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2019年1月

2019年1月21日 (月)

早野龍五氏の本音は原発推進

 宮崎真・早野龍五両氏による論文不正疑惑に関しては前回の記事で取り上げた。その後、Our Planet-Tv で著者である宮崎真氏と伊達市の職員が2017年4月24日に面会し、不同意のデータは使用しないという確認を取っていたことが報じられた。

1年半前「同意のみ使用」確認~宮崎・早野論文問題(Our Planet-Tv)

 早野氏は「同意なし」のデータを使っていたことを知ったのは昨年12月と言っていたが、著者らは同意なしのデータを使っていたことを認識していたとしか考えられない。いったいどうなっているのだろう。

 ところで、2013年6月13日に書いた「御用学者、早野龍五氏の欺瞞と背景にある利権構造」という記事(さぽろぐ版)に寄せられたコメントの中に非常に重要な指摘があるので、改めてここで紹介しておきたい。以下に読みやすいように一部改行などに手を加え、重要な部分を太字にした上で転載する。

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早野龍五氏の本音は以下のurlで知ることができます。

http://www.researchsea.com/html/article.php/aid/8440/cid/6/research/people/researchsea/should_the_japanese_give_nuclear_power_another_chance_.html

要点は以下の通りです。

In 2012, Professor Ryogo Hayano, a physicist from the University of Tokyo, joined Dr. Tsubokura in Minami-Soma Hospital and invented BABYSCAN technology, a whole-body scanning to measure radiation in small children as well as to allay the fears of Fukushima parents.

“BABYSCAN is unnecessary but necessary. It is unnecessary because we know that the radiation is low. But it is necessary to assure parents that their children are going to be okay,” said Prof. Hayano.

After witnessing the fears of the Fukushima people, Prof. Hayano thinks that nuclear power is no longer appropriate for Japan. He believes that the government should shut down nuclear power plants.

“As a scientist, I know that nuclear power is safe and cheap. But looking at the public’s fear in Fukushima, I think it should be phased out,” said Prof. Hayano.
        Posted by SB at 2014年12月28日 19:11


先ほど投稿した文章は英語でしたので、日本語による解説を行います。原典は、SjCOOPという発展途上国の科学ジャーナリストを支援するプログラムに際して書かれたものです。英文の記事であり、あまり目に触れるようなものではないので、早野龍五氏も本音を出したものだと思います。

早野氏の考えは、

(1) 自分は科学者として、原発は安全で安価だと思う。

(2) しかながら、福島の人々の放射能にたいする恐怖を考えると、原発はもはや日本にはそぐわないものであるので日本政府は原発をシャットダウンするべきである。

(3) 早野氏が開発したBABYSCANは本当は不要なものである。何故ならば福島の放射線レベルは低いからである。しかしながら、親たちを安心させるためにはBABYSCANは必要である。

この考えの論理的な帰結は以下のようになります。「人々が放射線は怖くないことを知れば、原発は当然動かすべきである。なぜならば、原発は本来安全で安価であるからだ。人々は科学者のような知識を持っていないので、大いに教育をし、放射線は無害であり、こわくないことをしらしめるべきである。私はこのためにがんばっていますよ。」

        Posted by SB at 2014年12月28日 22:05


私が早野氏言葉の中で(引用符の中に書かれた部分です)最も違和感を持つところは

As a scientist, I know that nuclear power is safe and cheap.

という部分です。

この発言には、科学者だから庶民と違って正しい判断ができるという高慢至極の考え方が透けて見えるがらです。福島の事故に真摯に向き合い、真面目に原発についての勉強をすれば、原発は安全で安価だなどということを言えるはずはありません。このような学者が、新潮文庫で「知ろうとすること」という本を書き、それがベストセラーになる日本という国はどうなってしまったのでしょうか。

なお、私も職業的科学者であることをお知らせいたします。
        Posted by SB at 2014年12月31日 23:35


福島第一原発事故の放射線被害について調べているうちに、高橋博子著「封印されたヒロシマ・ナガサキ」の存在を知り、さきほど初版を読み終わったところです。緻密な調査に基づく労作であり、多くのことを教わりました。この本を高く評価いたします。
福島の状況は、この本の最終章の一節「アイゼンハワー政権下での放射線被曝防護行政」そのものであると思います。以下、私が重要と思う部分を引用いたします。

