外来種

2015年6月11日 (木)

植物と一緒に運ばれるクモ

 先日セアカゴケグモが自動車とともに北海道に持ち込まれたことについて記事を書いた。セアカゴケグモの場合は人工的なものに網を張ることが大半なので、こうした形であちこちに運ばれてしまう。

 ところで、植物についていたクモが人によって遠くに運ばれてしまうということは日常的に起きている。

 セアカゴケグモが見つかったのと同じ北見市(旧端野町)で、以前コガネグモが見つかったことを思い出した。これは2004年8月16日発行の「経済の伝書鳩」という北見・網走地方で配布されているフリーペーパーの記事になったのだが、記事にする際、クモの種名について私に問い合わせがあった。コガネグモが見つかったのは果樹園。そしてこの果樹園では本州から苗木を仕入れているそうだ。つまり、苗木とともにクモが運ばれてしまったのだろう。

 コガネグモは腹部が黒と黄色の縞模様の大型のクモで、大きな円網を張る。大型で目立つクモだからこそ人の目に止まり話題になったのだ。コガネグモの場合は北海道では越冬できないだろうから、このような形で持ち込まれても定着することはない。しかし、植物とともにクモが運ばれてしまうということは実際には相当起きていると思われる。

 たとえば野菜と一緒に運ばれるという事例だ。身近な例で言うと、購入した香川県産のレタスからサラグモが出てきたことがある。顕微鏡で調べてみると(微小のサラグモの同定は実態顕微鏡で生殖器を観察する必要がある)セスジアカムネグモの雌だった。北海道ではごく近縁のコトガリアカムネグモが生息しており、セスジアカムネグモと同種とすべきか別種とすべきか判断に迷う(私はとりあえず北海道産のものはコトガリアカムネグモに同定している)。しかし香川産の雌を見る限り、生殖器の形態が北海道産のものとやや異なっていることが確認できた。

 また、つい先日のことだが、やはり冷蔵庫の野菜室からフクログモが出てきた。これも顕微鏡で調べると、サッポロフクログモの雌だった。どの野菜についていたのか分からないが、北海道産の野菜を数種類買ったのでたぶん北海道産の野菜だろう。

 北海道では全国各地から野菜が運ばれているので、クモや昆虫などもかなり一緒に運ばれていると思う。こんなふうにして植物とともにひっそりと小さな動物が運ばれているのだ。こうやって持ち込まれた種が繁殖して定着してしまうことは稀だとは思うが、移入先でクモが産卵したり、卵のうが付着した植物が持ち込まれた場合などは、定着してしまう可能性も否定できない。

2015年6月 5日 (金)

北海道でも確認されたセアカゴケグモ

 セアカゴケグモが日本で初めて発見されたのは1995年で、この時は外来の毒グモが沢山見つかったとしてちょっとした騒ぎになった。セアカゴケグモは、ヒメグモ科のクモとしては大型で雌の成体は体長1センチほどになり、黒色の腹部の背面に真っ赤な斑紋がある美しいクモだ。その後、日本の各地で確認が相次ぎ、38都府県で確認されていた。

セアカゴケグモ・ハイイロゴケグモにご注意ください! (環境省)

 これまで国内の最北の確認事例は岩手県だったが、6月2日に北海道北見市で確認された。

 セアカゴケグモ、北海道に上陸 北見で初確認(朝日新聞)

 すでに日本のどこで確認されてもおかしくない状況になっていたので、北海道での発見はそれほど驚くことではないのだけれど、「やはり入ってきたか」という感じだ。愛媛県から持ち込まれた中古車のバンパーに網を張っていたとのこと。体長5ミリの雌とのことなのでまだ幼体だろう。

 セアカゴケグモの生息環境は、側溝やブロックの穴、プランターの底など人工的な場所だ。このために、建設資材や自動車とともに運ばれて分布を拡大してしまう。20年間で九州から北海道まで拡散したのも、こうした人工的なところに網を張ることが関係している。

