大規模林道

2012年4月13日 (金)

形式敗訴・実質勝訴の受益者賦課金裁判の意義

 「広島地裁が受益者賦課金の市による肩代わりを違法と認定」でお知らせした広島の細見谷訴訟判決の意義について「細見谷に大規模林道はいらない」で報告されている。

形式敗訴・実質勝訴の判決-受益者賦課金への補助金支出は違法- 

 主文を引用すると以下。

主文
1 第2事件に係る訴えのうち,被告に対して,松田秀樹及び山田義憲に2 1 4 万7 6 3 9円及びこれに対する平成20年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をすることを求める部分をいずれも却下する。
2 第2事件原告らのその余の請求及び第1事件原告らの請求をいずれも棄却する。(以下略)

 確かに、主文だけを見れば損害金の返還を認めないという判決であり、訴えた住民側の敗訴だ。しかし、この裁判の目的は損害金の返還ではない。原告らは受益者賦課金を自治体が肩代わりして支払うということの違法性を問題にしたのである。

 そして、その違法性については明確に違法であると判断している。大規模林道という事業の公益性は認めてはいるものの、受益者賦課金(受益者は西山林業組合)を地元自治体(廿日市市)が負担することの公益上の必要性はない、という判断である。だから、実質的には原告の勝訴になる。

 林道事業は林業組合の利益になるがゆえに受益者賦課金が生じる。それを林業組合に代わって地方自治体が支払うことに合理性がないと裁判所は認定した。地方自治体自体はそもそも林道の受益者ではないのだから、これは至極当たり前の判断だろう。今までこうしたことが問題視されなかったのがおかしいといえばおかしいのかもしれないが、多くの市民がこのような実態を知らなかったと言うべきなのかもしれない。

 形式的には被告の勝訴なので被告に公訴権がない。原告も訴訟の目的は達したので控訴をせずに判決が確定した。これによって、「受益者賦課金の自治体による肩代わりは違法」という判例ができたのである。これは大きな意味を持つ。

 記事の筆者も書いているが、今後、同じような受益者賦課金の自治体による肩代わりについては「確たる公益性」を証明しなければならないだろう。

 たとえば、富秋地区国営かんがい排水事業においては、帯広開発建設部は「冠水被害の解消」や「国民の食料の増産」が目的だと説明してきた。しかし、排水事業によって収穫量が増えたことで利益を得るのは自治体ではなく農家である。だからこそ受益農家には事業費の5%という負担が定められているのだ。一部の農家の増収のために、自治体が税金を投入することに合理性があるのかが問われることになる。

 こうした税金による受益者負担の肩代わりは全国で行われており、無駄な公共事業の温床にもなっている。ただし今回このような判決が出たからといっても、市民が黙っていたなら自治体はおそらく賦課金の肩代わりを止めようとしないだろう。自分の住む市町村でこのような受益者賦課金の肩代わりが行われているのであれば、市民はどんどん住民監査請求をすべきだ。

2012年3月23日 (金)

広島地裁が受益者賦課金の市による肩代わりを違法と認定

 緑資源幹線林道(大規模林道)の建設では、民有林所有者などが受益に応じて事業主体の緑資源機構(すでに廃止され、独立行政法人森林総合研究所が引き継いだ)に賦課金(受益者負担)を支払ってきた。受益者が支払う賦課金は事業費の5%と金利だ。

 受益者賦課金である以上、受益者が支払うというのが当たり前だ。ところが、広島の細見谷渓畔林を通る林道では、受益者である地元の森林組合が払うべき賦課金を、市が肩代わりして全額を支払っていた。これが違法であるとして、地元住民らが賦課金の返還を求める住民訴訟を広島地裁に起こしていたのだが、その判決が21日にあった。

 裁判長は、林道事業に公益性があっても、営利団体の組合に補助金を交付する必要性はないと指摘し、市による肩代わりを違法と認定した。ただし、返還については、市長らが違法性を認識するのは困難だったとして認めなかった。

 違法性が認められたのは実質勝訴だし、非常に大きな意味がある。原告らが賠償を求めたのは2008年と2009年の支出合計約426万円なのだが、それ以前の支出も含めると、市は林新組合に2840万円も支払っていたのだ。もちろん税金だ。

 本来、受益者が支払うべき受益者負担を自治体が支払っている事例は全国にある。それらを合わせたらすごい金額になるだろう。このブログでも指摘している「国営かんがい排水事業」も同じで、受益者負担は事業費の5%とされている。ところが、実際には受益農家は負担せずに地元の市町村がそれを支払っているのが実態なのだ。