引用
「被曝線量値そのものは、医療、社会、経済、政治などの種々の要素に基づく決定であって、数学的公式に基づいて決定できるような性格ではない。したがってバランスのとれたリスクの決定とは、労働者の場合には他の産業でのりすくと比較する方法が有効で、公衆の場合は、自然放射線からの被曝量も考え得るが、むしろ交通事故のリスク、あるいは産業廃棄物からの汚染のリスクを比較するのがよい」と勧告した。
第二に、「議会内の核軍拡・原子力開発の推進派と手を結んで公聴会を開催して推進派の科学者を総動員し、ファールアウト批判を抑え込むこと」である。
第三に、「学術機関の権威を使って、放射能不安が根拠のないものであるという評判を定着させること」であった。
引用終わり

さらに、「ガイ・オークスが指摘するように、政府にとって国民は終始一貫して心理作戦の対象でしかなかった。」とこの節がまとめられております。

著者はまた、本の後書きに、核兵器は人類の発明した最悪の兵器だと思っていた。(中略) マンハッタン計画に従事していた時、物理学者ハンス・ベーテ博士は「クラスファイド・スタンプは人類の発明した最も強力な兵器である」とラップ博士に語った。
と記しております。
        Posted by SB at 2015年01月03日 18:45

**********

 早野氏は、「原発は安全で安価なもの」と捉えているようだ。日本の原発は廃炉にすべきと言っていても、その理由は「危険だから」ではなく「人々が無知で放射能を怖がるから」なのだそうだ。この思考は原発推進論者そのものだ。しかし、チェルノブイリや福島のレベル7という過酷事故を経験してもまだ原発は安全と考えているなら、信じがたい。核廃棄物の処理や廃炉、安全対策などにかかる莫大な経費などを考えたら、原発は決して安価ではないことは自明だ。こんなことを科学者が平然と述べているとは驚きを禁じ得ない。

 さらに早野氏は、福島では放射線が低いので、両親に子どもが大丈夫であると安心させる必要がある、と考えているらしい。これは安全論を振りまいて安心させることで住民に被ばくを強いていることになる。チェルノブイリでは被ばくによる小児甲状腺がんが多発した事実があり、福島でも悪性の小児甲状腺がんが多数確認され手術が行われているというのが歴然とした事実だ。被ばくとの因果関係が証明できないからといって、被ばくの影響を無視することはできない。安易にこのような発言をすることに、人としての神経を疑う。早野氏と同じような主張をしているのが「ニセ科学批判」のリーダーである大阪大学の菊池誠氏であることも付け加えておきたい。

 今回の宮崎・早野論文の結論は、原発推進の早野氏の思惑通りのものになっている。しかし、その論文には早野氏自身が認める過小評価があり、ほかにも多数の矛盾や間違いの指摘がある。だからこそ、そこに恣意性があるのではないかと疑われるのだ。正直いって、私はこの宮崎・早野論文は科学論文という形をとった原発推進派によるプロパガンダではないかと疑っている。SBさんが最後のコメントで指摘している「心理作戦」とも言えよう。

 宮崎・早野論文は「不同意データの使用」が明らかになっているので、掲載誌から取り下げの勧告を受けるのは時間の問題だろう。しかし、論文が取り下げられたとしても、複数の科学者によって指摘されている誤りや矛盾について著者らがきちんと説明しない限り、「科学論文を利用した原発推進派によるプロパガンダ」という疑いは晴れない。不同意データの使用だけでも大問題だが、もし論文作成に際して被曝線量を過小評価するために恣意的な数字操作等が行われていたのであれば、STAP細胞の件より遥かに悪質な論文不正でありスキャンダルだと思う。

 なお、この件についてはさつきさんも問題点を具体的に指摘している。

「宮崎・早野論文事件」について(メモ:その1)
「宮崎・早野論文事件」について(メモ:その2)
「宮崎・早野論文事件」について(メモ:その3)

