昆虫

2015年9月 8日 (火)

狩り蜂に麻酔されたクモの行方

 机の上にヤチグモ(たぶんアキタヤチグモ)の幼体の入った管ビンがある。このクモは、7月31日に狩り蜂に狩られたものだ。

 わが家の庭ではときどき狩り蜂がクモを狩るのを目撃する。この日は、狩ったクモを抱えたハチが家の壁(サイディング)の下端のあたりをウロウロしていた。ところが、私が写真を撮ろうと近づいたところ、ハチはクモを落としてしまった。

 下の写真はクモを狩ったハチ。一度獲物を落としてしまうと、なかなか見つけられないようだ。
P10700532


 こちらは狩られたクモ。麻酔でぐったりしていて動かない。
P10700521


 で、ハチには申し訳ないが、運がよければクモは生き返るかもしれないと思い、クモを持ち帰って管ビンに入れておいた。はじめのうちはちょこちょことビンを覗いていたが、クモは麻酔された状態で、ビンを軽く振っても全く動かない。しかし、干からびる様子もない。ただ、脚は伸びた状態から次第に関節を曲げた状態になっていった。その後、8月18日から10日ほど本州に出かけてしまったが、帰ってきてから管ビンを覗くと、同じような状態のままだった。

 しばらくそのまま放っておいたのだが、もう生き返りそうにないし、そろそろ自然に帰しておこうかと思い、手のひらの上にクモを取り出した。その途端、クモの第1脚がピクピクと動いたのだ。「あれっ、生きている!」と、目をしばたいた。そして、もう一度手の上でクモを転がしてみた。すると、こんどは第1脚のみならず、他の脚もピクピクと動くではないか。麻酔されてからの日にちを数えてみると、39日目である。下の写真は、机の上に出したヤチグモ。
P10702453


 以前、同じように狩り蜂に麻酔されたオニグモを持ちかえって様子を見たことがある(詳しくは
こちらの記事を参照いただきたい)が、その時は3日ほどで動かなくなり11日ほどで生気がなくなってきたのでアルコール標本にしてしまった。そんなことがあったので、このヤチグモの場合、1カ月以上も経ってから動いたことにちょっと驚いた。

 クモの生命力もさることながら、こんなに長期間、仮死状態にさせておける麻酔薬を進化させたハチもたいしたものだ。

 さて、このヤチグモはこのあとどうなるのだろう? 死んでしまうのか、生き返るのか、後日結果をお知らせしたいと思う。

2015年6月18日 (木)

ナミスジフユナミシャクの大発生

 6月の初旬頃だったと思うが、道路脇のヤマモミジの並木の中に葉がほとんどついていない木があるのが目についた。どうも虫による食害らしい。何年か前にマイマイガが大発生して丸坊主にされた木があったが、マイマイガではなさそうだ。

 そういえば、わが家の庭のイタヤカエデに緑色の尺取り虫がついていたが、丸坊主にした犯人はあれと同じだろうかとふと頭をよぎった。

 今月中旬のこと、道北に向かう道中でダケカンバもかなり食害にあっていることに気がついた。

P10606691

 中には8割から9割くらいの葉を食べられてしまっている木もあり、注意をしていれば遠目にもよく分かる。ダケカンバだけではなくナナカマドも食べられている。食害されている木に近寄ってよく見ると、やはりイタヤカエデを食べていたのと同じ尺取り虫だ。小さな幼虫なのに高木を丸坊主にしてしまうくらい葉を食べるのだから、大発生しているのだろう。

P10607212

 これほどの食害をするのは何の幼虫なのかと調べてみると、ナミスジフユナミシャクというフユシャクの一種らしい。フユシャクというのは他の昆虫がほとんど見られなくなる初冬に成虫が出現するシャクガの仲間で、雌は翅が退化していて飛べない。初冬の夜に車で外出したときに、ヒラヒラと薄茶色の蛾がライトに映し出されることがしばしばあるが、あれがフユシャクの雄だ。

 以下のブログによると、どうやら北海道では昨年からフユシャク類の密度が高かったらしい。

 フユシャク類の"大発生"(原 拓史blog)