 受益者に負担をさせたなら、「うちは事業に同意しません」という農家がまず間違いなく出てくる。実は、農家はそれほど事業を望んでいないことが多いのだ。しかし、農家が同意しなければ事業は進められない。そのために受益者負担を市町村が肩代わりするということが慣例になっている。

 たとえば十勝地方の美生地区の国営かんがい排水事業では、立派なダムをつくったのにかんがい用水としてほとんど利用されていない。農家は農薬の希釈や農機具の洗浄、家畜の飲み水など、かんがい以外のことに使っているという。目的外使用であり、本来は認められないことだ。要するに、必要もないかんがい事業だったのだ。

 「美蔓地区国営かんがい排水事業」では、「かんがい事業」の受益地のおよそ半分は牧草地だ。牧草といえば乾燥地帯の植物であり、灌水など必要ない。もし農家が受益者負担を支払わなければならないという条件であれば、まず事業に同意しないだろう。タダだから同意している人が大勢いるはずだ。この事業によって、ナキウサギやシマフクロウの生息地への悪影響が懸念されている。

 「富秋地区国営かんがい排水事業」では、排水事業によって国民のための食料の増産をするのが目的だと事業者は説明をした。事業の効果によって利益を得るのは農家なのだから農家が受益者負担を支払うのが当然なのだが、これも市町村が肩代わりする。こんなおかしなことはない。農家が負担するのであれば、事業に同意しないのではないかと疑わざるを得ない。

 地元自治体による賦課金の肩代わりは、不必要な公共事業を推進するために行われているといっても過言ではない。私は「美蔓地区国営かんがい排水事業」の事業者に対しても、「富秋地区国営かんがい排水事業」の事業者に対しても(ともに帯広開発建設部)、受益者負担の自治体肩代わりは違法ではないかと指摘してきたが、彼らは知らん顔をしてきた。

 このような受益者負担の肩代わりを行っている市町村の住民は、どんどん監査請求をすべきだ。違法判決が出された以上、市町村も今後の支出に関しては見直しをしなければならないはずだ。

2012年1月25日 (水)

広島の細見谷林道の建設中止が決定

 原発事故はいまだ継続中で、放射性物質の放出量は減るどころか増えたとの報道があった。八ッ場ダムも着工に向けて進んでいる。溜め息が出るようなニュースばかりが続いていたが、先日、広島県の大規模林道が中止になったというニュースがあった。久々の朗報だ。

 緑資源機構の廃止によって林道の事業主体は地方自治体へと移行し、北海道の大規模林道は全面的に中止された。しかし広島県では中止決定がされずに自然保護団体などが反対運動を展開し、住民訴訟も起こされていた。しかし、広島県議会は19日に厳しい財政事情などを理由に事業を中止することを決定した。

廿日市の細見谷林道建設:県、事業中止へ 環境保護団体は歓迎、地元戸惑い 厳しい財政事情で /広島(毎日新聞)

 5つの工区のうち細見谷と「庄原・三和区間」は工事をしておらず、貴重な自然が破壊されることなく中止となったことは歓迎したい。ただし、相変わらず中止の理由は財政難であり、自然破壊という観点はほとんどないようだ。この国の自治体の大半は、生物多様性の保全に消極的だし、判断基準が結局は「お金」というのなら何とも情けない。

 住民訴訟については、今年3月21日に判決が言い渡される予定だ。

細見谷渓畔林訴訟結審(細見谷に大規模林道はいらない)

 判決がどのようなものになるか分からないが、広島県は裁判を意識して判決が出される前に中止決定をしたのではなかろうか。まっとうな判決を期待したい。

 日本はこれから原発事故の補償で財政がひっ迫するのは目に見えている。無駄な公共事業などに税金を注いでいる時代ではないだろう。

2009年11月13日 (金)

ようやく止まった北海道の大規模林道

 昨日、高橋はるみ知事が、北海道の「山のみち」(大規模林道)3路線7区間すべてを中止する方針を固めたと表明しました。12日の道議会決算特別委員会での質問に答えてのこと。事実上の中止です。理由は、費用対効果が見込めない、地元の市町村が事業実施の意向を示していない、緊急性や優先性が低いとのこと。

 費用対効果については自然保護団体がずっと前から指摘していたことですが、ようやく認めました。林野庁の算出した費用対効果がいかにいい加減なものだったかが実証されたということです。これまで北海道はそのいい加減な林野庁の費用対効果を認めてきたのですから、その点もきっちりと反省してほしいところです。もっとも、北海道が算出した費用対効果にも疑問はありますが。

