうかもしれません。でも、昔は今よりはるかにたくさんの生育地があったに違いありません。昔はカタクリの根から「片栗粉」を採ったくらいなのですから。だから、今残っている群生地は点々と取り残され細々と生き残っているものなのです。
このように群生地が開発などによって小さな集団に分断されていくとどうなるのか、ということが問題なのです。カタクリはマルハナバチやヒメギフチョウによって花粉が運ばれ、種子をつけることができます。その種子にはエライオソームとよばれるアリの好物がついていて、アリが種子を運ぶのです。あのちっちゃなアリが運ぶのですから、分布を広げるのにもとても時間がかかるのです。
ふだんはあまり気がつきませんが、多くの植物は昆虫と密接な関係を持っています。生育地が分散されて小さな集団になってしまうと、花粉を運ぶ昆虫があまり訪れなくなり、群落の遺伝的な多様性が失われてしまうことになります。実が結ばれなければ、子孫を残すことができなくなってしまうのです。
知らない人は驚くかもしれませんが、林床に生育するカタクリやオオバナノエンレイソウなどは芽生えてから花をつけるまでに数年から十数年もかかるのです! 今、たくさん花が咲いていても、その近くに子孫が育っていなければ10年後には群落がなくなっているかもしれません。「絶滅は 知らないうちに訪れる」なんてことに・・・
北海道にはかつてはザリガニがたくさん棲んでいました。でも、今は生息地が分断されています。小さな沢に取り残されたザリガニは、他の地域のザリガニと遺伝的な交流ができない状態ですから、環境が悪化すれば絶滅してしまうかもしれません。
「ここはたくさんいるから大丈夫」なんてのんきなことをいっていたら、何年か後にはいなくなっているということもあり得るのです。生態系というのは、人間が考えている以上にデリケートなのかもしれませんね。これからは、ただ「守る」だけではなく、生息地の拡大を目指さなくてはいけないのかもしれません。
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