 セアカゴケグモは本州では側溝などで越冬し、繁殖もしている。特定外来生物に指定されているが、これだけ増えてしまったら駆除で全滅させるのは無理だろう。ただ、冬の寒さが厳しい北海道の場合は屋外では越冬できないだろうから、人為的に持ち込まれても繁殖してどんどん増えるということはたぶんないと思う。見つけたとしても大騒ぎせず冷静に対応してほしい。ただし、氷点下にならない屋内などに入り込んだ場合は越冬することもあり得る。

 セアカゴケグモの場合、攻撃性はないので何もしないのにクモが襲ってくることはない。ただ、気づかずに驚かせてしまったような場合に咬まれることがあるので、注意は必要だ。

 しかし、セアカゴケグモのニュースというと必ず「毒グモ」という言葉が用いられるのはちょっと閉口する。確かに毒性が強いのは事実だが、オーストラリアでも近年は死亡例はなく、日本で咬まれた事例でも重篤者はいない。日本に生息しているカバキコマチグモは毒性の強いクモとして知られ、咬まれると激しく痛むそうだ。私は咬まれたことはないが、咬まれた人から数日苦しんだという話しを聞いたことがある。ところがこちらはセアカゴケグモのように「毒グモ」として大騒ぎはされない。

 毒がある動物はクモだけではないし、致死性から言えばスズメバチの方がよほど怖い。「毒グモ」という表現は無闇に恐怖を植え付けさせるように思えてならない。せめて「毒性の強いクモ」くらいの表現にしてほしいと思う。

2011年9月10日 (土)

松山湿原に侵入したセイヨウオオマルハナバチ

 昨日は美深町の松山湿原に行ってきた。松山湿原は、日本最北の高層湿原だ。以前から行ってみたいと思っていたところなのだが、なかなか実現できないでいたのだ。

 道道から湿原に向かう道は砂利道の林道だとばかり思っていたのだが、登山口の駐車場まで舗装されているのにまず驚いた。ここにはトイレも整備されている。入口の看板には「秘境」と書かれていたが、これだけ整備されていて「秘境」というのはなんだか笑える。そもそも本当の秘境には「秘境」などという看板は立っていないだろう。

 駐車場から松山湿原まではずっと登りだ。登山口に入ってすぐのところに、小さな風穴があった。こんなところで風穴に出会うとは思っていなかったので、ちょっと意外だった。9月だというのに、まだ岩の穴からは冷風が吹き出している。

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 ウッドチップの敷かれた登山道の脇には、9月だというのにエゾアジサイが涼しげな水色の花をつけている。もうじき紅葉の季節だというのに・・・。エゾアジサイの多い登山道だ。

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 咲き残りのエゾアジサイと、花盛りのエゾトリカブト、そして赤く色づいたオオカメノキの実。・・・。ちょっと不思議な取り合わせだ。北海道の夏は駆け足で通り抜け、野の花たちも短い夏を惜しむように花を咲かせて実をつける。

 30分ほど登山道を登って台地に出ると、荒涼とした湿原が目に飛び込んでくる。最近はこのような場所には必ずといっていいほど立派な看板が立っているのだが、ここにももちろんその手の看板がある。しかも、ハンマーつきの大きな鐘まであるのだから首をかしげてしまう。私はどうしてもこういう看板が好きになれない。せっかくの景色が台無しだ。

 さすがに9月の湿原は緑も色あせ、いくぶん褐色に色づきはじめていた。その秋色の草原にホロムイリンドウが点々と紫の色を添えている。

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 湿原の木道を歩いていると台地を吹き抜ける風で汗も引いて気持ちがいい。しかし、木道を半周するころから寒くなってくる。ここはかなり風が強いらしい。湿原の矮生化したアカエゾマツの樹形がそれをよく物語っている。

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 湿原には一周1キロほどの木道が整備されている。湿原は思っていたよりも広いのだが、大雪山の沼の原のように池塘がたくさんある高層湿原ではない。池塘は「えぞ松沼」「つつじ沼」「はい松沼」と名付けられた三つの沼があるだけで、あとはアカエゾマツが点在する平坦な湿原だ。池塘が少ないのは、乾燥化が進んでいるのかもしれない。下の写真は「えぞ松沼」。