 大規模林道とは、林野庁による1973年の「大規模林業圏開発構想」に始まった林道整備。林道というのは名ばかりで、二車線の完全舗装道路です。北海道では1979年から建設され、3路線、総延長約200キロ。総事業費は937億円で、これまでに335億円を投入して46パーセントが完成していました。北海道の負担金は98億円で、すでに64億円を出資しています。完成したところも車はまばらで、大雨などのたびに崩れ、建設による自然破壊も深刻でした。

 1973年の計画ですから36年も前に策定された化石のような事業。それに延々と税金を投入してきたのです。士幌高原道路の反対運動も長い道のりでしたが、大規模林道も然り。なんども現場を視察し、林野庁に申入れをし、道庁で交渉してきた私たちにとっては大きな喜びです。

 とはいうものの、北海道以外の地域では中止が決まったわけではありません。広島では裁判になっていますし、福島では中止となったのは2区間だけ。これからも全面的な中止を求めていかなければなりません。

 どう考えても費用対効果はなく、必要性もなく、自然を破壊するだけの道路。多くの人が声をあげることで、他県の工事も止めることができるのではないでしょうか。

2009年11月 9日 (月)

受益地と受益者負担の謎

 受益者が負担すべき受益者負担を、地元自治体が肩代わりしていることが違法であるとして提訴した広島の大規模林道の裁判で、興味深いことが明らかになってきました。

 ひとつは、受益地とされている森林が、どうやら受益地とはいえないらしいというのです。受益者負担が根底から覆されることになるのではないでしょうか。詳しくは以下の記事をお読みください。

受益地を巡る謎 

 もうひとつは、被告側が「受益者負担」の意味を理解していないらしいということ。これも驚きです。なんだかこの裁判、とても面白くなってきました。

生きものたちの森・細見谷渓畔林訴訟 第5回口頭弁論 報告 

 受益者負担を受益者が支払うのではなく、市町村が肩代わりするという構図は、連載でお知らせしている美蔓地区かんがい排水事業でも同じです。恩恵を受ける者が受益者負担を払わず、税金で払ってもらうということが問題ないとは思えないのですが、こうしたことが半ば慣行として行われています。納税者は、こういうことにも関心をもって声を出していくべきではないかと思います。

2009年10月 9日 (金)

大規模林道中止か!

 北海道の自然保護団体が長年にわたって反対してきた大規模林道(山のみち)という、税金の無駄遣いの典型ともいえる公共事業が中止になる公算が大きくなってきました。

 今日の北海道新聞には、「道、事業継続は困難 中間報告 年明けにも中止決定」というタイトルで、ほぼ中止といえるスタンスの記事が掲載されました。一方、朝日新聞では、「大規模林道8割中止か 道方針事業化可能1区間」とのタイトルで、必要性や費用対効果などについて検討した結果、3路線7区間のうち6区間は中止となりそうだという内容で、道新より詳細な記事になっています。

 朝日の記事によると、事業化の可能性のあるのは「平取・えりも線」の「静内・三石区間」だけとしています。しかも、この区間とて新ひだか町は「費用負担は困難」としている上、事業費は67億5700万円もかかる見込みだそうです。ここは一日の平均の交通量は2台とか・・・。こんな道路に税金を使うことに納得する人など利害関係者以外はいないでしょうね。それにしても、どうしてこの区間だけは費用に見合う効果が見込めるという結論になったのでしょうか。不思議、不思議・・・。

 まだ本決まりではありませんが、中止の決定まであと一歩というところでしょうか。

 一年くらい前に北海道に費用対効果について質問したところ、計算をしている最中だといっていたのですが、その数値はずっと公表されませんでした。林野庁はこれまで費用対効果はあると主張していたのですが、今回の北海道の試算によってそれは覆されたといえそうです。林野庁の試算がいかにいい加減なものだったかということがわかります。

 北海道の大規模林道の進捗率は46パーセントで、すでに半分近くが建設され335億円を費やしたとのことですが、建設途中で中止に追い込まれた部分は「負の遺産」として立て札でも立てておくといいでしょう。「この国では、かつてこんな不要な道路を造って自然を破壊し、税金の無駄遣いをしました」という証拠として。

2009年8月 5日 (水)

費用対効果が出せない「山のみち」

 昨年、北海道は「山のみち」の費用対効果を計算して道議会に提案し、今年の2月には方向性を出すと説明していました。ところが2月になっても動きがなく、3月になるとの話も先送りされ・・・。結局、6月の道議会にもかけられなかったようです。昨年の道庁交渉の際、道の職員は費用対効果の算出に苦労していると言っていたのですが、どうやら未だに費用対効果を示せないようです。

