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2020年8月30日 (日)

減っていくクモや昆虫

 ここ10年ほど諸事情であまり散歩やクモ採集にでかけていなかったのだが、今年は散歩を再開した。しかし近年はクモが随分減っているように思えてならない。今の場所で暮らすようになってから約40年が過ぎた。そしてかつて普通に目にしたクモが、「そういえば最近見ていない」と思うことが多いのだ。

 たとえばチュウカカニグモ。この大型のカニグモは以前はしばしば目にした普通種だったのだが、なぜか今年は見ていない。最近見るのはシギカニグモばかりで、そういえばチシマカニグモやカニグモも見ていない。散歩のときは捕虫網を持たず目に付いたクモを見ているだけだから、捕虫網でスウィーピングでもやれば入るのかもしれないけれど、それにしてもここまで見ないのは不可解だ。

 キバナオニグモは以前は住宅の軒先にも網を張っていたし、林縁などでしばしば目にしたクモだが、最近は頻繁には見なくなった。いないわけではないが、以前ほど目につかないのだ。マユミオニグモもしばらく見ていない。

 カンバやトドマツの幹に棲むムレサラグモも以前は普通に見られたのに、最近はめっきり減ってしまった。一昨年(2018年)にシラカバ林でムレサラグモを探したときには1時間で4頭しか見つからなかった。どう考えても減っているとしか思えない。

 先日関東在住のクモ関係の知人が来たのだが、その方も以前きたとき採集できたクモが今回はあまり採れないとのこと。やはり私が見つけられないということだけではなく、実際に減っているのだと思う。

 そしてこの「減少」はもちろんクモに限らない。たとえば蝶のキベリタテハなどは以前はしばしば目にしたが、最近はあまり見かけない。ルリタテハもずっと見ていない。以前はたくさんいたジョウカイボンやアオジョウカイも、ずいぶん少なくなったように思う。知らないうちに確実にクモや昆虫が減っている。

 一体何が原因なのだろう?

 私の住んでいるところは山間部で、開発行為による環境破壊はそれほどない。ただし、周辺の森林は伐採が進んだことで大径木がほとんどなくなり若齢のトドマツが増えている。それからエゾシカが増えたために林床はシカが食べない植物ばかり繁茂するようになり多様性が失われた。そういった植生の変化は確かにある。

 また私の居住地には農地はないので、農薬散布は基本的にない(個人が住宅の周りに除草剤を撒くことなどはあるが)。ただし、以前に比べて人口が減り、住宅地の周辺の木も繁茂してきているので、開けた環境が減ったということは言えるだろう。最近はスズメすら珍しくなってしまった。

 地球温暖化の影響はどうだろうか? 気温は確かに上昇している。以前は冬の最低気温がマイナス25度以下になる日がしばしばあったが、最近では滅多にない。しかし、気温だけでそんなにクモや昆虫が消えてしまうものだろうか?

 結局、理由はよく分からないのだが、複数の環境の変化がクモや昆虫などに何等かの影響を与えているとしか思えない。

 つい先日、小笠原諸島固有種の蝶、オガサワラシジミの飼育下での繁殖が途絶え、絶滅の可能性が高くなったというニュースが流れた。小笠原諸島で個体数が激減し絶滅が危惧されたため、多摩動物公園と新宿御苑で飼育して増殖に取り組んでいたが、8月25日に飼育していた全ての個体が死んでしまったとのこと。小笠原諸島では2018年から生息が確認されていないとのことで、とても残念でならない。

 昆虫の1種や2種が絶滅したところで、何の影響もないという人もいるかもしれない。しかし、地球に棲む一つひとつの生物種に長い進化の歴史が宿っているし、小さな生き物が生態系の中で重要な役割を果たしていることもある。その重みを考えたなら、人間の活動に起因した種の絶滅は限りなく罪深い。

 日本でも昆虫やクモなどの小さな生物ではまだ次々と新種が発見される。しかし、新種記載もされないまま姿を消してしまった生物もいるかもしれない。身近にいた昆虫やクモの減少に何やら暗澹とした気持ちになる。そして、せめて今ある自然環境をこれ以上破壊してはならないとつくづく思う。

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