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 木道を一周し終える少し手前で、ホロムイリンドウの蜜を吸う一匹のマルハナバチが目に止まった。腹部の先が真っ白な毛で覆われている。外来種のセイヨウオオマルハナバチだ。この湿原にもっとも近い街は美深町だが、距離的にはかなり離れていてここは人里離れた山の中だ。こんなところにまですでにセイヨウオオマルハナバチが侵入してしまっていることに、ちょっと愕然とした。

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 セイヨウオオマルハナバチは大雪山国立公園の高山帯にも入り込んでしまった。いちど野生化してしまうと、いくら駆除しても数を少し減らすだけで、根絶させることはほぼ不可能だ。在来種との共生関係を保ってきた高山帯などでセイヨウオオマルハナバチがどんどん勢力を増すことになれば、在来種を駆逐したり植物の受粉に悪影響をもたらしかねない。

 そもそもセイヨウオオマルハナバチは、ハウス栽培のトマトの受粉を効率的に行えるという理由で導入された。ハウスからハチが逃げ出して野生化することは当然予測されたのだが、適切な対策がとられないまま北海道のほぼ全域に分布を広げてしまった。人間の安易な行動が、もの言わぬ小さな生き物たちに大きな脅威をもたらしていることを思うと、人間とはなんと自分勝手な生き物なのかと思わずにいられない。

2010年12月23日 (木)

セイヨウオオマルハナバチの脅威

 21日付の北海道新聞夕刊コラム「魚眼図」に、帯広畜産大学の岩佐光啓教授が特定外来生物であるセイヨウオオマルハナバチのことについて書いていました。私が「ついに十勝三股に侵入したセイヨウオオマルハナバチ」で書いたように、今年の夏に雪山国立公園の十勝三股に侵入してしまったのですがが、大変気になったのが、すでに生態系への影響が出てきているとの指摘でした。具体的に二つの事例をあげています。

 一つは、セイヨウオオマルハナバチが多い地域では、エゾエンゴサクが種子をつくる割合が低いことが明らかになっているという指摘です。

 エゾエンゴサクの花には「距(きょ)」という細長い袋状の部分があり、蜜はこの距の奥にあります。下のエゾエンゴサクの花の写真を参照してください。スミレやオダマキなども距を持つ植物です。

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 在来のマルハナバチの多くは花の開口部から蜜を吸うために、体に花粉がつき、他のエゾエンゴサクに花粉を運ぶようになっています。ところが、セイヨウオオマルハナバチは口吻が短いために花の開口部から蜜を吸わず、距に穴をあけて蜜を吸うのです。これを盗蜜といいます。ただし、盗蜜をするのはセイヨウオオマルハナバチだけではありません。下の写真はエゾエンゴサクの花の距に穴を開けて盗蜜をしているエゾオオマルハナバチです。エゾエンゴサクのように距が長い花の場合、このように在来のエゾオオマルハナバチも盗蜜をすることがあります。盗蜜をされると花粉を運んでもらえないので、植物にとっては迷惑でしかありません。

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 マルハナバチの口吻の長さや形は種によって異なっており、それぞれ好みの花も違います。マルハナバチと花は、長い年月をかけて共に進化してきており、両者はお互いになくてならない共生関係にあるのです。花粉媒介に役立たないセイヨウオオマルハナバチが増えたなら、エゾエンゴサクは結実率が低下してしまいます。エゾエンゴサクが減れば、在来のマルハナバチの吸蜜植物も減ってしまうことになります。このように、セイヨウオオマルハナバチは、植物とマルハナバチの共生関係を崩壊させてしまうのです。今は比較的普通に見られるエゾエンゴサクが、将来は珍しい植物になってしまうかも知れません。

 もう一つは、セイヨウオオマルハナバチが在来のマルハナバチと交尾することで在来種の繁殖阻害をしているという指摘です。DNA鑑定によって、在来のエゾオオマルハナバチ女王の30パーセントが、セイヨウオオマルハナバチの雄によって交尾されていることが分かっているそうです。交雑した場合、卵はふ化しないので在来種の減少につながります。

 すでにセイヨウオオマルハナバチは大雪山の高山帯にも侵入してしまいましたが、今後高山のお花畑でどんどん増えていったなら、高山帯の植生も様変わりしてしまうかも知れません。