 ナミスジフユナミシャクもマイマイガと同様にいろいろな木を食害するようだが、特に被害が酷いのはダケカンバのようで、シラカンバはほとんど食べられていない。今年の初冬はフユシャクの成虫も例年より多いだろう。成虫は以下を参照していただきたい。

 ナミスジフユナミシャク(こんちゅう探偵団)

2013年9月18日 (水)

ゴミを背負うクサカゲロウの幼虫

 植物の上で小さなゴミの塊が動くのを見て「あれっ?何だろう」と思ったことのある人は少なくないのではなかろうか。

 そのゴミに目を凝らすと、虫がゴミを背負っているのが分かる。私は、この「動くゴミ」を学生の頃からしばしば目にしてきた。そこでチョウマニアの一人に「ゴミを背負っている虫がいるけど、あれは何?」と聞いたことがあるが、「知らん・・・」という返事だった。

 その後も、何度もこの虫にお目にかかったが、結局その虫が何か分からないままだった。しかし、先日、散歩に出て2回も続けてこの虫を見た。

 下の写真は、ゴミの下から腹部の先端が覗いている。

P10502061

 こちらは横から見たもの。左が頭で右が腹部。

P10502082

 今はインターネットという便利なものがある。そこで、ようやく思い立って「ゴミ 背負う 虫」と検索したら、すぐに出てきた。やはり、不思議に思ってこのような検索をする人がそれなりにいるようだ。

 その正体は、クサカゲロウの幼虫だった。クサカゲロウといえば、薄緑の弱弱しい虫で、子どもの頃よく捕まえたものだ。クサカゲロウは細い糸の先に白い小さな卵を産みつけるのだが、これが葉の裏などにいくつも並んでついている。「優曇華の花」と言われるこの卵は家の中の電燈の笠などにも産みつけられることがある。なんでわざわざ糸の先に卵を付けるのだろうと、子どもの頃から不思議に思っていたものだ。

 これで、クサカゲロウの卵(優曇華の花)→幼虫(ゴミを背負った虫)→成虫(薄緑の弱弱しい虫)が繋がり、積年の疑問が解けた。とはいっても、幼虫と成虫の間に蛹があり、これは見たことがない。

 クサカゲロウといってもいくつも種類があり、すべてのクサカゲロウの幼虫がゴミを背負うわけではないそうだ。クサカゲロウの幼虫はアブラムシやカイガラムシを食べるのだが、一部の種の幼虫はその食べカスを背中にくっつけるという。だから、ゴミが歩いているかのように見える。

 何十年ものあいだ分からないままになっていたことが、1分もかからずに調べられるインターネットは確かに便利だし驚異的だ。しかし、こうも簡単に分かってしまうと、あまりにあっけない気もする。人は疑問に思うことを頭の片隅にしまっておくものだ。そして、ちょっとしたことでその謎が解けたときの快感は格別なものがある。たとえ自分で観察して知ったということではなく、たまたま読んだ本に書いてあったとか、人から教えてもらったということでもいい。今まで分からないでいたことが分かるというのは心躍る楽しさがある。

 しかし、インターネットで何でも簡単に調べることができてしまうというのはどんなものだろう。人知れず疑問を胸に秘めておいたり、何らかのきっかけに密かに謎を知る楽しみが減ってしまう気がしてならない。便利の陰で、失われてしまうものもある。

2013年9月11日 (水)

マルハナバチを襲うケブカスズメバチ

 庭のペパーミントにチョウがたくさん吸蜜にくることはこちらに書いたが、チョウ以外にもマルハナバチやアブなど、いろいろな昆虫が吸蜜にくる。中でも目につくのはエゾオオマルハナバチだ。しきりに蜜を集めている。

P10501840

 昨日はケブカスズメバチ(キイロスズメバチ)もやってきた。ケブカも蜜を吸いにきたのか?と思ったら、どうやらそうではない。しばらく飛び回ってから、いきなりマルハナバチに襲いかかった。