 林道建設は、投じた費用を上回る効果がなければつくることはできません。したがって、費用対効果の数値は1.0以上なくてはならないのです。林野庁が過去に算出した大規模林道の費用対効果は実に不思議な数値で、どう考えても1.0以上になるように意図的に操作されていた、というか「はじめに数値ありき」で算出されたとしか思えないものでした。そして林野庁はその算出の資料を廃棄してしまったというのです。

 北海道は大規模林道を「山のみち」事業として引き継ぐかどうかを判断する際に、費用対効果を独自に算出しなければならないのですが、まともに計算したなら1.0以上になるわけがありません。そのために、いつまでたっても費用対効果の計算ができないのではないでしょうか。

 今、「山のみち」事業の中止に向けて頑張っているのは、北海道と広島県です。広島では受益者賦課金の公的助成が違法であるとして住民訴訟が起こされましたが、先月、新たに住民監査請求がなされました。

第二次監査請求 

 多額の税金を使う事業である以上、事業の正当性などが明瞭に説明されなければなりません。自然破壊などによるさまざまなマイナス面も検討されなければなりません。いつまでも費用対効果が出せないような事業は、さっさと手を引くべきです。北海道は、潔い態度を示してほしいものです。

2009年1月16日 (金)

「山のみち」で問われる地方公共団体の判断

 現在、大規模林道問題で活発に反対運動が起きているのは広島県と北海道です。北海道の場合は、「これが白紙での検討なのか」、「新聞記者の見識を問う」でも書いたように中止するか実施するかの検討をしており、今年度中に決めることになっています。一方広島では、とりあえず2009年度は休止すると決まったそうです。市民が積極的に行動することで、地方公共団体も安易に事業継続をしにくくなるといえそうですね。

 この件に関しては以下のサイトに詳しく報告されています。

09年度は予算化せず―大規模林道事業休止

 北海道は水面下で費用を抑えるべく代替案を検討していたことが発覚しましたが、広島でも事業費に関してはいろいろ不可解なことがあるようです。

 北海道はもちろんのこと、どこの地方公共団体も財政難で火の車のはず。大規模林道が優先される公共事業に該当しないのは当然でしょう。それどころか、崩落などによって継続的に補修費がかかることになるのですから。

 広島では賦課金をめぐって裁判も始まりますから、県が積極的につくりたいと思わないのは当然のことでしょう。裁判の第一回の期日は2月19日、広島地裁です。賦課金の問題は広島だけのことではなく、全国の大規模林道に波及する問題です。注目される裁判になるでしょう。

2009年1月11日 (日)

新聞記者の見識を問う

 「山のみち」事業の問題で、大規模林道問題北海道ネットワークが北海道に意見書を出したことは一昨日の記事で書きました。ネットワークは道の水産林務部に意見書を提出して話合いをもったあと、道政記者クラブで記者会見を開きました。北海道との話合いの内容と記者クラブでの記者の質問は以下に掲載されています。

「山のみち」について北海道に意見書を提出 

 驚いたのは、記者会見に参加した新聞記者の以下のような質問です。

「提出書面はこれまでの繰り返しのようだが、新しい問題は何か。」

「ただ反対しているようで、具体性がないようだが?」

 記者には「山の道」(大規模林道)の問題点について写真入りで要点をまとめたリーフレットと、北海道に提出した25ページにもわたる資料を配布していました。その資料の冒頭には、これまで「白紙」から考えていると明言していた北海道が、道民にも自然保護団体にも隠して路線検討のための道営計画調査をしていたことに対する抗議が書かれています。

 今回このような資料を作成して話合いに臨んだのは、北海道の姿勢に大きな疑問を感じたからにほかなりません。北海道はなぜ独自で路線選定の調査をしていたのでしょうか? そしてなぜそのことを隠していたのでしょうか?

 北海道は「白紙の立場にかわりはない。調査をしたのは、着工前提ではない。あくまでも様々なケースに対して数的把握をするためで、道では調べようのない未知の部分・作業道も入っていない道の部分を把握するためである。トンネルでなく迂回して砂利道にした場合の積算額などの算出に必要な調査である。さまざまな想定に対処するため。林道規定に基づく代替案ルートなど。140億円かかるということの確認、費用を緩和するための方策など。費用対効果を出すためには、どうしても数的把握が必要になる」と説明しています。