 今からセイヨウオオマルハナバチを退治しようとしても、これだけ広がってしまったなら撲滅は不可能でしょう。アライグマのような大きな動物でさえ、いちど野生化してしまえば、駆除は非常に困難です。まして翅を持つ小さな昆虫の駆除は限界があり、ひとたび野生化して分布を広げてしまったら取り返しのつかないことになってしまうのです。

 ハウスでのセイヨウオオマルハナバチの利用に際しては、かねてから生態系への重大な影響が指摘されていました。しかし、速やかに手を打つことをしないままセイヨウオオマルハナバチの分布はどんどん拡大し、かつての懸念は現実のものとなってきました。このままセイヨウオオマルハナバチが増えると在来のマルハナバチが減少し、在来種に花粉媒介を頼っている植物も減っていく可能性が高いでしょう。

 利便性ばかりを重視し、警告を無視して対策を怠った結果です。予防原則がいかに大事かを教えてくれる事例です。

2010年12月 2日 (木)

あまりにも情けない環境省

 「ついに十勝三股に侵入したセイヨウオオマルハナバチ」にも書きましたが、とうとう今年の8月に大雪山国立公園の十勝三股地区にセイヨウオオマルハナバチの女王蜂が侵入してしまいました。

 このことに関して十勝自然保護協会と北海道自然保護連合が11月20日付けで環境省に質問書を出しましたが、11月30日付けで回答がきました。以下をお読みください。

セイヨウオオマルハナバチの侵入についての回答

 この回答から、環境省は8月下旬には三股への侵入の報告を受けていたことがわかります。それにも関わらず、自からその事実を報道機関等に公表することはありませんでした。私が11月1日に上士幌自然保護官事務所に電話で聞いたときも、不可解なことに「夏に糠平で確認された」と事実と異なる説明をしたのです。どうしてこんな説明になったのでしょう?

 十勝自然保護協会では十勝三股にセイヨウオオマルハナバチが侵入することを懸念し、かねてからルピナスなどの外来種の駆除を求めてきました。しかし、環境省は何もしませんでした。自然保護団体から責任を追及されることを恐れ、不都合なことを隠したかったとしか思えません。隠しとおせることではないのに、情けない限りです。

 回答によると、環境省は三股における防除活動を来年の春に向けて準備を進めるとしています。私が電話で対応策について尋ねたときは「何もしていない」とのことでしたし、防除活動の計画もないと言っていました。ところが一カ月後の30日には防除活動の準備を進めていると回答しているのです。自然保護団体が質問書を出して十勝三股への侵入が公になってしまい、大慌てで駆除対策を計画したのではないでしょうか。

 この回答で、環境省の外来種対策の姿勢がよくわかります。環境省は以下のように説明しています。

 環境省所管地のある十勝三股には、今回発見されたセイヨウオオマルハナバチや、ご指摘のルピナスに限らず、様々な自然環境保全上の問題や課題があります。これらの問題や課題は関連するものも少なくなく、総合的に取り組むことが必要となっております。当事務所では、現在、大雪山国立公園としての十勝三股を含む東大雪地域全体の整備基本計画を、地域の方々にも参画頂きながら策定中ですが、この地域に位置する十勝三股地区の自然環境の保全・管理のあり方についても、その中に位置づけることとしており、そのうえでルピナスやカラマツなどの除去を含め、問題と課題解決に向けた取り組みを実施してまいります。

 つまり外来種の駆除については、地域の方たちに参画してもらって策定中の東大雪地域の整備基本計画がまとまらなければ決められない、というのが環境省の姿勢です。国立公園内の外来種の駆除対策ですら、地域の方たちにお伺いをたてなければ決められならないないというのですから、とことん情けないというしかありません。三股のルピナスが繁茂しているところは環境省の所有地なんですけどね!