P10501681

 5分後にはもうこんな感じ。

P10501752

 8分後にはほとんど食べつくしてしまった。

P10501763

 いつもなら攻撃性の強いケブカスズメバチにはあまり近寄りたくはないのだが、お食事に夢中のときだけは近寄って写真が撮れる。

 今日、ペパーミントの花を見ていると、またケブカスズメバチがやってきた。花には目もくれずに、吸蜜しているチョウやマルハナバチに襲いかかっていくのだが、チョウはさっと飛んで逃げてしまう。マルハナバチへのアタックも2回見たが、成功しなかった。ケブカスズメバチの狩りも、そう簡単ではなさそうだ。

 本州に産するものはキイロスズメバチという亜種なのだが、キイロスズメはニホンミツバチの巣に近づいて働き蜂を襲うことがある。このため、ニホンミツバチは集団(蜂球)になってキイロスズメバチを取り囲み、熱で殺してしまうことが知られている。天敵に一方的にやられるのではなく、防衛行動も進化させてきたのだ。もともと日本には生息していないセイヨウミツバチは、このような防衛をできないそうだ。詳しくは以下参照。

スズメバチを熱殺するニホンミツバチ(あきた昆虫博物館)

 以下はその動画。

2013年8月31日 (土)

ペパーミントに集まるチョウ

 昨年種を播いたペパーミントが今年は一斉に花をつけたのだが、チョウをはじめとした昆虫がたくさん集まってきた。植物の花には昆虫がとてもよく集まるものと、それほどでもないものがある。そういえばラベンダーにはシロチョウがたくさん吸蜜にやってくる。独特の香りが昆虫を誘引するのだろうか。

 そこで、ペパーミントにやってきたチョウを紹介したい。

P10500861

 まるでクジャクの羽を連想させる魅惑的な紋様のクジャクチョウ。子どものころ霧ヶ峰でこのチョウを見て、こんな美しいチョウがいるのかと心が震えた。タテハチョウの仲間は樹液を好む種が多いが、クジャクチョウは花によくやってくる。北海道では平地でも見られるが、本州だと高原に行かないと見られない。東京に住んでいた子どもの頃、時々でかけた信州の霧ヶ峰はクジャクチョウやヒョウモンチョウの宝庫で、高原の花に集まる華やかなチョウは飛ぶ宝石のように思えた。

P10500962

 オレンジ色に黒い斑点を持つヒョウモンチョウは、一見どれもよく似ている。翅の表側だけでは識別が困難だが、裏側はけっこう違いがある。ペパーミントで見られたのは3種。上の写真はウラギンヒョウモンの表側。

P10501103

 こちらはウラギンヒョウモンの裏側。その名の通り、裏側には銀白色の斑点がある。

P10501034

 上はオオウラギンスジヒョウモン。


P10500925

 こちらはミドリヒョウモン。後翅の裏側がやや緑色を帯びていることから「ミドリ」とつけられたようだ。


P10501046

 シロチョウで多いのがエゾスジグロシロチョウ。翅脈の周辺の鱗粉が黒い。食草はコンロンソウやタネツケバナなど野生のアブラナ科植物。


P10501057

 こちらはおなじみのモンシロチョウ。食草はキャベツやダイコンなど栽培種のアブラナ科植物。


P10501028

 そして、愛らしいベニシジミ。


P10501069

 こちらは地味なオオチャバネセセリ。

 私が学生の頃、チョウマニアの方たちはチョウが減っているとよく言っていた。あれから40年ほどが経った今、さらに減少したのではなかろうか。野生生物の減少の多くは人間による環境の悪化が影響していると思うが、「気が付いたら見られなくなっていた」ということになるのが本当に恐ろしい。昆虫が棲めない環境は、人間にもいいはずがない。

2012年11月19日 (月)

フユシャクの舞う晩秋

 今頃の季節、車で出かけて帰りが夕刻になることがよくあるのだが、車のライトに道路の上をヒラヒラと舞う薄茶色の蛾が何匹も浮かび上がる。11月ともなると、夕刻の外気温は数度しかない。1、2度のときもあるのだが、そんな寒い中を飛んでいるのはフユシャクという蛾だ。

 フユシャクというのは冬(晩秋から早春)に成虫が発生するシャクガ科のガの総称で、日本では36種が知られている。

 他の虫たちの多くが越冬のために姿を消してしまう季節に、フユシャクは成虫が発生して産卵する。変わっているのは発生時期だけではない。フユシャクの雌はなんと翅がない、あるいは翅が退化していて飛ぶことができないのだ。飛べない雌はフェロモンを出して雄を呼び寄せる(もっとも雌がフェロモンで雄を呼び寄せるのはフユシャクに限ったことではないのだが・・・)。

