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2019年2月11日 (月)

早野龍五氏「見解」の嘘で濃厚になった捏造疑惑

 2月8日にOur Planet-Tvが驚くべきニュースを報じた。

千代田テクノルのデータを研究に使用認める~宮崎・早野論文

 第一著者の宮崎氏が、事実を語り始めたようだ。「科学」2月号で7つもの倫理違反が白日のもとに晒され、伊達市や東大の調査も始まった。宮崎氏は事実を語ることを覚悟したように見える。

 著者は伊達市からデータを受け取る前の2015年2月に千代田テクノルからデータを入手し、早野氏はすぐに解析作業をはじめて2015年7月には第1論文の図やグラフがほぼ完成していたらしい。これにはびっくり仰天。

 この記事の最後に掲載されている経緯を引用しておきたい。

2011年 8月      伊達市が千代田テクノルにガラスバッチ による「外部被曝計測」を委託
2012年 8月      伊達市が住民に同意書を送付
2013年 8月      伊達市が千代田テクノルに「データベース構築業務」を委託
2013年10月     伊達市が千代田テクノルに「外部被ばく検査事業集計分析業務」を委託
2014年10月     パリで開催されたIRSNのセミナーに仁志田伊達市長、半沢直轄理事、多田順一郎アドバイザー、早野氏、宮崎氏らが参加。伊達市のビッグデータを解析して論文を書くよう提案を受ける
2015年 1月      宮崎真氏が伊達市のアドバイザーに就任
2015年 2月13日 千代田テクノルが宮崎・早野氏へのデータ提供許可を伊達市長に求める
2015年 2月16日 伊達市長が千代田テクノルにデータ提供を了承
2015年 3月13日 千代田テクノルが「外部被ばく検査事業集計分析業務」成果品を納品
2015年 7月30日 定例打ち合せで、宮崎氏が論文掲載データと同じ図が含まれた資料を提示
2015年 8月 1日 市が福島医大と宮崎氏に研究依頼文書(日付と内容が捏造された可能性)
2015年 8月25日 定例打ち合せで宮崎氏が論文用の依頼文書作成を要望
2015年 9月12日 ICRPダイアログにて早野氏が論文に掲載された図と同じデータを公表
2015年11月 2日 研究計画を倫理委員会に申請
2015年12月17日 倫理委員会が研究を承認

 この経緯から、以下のことが分かってくる。

・伊達市長や著者らがIRSNのセミナーに参加してガラスバッチのデータを解析し論文を書くように提案されたことが論文を書くきっかけ。 → 原子力ムラが大きく関与している。
・伊達市が医大と宮崎氏に論文を依頼する前に千代田テクノルが市長に許可を求めた上で著者にデータを提供。 → 伊達市長の許可で個人情報が流出。
・第1論文の解析が終わって図表が作成されてから倫理委員会に申請・了承。 → 倫理委員会は形だけのものだった。
・早野氏の1月8日付けの「見解」にある「私たちが伊達市から受け取ったデータには同意の有無を判断出来る項目がなく、さらに幾度となく委託元である伊達市側に解析内容を提示した際にも対象者数に関するご意見もなく、適切なデータを提供いただいて解析を行ったと認識しておりました」という説明と一致しない。 → 千代田テクノルから直接データが提供され、それを用いて解析したのだから、この説明自体が嘘。

 これはもう、原子力ムラと伊達市と医大と著者らがグルになっていたという話しになる。しかも、個人情報がそのまま早野氏に提供されたということだろう。委託側と受託側は利益相反の関係であり恣意的な数値操作がなされたとしても何ら不思議はない。

 その後、2月11日になって黒川眞一氏によるまたまた驚くべき記事がハーバー・ビジネス・オンラインにアップされた。

黒川名誉教授緊急寄稿。疑惑の被ばく線量論文著者、早野氏による「見解」の嘘と作為を正す

 何と、黒川氏のレター論文に対し早野氏の方から指摘に一つひとつ答えるのではなくcorrigendum(正誤表、訂正)を提出したいと申し入れ、掲載誌がそれを受け入れていたのだ。ところが、早野氏は「見解」で「正誤表」あるいは「訂正」とは書かず「JPR誌より『修正版を出すように』との連絡を受けました」と書いている。さらに伊達市からデータの再提供を受けて新たな論文を書くことが「修正版」であると説明し、「正誤表」を「別の論文による修正版」へと巧みにすり替えをしたのだ。

 私も早野氏の「見解」に関しては前回の記事で「論文修正に関わる早野氏の欺瞞に満ちた説明」として取り上げているが、レター論文を送った黒川氏本人による早野氏の数々の嘘の指摘は衝撃的だ。

 私は前回の記事で「早野氏が第2論文に対するレターに答えようとしないのは、レター論文のことを知りながら掲載誌がそれを受理する前にデータを(恐らく恣意的に)廃棄してしまったから」と書いた。研究終了の報告書でもデータは10月末で廃棄ということになっているし、早野氏自身が1月8日の「見解」で削除したと記していたからだ。しかし、私は黒川氏のこの記事を読み、早野氏は本当はデータを廃棄していないのではないかと思うようになった。

 早野氏は、掲載誌に対してcorrigendum(正誤表、訂正)で対応したいと申し入れをした。corrigendumというのは誤記などの単純ミスの訂正だ。したがって、論文に単純ミスがあったことを認めそれを訂正すると言っていることになる。さらに「解析プログラム」を見直して被曝線量を1/3に過小評価していたという別のミスも発見している。データを削除していたら、ミスを確認して訂正したり新たな間違いを発見することもできないのではなかろうか? 元データは削除していると言いながら「解析プログラム」は残っているというのも不可解だ。とすると実際にはデータは削除していなかったと考えざるを得ない。

 10箇所もの単純ミスがあったのならあまりに杜撰だが、そもそもそんな多くの単純ミスをするというのは非常に不自然であり不可解だ。データが保存されており、そのミスが誤記や計算間違いなどの単純ミスならば、黒川氏のレター論文に一つひとつ回答できるはずだ。

 こちらの記事では「図の一部に不自然な点があり『線量を過小評価するための捏造が疑われる』」と指摘されている。これらのことかも、単純ミスなどではなく恣意的な数値操作、すなわち捏造によって過小評価がなされたという疑惑はほぼ確定的のように思える。

 宮崎・早野論文問題は宮崎氏の告白と黒川氏の告発によって新たな局面を迎えたように見える。

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