 回答書では、報道機関等に情報提供をしなかった理由や、ルピナスの駆除などの予防措置をとらなかった理由についても答えておらず、都合の悪いことは無視を貫いています。よほど責任追及をされたくないのでしょう。

 一つだけ評価するなら、速やかに回答がきたということです。近年は、環境省は質問書を出しても回答すらしないことが多かったのです。回答の中身はともかくとして、質問に対して回答をするということについては、開発局や北海道のほうがきちんと対応していました。

2010年11月21日 (日)

ついに十勝三股に侵入したセイヨウオオマルハナバチ

 「とかち・市民『環境交流会』の発表を聞いて」という記事で、特定外来生物であるセイヨウオオマルハナバチが、大雪山国立公園の東南部の糠平に侵入したことについて触れました。環境省上士幌自然保護官事務所の職員が「博物館の職員の方が夏に糠平で確認した」と電話で問い合わせた私に説明したからです。

 後日、発見者の方に問い合わせると、不可解なことに環境省の自然保護官の説明とは違っていました。発見者の方によると、8月に十勝三股で女王蜂を確認し、9月には糠平で働き蜂を確認したというのです。十勝三股というのは糠平から20キロメートルほど北で、糠平よりさらに山奥になります。私が電話で問い合わせたときに環境省の職員はこの情報を知っていたはずですが、私には「糠平で飛んでいるのが確認された」としか言わなかったのです。そう言えば、私が「捕獲したのですか?」と聞いたら「1、2匹捕まえたとも聞いている・・・」ととてもあやふやなことを言っていて、なんだか変だなあと感じたのです。

 十勝三股といえばルピナスなどの外来種がはびこってマルハナバチの蜜源になっていましたので、私はかねてからここにセイヨウオオマルハナバチが侵入してしまうことを懸念していました。ここからは、ニペソツ山や石狩岳連峰、西クマネシリ岳などが望まれるのですが、三股でセイヨウオオマルハナバチが繁殖するようになれば、これらの山のお花畑へ侵入する足がかりになってしまうからです。十勝三股は、もともとはエゾマツやトドマツなどの針葉樹林が広がっていたところですから、外来植物の繁茂を放置しておくべきではありませんでした。ところが、環境省は平野部の士幌町で春に捕獲をやっているだけで、国立公園への侵入防止策は何もしなかったのです。怠慢というほかありません。

 今年の6月に札幌の環境省の事務所に十勝三股のカラマツの駆除の件で申入れに行ったときにもセイヨウオオマルハナバチのことを話題にしました(「環境省の外来種対策の意識」 参照)が、侵入防止に取り組むような発言は何らありませんでした。9月に上士幌自然保護官事務所の自然保護官(電話をした方とは別の方)と話をする機会があり、その時にもこちらからセイヨウオオマルハナバチのことをちょっと話題にしたのですが、三股で確認されていたことはおくびにも出しませんでした。三股に侵入してしまったことを知っていたとしか思えないのですが・・・。

 環境省は、国立公園内で新たな分布が確認されたなら、すぐにでも広く知らせて駆除の対策をとるべきです。黒岳でセイヨウの女王蜂が確認された時などは、すぐに話題になりました。ところが十勝三股への侵入については明らかにするような様子はさっぱりなく、環境省自身がむしろ隠すかのような態度をとっていたことに腹が立ってきました。侵入防止対策も怠慢なら、侵入してからの対応も怠慢なのです。

 十勝三股で確認されたのは女王蜂とのことなので、すでにここで繁殖している可能性もあります。侵入してしまった以上、その事実を広く知らせ、蜜源となる外来植物とセイヨウオオマルハナバチの駆除をしていくべきでしょう。

 十勝三股へのセイヨウオオマルハナバチ侵入情報を受けて、十勝自然保護協会と北海道自然保護連合は、環境省に以下の質問書を出しました。セイヨウオオマルハナバチは他のマルハナバチより早く活動を開始します。環境省は、来春早々にも駆除活動を行うべきです。

十勝三股にセイヨウオオマルハナバチ侵入  

なお、セイヨウオオマルハナバチの問題については、以下のサイトなどが参考になります。

セイヨウ情報

セイヨウオオマルハナバチが映し出す人間社会

2010年10月15日 (金)

ニセアカシア植栽の諸問題

 先日、「札幌市のニセアカシア植樹の撤回を求める署名活動のお知らせ」という記事を書きましたが、この問題に関連し、ニセアカシア(ハリエンジュ)についていくつかの情報をいただきましたので、紹介させていただきます。