2019年1月10日 (木)

早野龍五氏は物理学者らの指摘に答える責任がある

 早野龍五氏については以前、こんな記事を書いた。

御用学者、早野龍五氏の欺瞞と背景にある利権構造

 この記事で取り上げている早野龍五氏の論文は2013年のこちらのものだ。さらに昨年末になって、2017年に英科学誌に発表された早野氏らの二つの論文で本人の同意のないデータが使われたことや捏造疑惑が報じられた。

 早野氏は東京大学名誉教授であり、福島の原発事故以降、福島の汚染はたいしたことはなく健康への被害はないといういわゆる「安全論」を流布していた。しかし、早野氏らの論文にはその「安全論」の根幹を揺るがしかねない重大な問題があることが発覚したのだ。

 今回の早野氏の論文や姿勢に関する問題点について、一般向けに分かりやすく解説しているのが牧野惇一郎氏によるこちらの記事だ。

データ不正提供疑惑・計算ミス発覚の個人被曝線量論文。早野教授は研究者として真摯な対応を(ハーバー・ビジネス・オンライン)

 早野論文に関しては複数の問題があるのだが、一つは同意を得られていない住民のデータを使っていたことにまつわる問題。牧野氏は『論文に「データ処理はこうした」と書いてあることと、実際のデータ処理の結果に明らかな矛盾があります。また、「適切なデータを伊達市から受け取ったという認識で対応していた」という早野氏の回答は、市の担当者の答弁とは矛盾するものです』と指摘している。データの受け渡しに関しては第三者による検証が欠かせないだろう。

 もう一つは計算ミス。牧野氏はこのミスを『極めて初歩的なミスであり、意図的でなくこんなミスをするのは論外である一方、意図的にやったのであればあまりに下手なやり方であり、どちらにしても研究の質を疑わざるを得ないものです』としている。

 そして、報道を受けて発表された早野氏の見解にまつわる問題。黒川眞一氏は2018年8月に雑誌編集部に問題点を指摘するレター論文を送っており、査読が済んで11月16日に ready to accept となっている。また、この時点で著者にレター論文が示されている。レター論文では10箇所近い誤りが指摘されている。しかし、現時点で早野氏は黒川氏の指摘に何ら答えていない。

 さらに牧野氏は、早野氏が福島の原発事故以降、ツイッターで次々と間違った情報発信と過去の改ざんを続けていたと指摘している。これが福島安全論を拡散していた科学者の正体ということだろう。科学者としての資質が疑われる。もちろん早野氏に同調し擁護し続けている菊池誠氏も同じだ。

 なお、早野氏の論文の問題点については、ツイッターで複数の方が具体的に指摘している。

【KEK 名誉教授 黒川眞一さんによる宮崎真・早野龍五論文に対するコメント(間違いの指摘)】関連ツイートまとめ(2019.1.1作成)

2019.1.8報道【『宮崎真氏早野龍五氏論文』修正へ】の論文修正・問題点認識の不誠実さ

   これだけの問題がある以上、早野氏は最低限でも物理学者らから提示された問題点に誠実に回答する責任がある。何しろ、早野論文は福島安全論の根拠にされているのだから責任は極めて重い。

 さて、1月9日になって早野氏は毎日新聞に対し「伊達市から同意のあるデータの再提供を受けられなかった場合、両論文の撤回もやむを得ない」と述べている。

   「同意あるデータ再提供なければ撤回も」早野・東大名誉教授 原発事故論文で(毎日新聞)

 これだけ疑問が噴出している論文なのだから、撤回は当然だろう。ただし、早野氏は不同意データが使われていたことを撤回の理由としているだけで、黒川氏からの指摘に関しては口を閉ざしている。私は、早野氏はもはや黒川氏をはじめとした物理学者らの指摘に誠実に答える気がない、というか答えられないので白旗を掲げたのではないかと感じた。つまり撤回表明によって説明責任を逃れようとしているように思えてならない。そうでないのなら、科学者として黒川氏らの指摘に誠実に答えてほしい。

【1月21日追記】
 黒川氏のレター論文に関する記述に誤りがあったため一部修正した。

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