 雄は車のライトに照らし出されるので頻繁に見ることができるのだが、雌は木の幹などでじっとしていることが多く、その気になって探さないと簡単には見つからない。

 2010年の11月にサホロ岳に登ったとき、登山口で変な虫が地面を歩いていた。白っぽい体に黒い斑点がある、ちょっとおしゃれな虫だったが、実はこの写真を撮ったときは何という昆虫なのかピンとこなかった。

P10203491

 その後、これはチャバネフユエダシャクの雌であることが分かったのだが、この虫を見てガの成虫だと分かる人はそれほどいないだろう。

 フユシャクの雌は以前見たことがあるのだが、その種は薄茶色をしていて、「翅が退化したガ」だと言われればすぐに納得できる容姿をしていた。ところが、このチャバネフユエダシャクの雌ときたら、ちっとも「翅のないガ」に見えない。フユシャクの中でも変わり者だ。

 本州では真冬でもフユシャクが見られるようだが、日中でも気温がマイナスになる北海道では厳冬期になると見られなくなる。北海道では晩秋の今頃がフユシャクの季節なのだ。  以下は札幌の方が撮影されたフユシャクの写真。

フユシャクを探す (円山原始林ブログ)
フユシャクを探す(2) (円山原始林ブログ)
フユシャクを探す(3) (円山原始林ブログ)

2012年8月 2日 (木)

消えゆく光景-空を覆うアキアカネ

 ここ数日、アキアカネがよく目につくようになった。アキアカネとは、いわゆる赤トンボのことだ。今の季節はまだ赤くはなっていないので赤トンボだと思っていない人がいるかもしれない。

P10309741


 アキアカネは、真夏の暑い時期に高原などに移動することが知られている。私が住んでいるところは十勝地方北部のやや標高の高いところで、真夏でも30度を超える日は非常に少ない(ゼロの年もある)。ここ数日、北海道は各地で30度を超える暑い日が続いている。暑さに弱いアキアカネは、暑い平地を逃れて大雪山系に避暑にやってきたのだろう。

 私には忘れられないアキアカネの思い出がある。それは長野県の霧ケ峰の光景だ。

 私が生まれたのは長野県の上諏訪だ。私の両親は「霧ケ峰は自分の庭」と言うくらい霧ケ峰によく出かけ、隅々まで知りつくしていた。そんなわけで、東京に引っ越した後も夏休みにはしばしば家族で霧ケ峰に行ったものだった。

 私がまだ小学生の頃はビーナスラインなどという自然破壊道路はできておらず、上諏訪から霧ケ峰に行く道はまだ砂利道だった。バスは土埃をあげながら角間新田の集落(山岳小説家の新田次郎の故郷である)を通り抜け、エンジンをふかせながらジグザグの山道をあえぎあえぎ登っていく。霧ケ峰に行くというのはバスに一時間ほど(子どもの頃にはそれ位の時間がかかったように思えた)揺られることであり、子どもの私には遠足気分だった。私はバスの車窓から見る風景が大好きだった。

 どんどん標高が上がるにつれて白樺が現れ、車窓から見える植物の種類は里とは違って高原らしさが漂ってくる。バスの終着である強清水(こわしみず)は、あちこちに高原の花が咲き、下界とは別世界だった。

 強清水からスキー場の斜面を登ったところに「忘れ路の丘」と呼ばれている丘がある。小ぢんまりとしたスキー場があり、昔からグライダーの練習場になっていた。丘の一帯は広大な草原が広がっており(といっても霧ケ峰はどこも広大な草原ばかりだったが)、「霧鐘塔」という鐘がぽつんとたっている。「霧ヶ峰」という名前がつくほど霧の多い高原のため、方向を知らせる目的で建てられたそうだ。今ではこの一帯は柵に囲まれた遊歩道しか歩くことができないが、かつては丘を自由に歩きまわることができた。