1.ハリエンジュハベリマキタマバエの問題
 ニセアカシアにつくハリエンジュハベリマキタマバエという外来種の害虫が本州から入り込み、数年で全道に広がってしまったそうです。ニセアカシアと同じ、北米原産とのこと。このハエはニセアカシアの葉の縁を巻いて虫こぶをつくり、幼虫がその中で成長します。このハエがつくと多くの葉が変形・変色または脱落するとのことですので、景観上の問題も生じるでしょう。また、札幌市では被害木の下の道路に多数の幼虫が落下してうごめき、飲食店のある道路沿いの街路樹などは不快害虫として問題になったそうですから、街路樹として植えた場合、通行人にウジ虫が降りかかることになるでしょう。

 詳しくは以下を参照してください。

最近、北海道で樹木被害が確認された外国からの侵入害虫(光珠内季報) 

2.樹木の毒性
 ニセアカシアには植物全体にシアナミドという毒性物質が含まれているそうです。シアナミドは植物・昆虫・微生物の生育阻害活性があるとのことで、生態系への影響が懸念されます。

 詳しくは以下を参照してください。

要注意外来植物ハリエンジュにもシアナミドが含まれる 

3.風倒に弱い
ニセアカシアは強風で倒れやすい、枝が折れやすい、寿命が短い、刺があるという特徴があります。街路樹が風倒被害にあえば、通行人や車への影響も大です。ですから、街路樹として適している樹木とは思えません。

 どうして、いまどき要注意外来植物でさまざまな問題のある樹木を街路樹にしようなどという計画が持ち上がるのでしょうか? 時代錯誤としか思えない計画です。

2010年9月29日 (水)

札幌市のニセアカシア植樹の撤回を求める署名活動のお知らせ

 知人から、札幌市が駅前通りにニセアカシア100本を新たに植えるという計画に対し、ニセアカシアの植栽計画撤回と在来種の街路樹の採用を求める署名活動を行っているとの連絡をいただきました。

 ニセアカシアといえば、要注意外来生物に指定されている樹木です。つまりできる限り駆除していくべき植物なのです。しかもニセアカシアは繁殖力が旺盛で、根萌芽といって地下茎をのばして増殖する性質を持っており、一度山野に入り込むと駆除するのが極めて困難になります。こんな厄介な植物なのですが、河川敷のほか道路の法面や山野にまで入り込んできています。ニセアカシアの白い花が咲く季節になると、河川敷や里山など広く侵入してしまっている様子がよく分かり、このような事態をかねてからとても懸念していました。

 街路樹として植えるなら管理できるので問題ないと思われる方がいるかも知れません。しかし、道路付近にこぼれ落ちた種子は排雪作業によって河川敷などの雪堆積場に運ばれるなどし、あちこちに分散する可能性があります。要注意外来生物を新たに植えるなどということは生物多様性保全の面からみても止めるべきです。

 以下に、署名活動をされている方たちによる説明文を転載して紹介します。

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生物多様性にかかわる問題、ご存じですか?

要注意外来生物のニセアカシアが新たに約100本札幌駅前通りに植えられようとしています。

 ニセアカシアは北米出身のマメ科の木です。脅威的な繁殖力を持つだけでなく、根から化学物質を出して他の植物の発芽を阻害する他感作用(アレロパシー)を持ちます。伐採しても根が残っていれば増殖します。環境省は「生態系に悪影響を及ぼしうる」外来生物の1つとしてニセアカシアを要注意外来生物に指定しています。2010年北海道の外来種リスト(北海道ブルーリスト)では「北海道の生態系等へ大きな影響を及ぼしており、防除対策の必要性について検討する外来種」のカテゴリーA2に区分されています。日本生態学会は「日本の外来種の中でも特に生態系や人間活動への影響が大きい生物」ということで「日本の侵略的外来種ワースト100」に挙げています。近年は世界各地、日本各地、道内各地で、行政、市民団体、個人による駆除がすすめられています。

