「えりもの森裁判」って知ってますか?
一昨年の秋のことです。ときどき調査で出かけていた日高管内のえりも町の道有林の一部が皆伐されてしまったのです。それまでトドマツなどが茂っていた森が、突然なくなってしまいました。そして、その近くでは間伐のための集材路が造成され、ナキウサギの生息地が破壊されてしまいました。ここは希少な猛禽類も生息している森なのです。
今どき皆伐?! 私たちはびっくりしてしました。北海道は平成14年から木材生産のための伐採はやめて、森林の公益的機能を重視した森づくりをすると方針転換したからです。こんなふうに皆伐してしまったら森林のもつ公益的機能は損なわれるだけです。どうしてこんな伐り方が「公益的機能重視」になるのでしょうか?
こんな疑問をもった道民3人が、北海道の監査委員に対して住民監査請求をしました。北海道の条例や生物多様性条約に違反する伐採によって森林の公益的機能が損なわれたので、その損害を賠償するようにと。北海道は、森林の公益的機能を金銭的に評価していて、その価値は年間11兆1300億円と試算していたのです。
ところが、その住民監査請求は不受理とされてしまいました。「森林の公益的機能は財産として評価できない」という理由です。却下ではなく不受理です! 私たちはもちろん納得できません。住民監査請求が認められない場合、請求人は裁判を起こすことができます。住民訴訟です。そうして一昨年の年末に提訴したのが「えりもの森裁判」です。
さて、その裁判の原告となっている3人とは、道警の裏金問題の追及で大活躍した札幌の市川守弘弁護士、「ナキウサギふぁんくらぶ」代表の市川利美さん、そして私なのです。そして、弁護団は市川弁護士が中心となり、全国の環境問題に関心のある弁護士さんたちが大勢、ボランティアで参加してくださっています。本当にありがたいですね。
昨年は、入口論でのやりとりになりました。「住民監査請求は不受理であり提訴できない、森林の公益的機能は財産とはいえない」という北海道に対し、原告は「不受理は不当であり、森林のもつ公益的機能は財産として評価できる」と主張してきました。今年の2月にその入口論での判決が出され、原告の主張が全面的に認められたのです!
森林というのは、洪水や山崩れを防止したり、二酸化炭素を吸収して酸素を放出したり、野生生物の生息地になるなど、さまざまな公益的機能をもっているのですが、その森林の価値が認められたのです。これは画期的な判決といえると思います。
そんなわけで、今年からは裁判は「本論」に入っていきます。次回の口頭弁論は以下の日程です。興味のある方は傍聴にいらしてください。
6月15日(金)午後1時15分より 札幌地方裁判所(1階の事務所で法廷の場所を聞いてください)。
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