 どう考えてもこれは「白紙」の立場とはいいがたく、弁明にしか聞こえません。コストを抑えたルート案を検討することで費用対効果の数値を上げるためのようにも感じられますし、利害関係のある一部の建設推進派の人々への配慮とも思えます。着工前提ではないなら、道民にもきちんと説明するべきでした。自然保護団体が費用対効果のことについて質問したときにも、道営計画調査のことは全く口にしなかったのです。

 しかも北海道の報告書は、かつての事業者の杜撰な環境調査を利用して書かれているのです。北海道は自然環境について独自の調査もしていないのですが、自然保護団体は現地に何回もいって問題点を指摘しています。北海道は環境問題を軽視しているとしか思えないのです。

 「ただ反対しているようで、具体性がないようだが?」という記者の質問には、ただただ呆れてしまいます。たとえこれまでの経緯がわからないにしても、リーフレットを見れば問題点は一目瞭然です。それに新聞記者であれば、緑資源機構がどうして解体されたのかは知っているでしょう。大規模林道が機構の生き残りのための事業であり、談合発覚による解体によって化けの皮が剥がされたという意識を持つのがまっとうなジャーナリストの感覚ではないでしょうか。

 ジャーナリストがこのような視点をもてないようであれば、権力の監視などできようはずがありません。私達は過去にも何度も記者会見をしていますが、問題点をきちんと把握して関心を寄せる記者もいました。今回のように見識が疑われる新聞記者がいることに、愕然とするばかりです。

2009年1月 9日 (金)

これが白紙での検討なのか

 8日は、大規模林道問題北海道ネットワークが、「山のみち」の中止を求めて北海道に意見書を提出しました。

 北海道は「山の道」(大規模林道から北海道が受けついた事業)について、10月に開催した地元での説明会でも、また大規模林道問題北海道ネットワークに対しても「白紙で考える」と説明してきました。ところが、自然保護団体が北海道に情報開示請求をしたところ、2007年の12月末日までに4ヶ月かけて「道営計画調査」(委託調査)をしていたことがわかったのです。

 中止を考えている区間もあるのですが、峰を越す林道を開削して既存の林道とつなげるルートを検討していたのです。

 白紙といいながら、密かに独自の路線検討をしていたというのはどういうことなのでしょうか? これまで何度となく交渉をもってきたネットワークに対しても、このような調査をしているという説明はまったくしておらず、隠してきたのです。情報開示をしていなかったら、わからずじまいでした。なぜ地元住民や自然保護団体との意見交換会で説明しなかったのでしょうか? 

 白紙で検討するというのなら、まずは事業の目的や必要性を明らかにしなければなりません。目的が不明瞭で必要性のない道路であれば止める、というのが白紙からの検討です。そして必要と判断されたなら環境への影響、費用対効果の算出、路線の検討などを行なって建設が妥当か否かをさらに検討しなければならないはずです。やることの順序がおかしいとしかいえませんし、欺かれた気分です。

 では、目的や必要性はあるのでしょうか?  大規模林道の当初の目的は、計画された大規模林業圏での木材生産のための中核林道でした。しかし、大規模林業圏開発計画そのものはとっくに破綻してしまったのです。その後は地域住民の生活道路とか、森林の多面的機能を担う幹線林道などと目的をすり替えて続けられてきたのですが、人も住んでいない山奥の道路は生活道路とはなりませんし、森林の整備は既存の林道で十分行なえるのです。

 さらに、希少な動植物の生息地を破壊し、生態系・生物多様性に大きな影響を与えるにも関わらず、きちんとした環境調査も行なわれていません。というのも、長大な路線を区間ごとに細切れにしたり道幅を部分的に狭くするなどして事業規模を小さくし、アセス逃れをしてきたのです。過去に一部で環境調査が行われていますが、それとてきわめて杜撰なものでしかありません。

 また、すでに開削されたところでは大雨などのたびに崩落を起こしており、永遠に補修が必要になります。しかも、受益地の多くは国有林なのです。北海道がなぜ国有林の整備のための道をつくらなければならないのでしょうか?

 これらの問題にきちんと答えられなければ、計画は先に進めないはずです。そして、もちろん北海道はこれらにきちんと答えていません。必要だという声がある、ということしか説明できないのです。

 さて、北海道は費用対効果を算出し、二月末日までに結論を出すとのことです。この費用対効果はどのように算出するのでしょうか? 新たに峰越しの道を開削することで、どのような便益が生じるのでしょうか? たとえばアクセスが短くなったとしても、それによるコストの削減はごくわずかでしかないでしょう。

 大規模林道が緑資源機構という天下り組織のための事業であり、緑資源機構は談合の温床になって解体されたことを踏まえ、また北海道の逼迫した財政を考えて、北海道はまっとうな結論を出してほしいと思います。

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