 札幌市と国交省は、『歴史性を重視する』という理由で2011年春、札幌駅前通りに約100本のニセアカシア(札幌市約80本・国交省の北海道開発局札幌開発建設部約20本)を新たに植えようと計画しています。

 平成22年現在、札幌市にはすでに2万5322本のニセアカシアが街路樹として植えられています。この数は公園樹や緑化樹や庭木、山林に植えられたもの、山や川で自然に繁殖(逸出帰化)しているもの他を含みませんので、実際の数は計りしれません。街に植えられているニセアカシアの種子は排雪時、河川敷や郊外の雪堆積場へ運ばれます。そこから、他のルートで繁殖しているニセアカシアの種子とともに周辺や下流へ広がっている可能性が考えられます。

 残念なことに、ニセアカシアはすでに豊平川のほぼ全域に見られます。川だけでなく、公園、放置された造成地、石狩湾新港やビーチ周辺、札幌市街地沿いの山々、雪堆積場周辺など、札幌近郊だけでもすでに繁茂している場所を挙げればキリがありません。それでも札幌市は「都心の街路樹として植えるものなので管理ができる」という説明をしています。

 そこで、札幌や石狩の市民が集まり署名を行うこととなりました。札幌市と国交省(北海道開発局札幌開発建設部)にニセアカシアの植栽計画撤回と、在来種の街路樹採用を求めています。同時に、脅威的な繁殖力をもつ外来種の問題は札幌駅前通りだけではなく、全道・全国の生物多様性に関わるものです。環境省宛てにニセアカシアの特定外来生物指定を求める署名も用意し、全部で3連となりました。特定外来生物に指定された場合、その植物を新たに植えることはできません。たくさんの方にご賛同・ご署名・周知にご協力頂ければ幸いです。

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 署名にご協力いただける方は、以下の署名用紙をプリントし、署名用紙に書かれている集約先にお送りください。

札幌市長への署名用紙 「sapporosityou.pdf」をダウンロード

開発局への署名用紙 「kaihatukyoku.pdf」をダウンロード

環境省への署名用紙 「kannkyousyou.pdf」をダウンロード

*追記:署名活動は2010年11月15日をもって終了いたしました。

2010年7月24日 (土)

ガビチョウの楽園になった住宅地

 今年の5月に東京の実家に行ったときのことなのですが、住宅地を歩いていると庭樹と思われるところから聞いたことのない鳥の囀りが響いてきました。その鳴き声はどう考えても在来種ではありません。とても大きな声でいくぶんクロツグミに似たような囀りですが、クロツグミのほうが上品です。これはきっと籠ぬけ(飼い鳥が逃げ出したもの)に違いないと思ったのですが、姿は見られずじまいでした。

 さて、先週もまた東京に行ってきたのですが、今回も同じ鳥が住宅地のあちこちで囀っています。大方の野鳥は繁殖期を終えて静かに過ごしている時期なのに、この鳥だけはなんと朝から夕方まであちこちで鳴いているのです。そして、今回は2回ほどその姿を見ることができ、ようやく正体が判明しました。目の周りがケイマフリのように白く縁取られているガビチョウです。この暑いのに、昼のさ中にもよく鳴くこと! ヒヨドリの叫ぶような声とガビチョウのやかましい声が暑さをいっそう盛りたてるようで、いささかうんざりとしてきます。

 住宅地のあちこちで囀っているのですから、もうこのあたりにすっかり定着してしまったのでしょう。ガビチョウは北海道にはいないのでよく知らなかったのですが、すでに九州から南東北にまで分布しているそうです。特定外来生物にも指定され、問題になっているようです。それはそうでしょう。大型の鳥ですし、こんなたくましそうな鳥が野生化して増えてしまったなら、在来の野鳥にも影響があるに違いありません。

 実家のあるのは多摩丘陵を崩して造成した住宅地ですが、ここに越してきた40年ほど前には今より雑木林が広く残っていて、時おりサンコウチョウやサンショウクイの声が聞かれ、草藪ではあちこちでクツワムシがガチャガチャとけたたましく鳴いていたものです。その頃は島のように取り残された雑木林に、かろうじて里山の自然が息づいていました。そんな雑木林が次々に団地や宅地になり、今ではやかましいガビチョウの天国です。

