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2016年12月13日 (火)

ブログ記事の削除要請を受けたらどうすべきか

 先日「植田忠司弁護士からの削除要請は正当か?」という記事で、ブログ運営会社への回答書を公開したが、これに対しさぽろぐ運営事務局から以下の返事があった。

現時点で、名誉棄損にあたるという判断ができませんので、
弊社としましても記事の削除には応じない考えです。
改めて依頼人側からの連絡があった場合は、
必要に応じて、またご連絡させて頂きます。

 私の回答書を受け、さぽろぐ運営事務局(ジェイ・ライン株式会社)は名誉毀損に当たらないという判断をしたということだ。至極まっとうな判断だと思う。この判断を受け、依頼人がジェイ・ライン株式会社に理由を示した上で「発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの)を開示せよ」と求めた場合、ジェイ・ライン株式会社は「開示するかどうか」について私に意見を聴かなければならない(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 第四条)。

 かつては名誉毀損、プライバシー侵害、肖像権侵害、著作権侵害などといった権利侵害は書籍や雑誌、新聞などのメディアの世界でのことであり、一般の人にはほとんど関係のない話しだった。ところがインターネットの普及によって、誰もがこのような権利侵害の被害者、あるいは加害者になりうる時代になった。だから、ブログや掲示板などで発信する場合は常に権利侵害のことを頭に入れておく必要があるし、「知らなかった」では済まされない。

 もし、ブログ運営会社等から権利侵害の通告を受けたなら、まず、それが正当なものであるかどうか十分に検討する必要がある。正当なものであれば記事の修正や削除に応じるべきで、突っ張って放置したなら強制削除とか民事訴訟になりかねないし、場合によっては刑事告訴されることもあり得る。

 プライバシー侵害、肖像権侵害、著作権侵害については分かりやすいが、名誉毀損は判断が難しい場合も少なくない。誹謗中傷などをしておらず事実を書いただけであっても、その事実が特定の人の社会的評価を低下させるものであれば、名誉毀損になり得る。

 ただし、名誉毀損の場合は免責要件というのがある。簡単に説明すると、1事実の公共性(公共の利害に関する事実であること)、2目的の公益性(事実を適示した目的が主に公益をはかるためであること)、3真実性・真実相当性(適示した事実が真実であると証明できる、または真実であると信じた相当の理由があること)、の三つだ。この三つが満たされている場合は名誉毀損の不法行為は成立しない。したがって、これについて十分な検討が必要になる。

 プロバイダ責任制限法による削除要請の場合、ブログ運営会社から連絡を受けて7日以内に削除に応じるか否かについて回答をしないと、強制削除される可能性が高い。ただし、削除要請をする人の中には名誉毀損に該当しないのに「名誉毀損だ」と主張する人もいるので注意が必要だ。恐怖にかられて安易に自分から削除してしまえば、表現の自由の権利を自ら放棄してしまうことにもなりかねない。

 削除要請を受けた人に、前回と今回の記事が参考になれば幸いである。

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