 強清水のバス停に降りた途端に迎えてくれるのがアキアカネだった。そして忘れ路の丘のアキアカネの大群は、それはそれは見事だった。とにかく青空をバックに無数のアキアカネが舞っている。大群というより、広々とした草原一面にアキアカネが乱舞しているといったほうがいいだろう。捕虫網を振り回さなくても網の中に勝手に入ってきたし、頭にも服にも止まった。そして帰りのバスの中にも必ず数匹のアキアカネが紛れ込んでいた。だから私にとっては「夏の忘れ路の丘=アキアカネの乱舞する丘」だった。

 アキアカネはどこにでも見られる普通種のトンボで、夏の高原では群れ飛ぶ姿が見られるが、あれほどの空を覆うようなアキアカネを私は知らない。

 霧ケ峰には今でもそれなりの数のアキアカネが避暑にくるのだろう。しかしその数はずっと減ってしまったのではなかろうか。昨今はアキアカネがすっかり減ってしまったと聞く。

 アキアカネは稲刈り後の水田に産卵し、卵で冬を越したあと春に水を張った田んぼで幼虫時代を過ごす。稲作と大きく関わっている種だけに、その減少には人為的な要素が大きく関わっているのだろう。アキアカネの減少については以下のような見解がある。

稲の苗箱処理剤が赤トンボを減らしていた(月刊現代農業)

神戸で激減!最普通種のアキアカネ(神戸のトンボ)

アキアカネの激減について(日本蜻蛉学会 和田茂樹さんより)(身近な水辺の自然探偵団2002)

 稲作の拡大とともに大群をつくるようになった生物とはいえ、あの夏の風物詩である高原の乱舞が過去のものとなってしまったのなら何とも寂しい。

2012年7月22日 (日)

夢のようなアカシジミの乱舞

 38年前(1974年)の今ごろ、私は一人で北海道をほっつき歩いていた。大学2年の夏休みがはじまると、のこのこと北海道に探鳥旅行に出かけたのだ。北海道には本州では見ることのできない野鳥がたくさんいる。草原でのびやかに囀るノゴマやシマアオジ、シマセンニュウやマキノセンニュウ・・・。岩礁海岸にはウミガラスやケイマフリ、エトピリカ・・・。そんな野鳥の姿を求めて北海道の旅を計画した。

 北に位置する北海道はさぞかし涼しいのではないかと長袖しか持っていかなかったのだが、予想とは裏腹に空は毎日のように晴れわたり、直射日光がじりじりと照りつける炎天下はまさに灼熱だった。ただし、木陰に入ると乾いた風があっという間に汗を吹き飛ばした。じとじととした本州の暑さとは雲泥の差だ。そんな中を、野鳥を求めて歩き回ったのが懐かしい。

 あれは、豊富温泉に泊まった7月19日のことだ。ユースホステルに着いて宿泊の手続きをしたあと、夕食まで間があったので双眼鏡を持って散歩に出た。いかにもひなびた温泉街で、歩くところはさほどない。

 すぐにゆったりと流れる川にぶつかった。なにげなく川を覗くと、オシドリの夫婦がひっそりと泳いでいる。今は夏なので、雄はあの派手な衣装はまとっていない。雌と同じような黒っぽい羽毛で目の周りだけが白くなっていて、まるでケイマフリのようだ。オシドリといえば樹洞で営巣をする。この近くで繁殖したのだろうか。人の生活圏の近くでオシドリが繁殖しているとは、なんとのどかなところなのだろう。

 川のほとりに佇んで北辺の地のしずかな夕暮れの景色をぼんやり眺めていると、対岸に茂る木々のあたりに何かがチラチラしているのに気がついた。双眼鏡の視野に入ったそれは、橙色をした小さなチョウだった。アカシジミの乱舞ではないか! アカシジミは見たことがなかったが、そのチョウがアカシジミの仲間(アカシジミまたはキタアカシジミ)であることはすぐに分かった。

 だいぶ傾いた日差しの中で、濃い緑の葉(たぶんミズナラだったのだろう)をバックに無数のアカシジミが舞っている。翅の表のオレンジと裏の白っぽい色が交差して、チラチラと輝いている。なんと幻想的な光景なのだろう。まるで夢の中にいるかのようだ。そして、こんな光景が展開されているのに、それを見ているのは私しかいない。私は狐につままれた心地でしばし見とれていた。