 それに、数年前から近くの川(といっても、三面コンクリート張りの水路ですが)に外来種のウシガエルが棲みつくようになりました。夕刻に通るとブウォー、ブウォーと迫力いっぱいの鳴き声が響きわたってきます。何年か前にはカワセミの姿も見かけたのですが・・・。

 真夏になると街路樹や庭樹はアオマツムシの大合唱。住宅街はもはや野生化した外来生物に乗っ取られてしまったといっても過言ではありません。かつての里山のなごりを知っている者にとっては、在来種が姿を消し、外来種に置き換わってしまった光景に溜め息が出るばかりです。ほんの数十年の間にどれだけの雑木林が破壊され野鳥や昆虫たちの棲みかが失われたのでしょうか。そして、どれだけの在来種が外来種の侵略によって姿を消したのでしょうか。

 これほどまでに外来生物が定着して増えてしまったなら、駆除はほぼ不可能でしょう。特定外来生物に指定したところで、自由に飛び回る鳥をどうやって駆除するのでしょう。いったい、これからこの国の生態系はどうなっていくのでしょうか。外来種のたくましさを見るにつけ、暗澹たる気持ちになってきます。

2010年6月24日 (木)

野生化したルピナスは駆除を!

 今日の北海道新聞の「読者の声」に、「ルピナス力強く土手の斜面彩る」という投書が掲載されていました。庭に植えていたルピナスが増えてきたために、毎年少しずつ自宅前の土手に移植し、それが200株にもなった。また、同じ斜面にフランスギクの種も播いて自己満足しているという内容です。

 「自宅前の土手」とは道路の法面なのか、それとも川の堤防のようなところなのか分かりませんが、おそらく公共用地ではないかと思われます。そういうところに園芸植物のルピナスを植えたのなら、繁殖力の旺盛なルピナスのことですから種子がこぼれてどんどん増えていくでしょう。フランスギクも然り。これだけ生物多様性の保全が叫ばれるようになった昨今でも、このような感覚の方がいるんですね。外来種の野生化に手を貸しているようなものですが、ご本人はなんら問題意識はないようです。それと同時に、こういう投書をそのまま載せてしまう北海道新聞の感覚もどうかと思います。

 この投書を読んで、ある光景を思い出しました。かつて音更川(十勝川の支流)の河川敷にルピナスの群落が出現しました。橋を通る人たちの目を楽しませようと、河川敷にルピナスの種を播いた人がいたのです。その光景を見たときには、さすがにゾッとしました。さらに驚いたのは、ルピナスの群落を保つために草刈りまでしたのです。自然のままにしておくべき河川敷に外来種を持ち込み、そこにあった在来種を刈ってしまうという発想には仰天しました。

 その頃は、この光景にまったく疑問を感じない人が多かったようです。そうそう、河川敷にルピナスの種を播いた方は、国道の路肩にも種播きをしました。おそらく、その方には「外来種」「在来種」などという意識はまったくなかったのでしょう。

 北海道はこのところ急に夏らしい気候になり、道端や空き地など、あちこちに野生化したルピナスの花が目につくようになりました。ニセアカシアの白い花も満開です。でも、前述した投書からもわかるように、こういう光景に問題意識を持つ人は今でも少数派なのかもしれません。「生物多様性」という言葉を頻繁に聞くようになったのに、多くの人は自分の身の回りの外来種や生物多様性の問題はピンとこないようです。

 ルピナスは直根性で深く根を下ろしますので、根こそぎ抜き取ろうとしてもそう簡単に抜けません。野生化してはびこってしまうと、駆除するのはとても大変です。フランスギクなどのキク科植物もおびただしい数の種子をつけて旺盛に繁殖します。法面などに沿ってひとたび国立公園などに入ってしまうと、大変なことになります。綺麗だからといって、園芸植物を人の管理が及ばないところにまで植えるべきではないでしょう。

 環境省は、せめて国立公園内の外来種駆除の方針を明確に打ち出し実行に移さないと、この国は生物多様性保全の後進国となってしまいます。大雪山国立公園の十勝三股のルピナスに対しても、毅然とした態度をとって欲しいものです。

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