 アカシジミの乱舞を見たのは、後にも先にもこの時だけだ。今でもあんな光景は見られるのだろうか。

 ちょうど同じような光景がYouTubeにアップされている。

アカシジミ夕方活動~津軽での大発生

2011年9月30日 (金)

メノコツチハンミョウという不思議な昆虫

 27日に置戸町にナキウサギの調査に出かけたのだが、そこでメノコツチハンミョウを見かけた。ハンミョウという名前がついているが、いわゆる「ミチオシエ」と言われているハンミョウとは別のグループ(科)だ。

 北海道には4種のツチハンミョウが生息しているが、秋に成虫が出現するのはこのメノコツチハンミョウだけだ。交尾しているペアの近くに2頭の雄がいた。一度に4頭も見たのは初めてだ。フェロモンに誘引されたのだろうか。

 こちらはペア。雄の触角の形態が面白い。

P10302361

 こちらは雄。

P10302372

 このツチハンミョウという昆虫は、見た通りの不思議な外観で、翅は退化していてもちろん飛ぶことはできない。そしてハナバチに寄生するという実に変わった生活史を持っている昆虫なのだ。

 メノコツチハンミョウの場合、成虫は秋に出現して交尾し、地中に産卵して死んでしまう。春に生まれた幼虫は花の上によじ登って、そこでハナバチが来るのを待つのだ。ハナバチが来るとその体毛にしがみついてハナバチの体に乗り移る。乗り移ったハナバチが雌であればそのままハナバチの巣に移動することができるのだが、雄の場合は交尾のときに雌のハナバチに乗り移るのだ。そうやってハナバチの巣に運ばれると、ハナバチの卵や蜜・花粉などを食べて成長するという変わった生活史を持っている。

 しかし、花を訪れる昆虫はハナバチばかりではない。むしろハナバチに乗り移れるのは運がいいということになるのだろう。ハナバチ以外の昆虫に乗り移ってしまった場合は成虫になることはできない。うまくハナバチの巣に侵入できる可能性が低いためか、ツチハンミョウの雌は数千個もの卵を産むそうだ。

 成虫まで生き延びられるチャンスは少ないかわり、うまくハナバチの巣に侵入できればあとは楽をして成虫になれるというわけだ。

 メノコというのはアイヌ語で「女性」という意味なのだが、産卵のために大きな腹部を持つ雌が目立つのでこのような和名がつけられたのだろうか?

 ちなみにカンタリジンという毒を持つので注意が必要だ。機敏に動けない昆虫だけに、こうやって身を守っているのだろう。

2011年8月 7日 (日)

マイマイガの寄生蜂

 「カラマツを食害するマイマイガ」 で書いたように、私の居住地周辺では今年もマイマイガの幼虫が大発生した。しかし、それと同時にマイマイガの幼虫に寄生したコマユバチをあちこちで見かけた。こんなのがあちこちにある。

P10209401

 もっと凄いのはこちら。これだけ大量に寄生されたら、ひとたまりもないだろう。

P10209322

 だから、蛹になる前に死んでしまった幼虫も多数いるのだ。とはいっても無事に蛹になったマイマイガも多数いる。ところが、その蛹もやはり寄生蜂に狙われているのだ。以下はヒメバチの仲間だと思うが、マイマイガの蛹を物色している。

P10209393

 マイマイガの蛹もそれを知っているのだろう。巧みに木の葉を綴り合わせて寄生蜂の攻撃を防いでいるものも多い。しかし、寄生蜂も綴り合わせた葉の隙間から何とか蛹に卵を産みつけようとする。下は蛹に産卵する寄生蜂。

P10209374

 こういう光景を見ると、やはり自然はうまくできていると思う。マイマイガが増えれば寄生蜂が増える。その寄生蜂も寄主が減ればまた減っていくのだ。こうやって大発生は終息に向かう。

 今のところまだマイマイガの成虫は見られない。果たして、これだけの天敵が発生したなかで、成虫はどれくらい発生するのだろうか。

フォト

twitter

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

最近のトラックバック

無料ブログはココログ